KAT-TUN現体制は、ヴォーカルグループとして魅力的だーー新作収録曲を徹底分析
参考:2016年2月8日~2016年2月14日のCDシングル週間ランキング(2016年2月22日付)(ORICON STYLE)
ベスト10を全曲聴くことから始めるのが恒例のこの連載ですが、2016年2月22日付の週間CDシングルランキングに関しては、1位のKAT-TUNの「TRAGEDY」が私をもっとも魅了しました。
3月末をもって田口淳之介が脱退し、5月1日の東京ドーム公演後は充電期間に入るKAT-TUN。彼らが現在の4人体制でリリースするシングルは来月発売(!)の『UNLOCK』が最後となります。そのひとつ前のシングルとなるのが『TRAGEDY』です。
エレクトロ・ロックの「TRAGEDY」では、冒頭の10秒足らずでいきなり歌いあげられ、一気に昂揚感に包まれます。色気に満ちた4人の歌声の絡み合いは渦を巻くように展開し、サビでのヴォーカルの躍動感にも聴き惚れました。「TRAGEDY」は、ヴォーカル・グループとしてのKAT-TUNの魅力を凝縮した楽曲です。
そもそも「TRAGEDY」は、ヴォーカルがない部分が極端に短い構造になっています。イントロも10秒足らずで、しかも1番と2番の間には間奏がなく、ようやく間奏が出てくるのは2分40秒過ぎ。しかも、その間奏でもヴォーカルのない部分はわずかで、さらに間奏明けから最後まではびっしりとヴォーカルで埋め尽くされています。徹底したヴォーカル・オリエンテッドな構造。息を飲むほどに大胆、そして圧巻です。
作曲はShunsuke HaradaとTKMZ、編曲にはShunsuke Haradaがクレジットされています。Shunsuke Harada(原田峻輔)は、大智 [DAICHI]、youwhich、miyakeiも所属するFRHのクリエイター。KAT-TUNでは、2014年のアルバム「come Here」収録の「フェイク」を、大智 [DAICHI]とShunsuke Haradaが作曲しています。「TRAGEDY」は、FRH所属の「職人」による見事な仕事だと感服しました。
さて、今回私が聴いた「TRAGEDY」の通常盤には、もうひとつ特徴があります。1枚を通してみると、海外作家と日本の作家の共作が多いのです。
2曲目の「熱くなれ」は、ストリングスの音色も効果的に響く、雄大で爽快なアメリカン・ロックな楽曲。この「熱くなれ」は、King of slickとKOUDAI IWATSUBOが作曲し、King of slickが編曲。KAT-TUNに多数の楽曲を提供しているKing of slickは、スウェーデンのHitfire Productionに所属する作家です。
ヴォーカルの高音の魅力を引き出しているロック・ナンバーが、3曲目の「FEATHERS」。作曲にAlbi Albertsson、Leon Palmen、Carlos Okabeの名が並んでいます。筆頭に記されているAlbi Albertssonは、ドイツのベルリンに在住し、BMG Rights Management GmbHに所属する作家です。
KAT-TUNのヴォーカルを堪能させるミディアム・ナンバー「TWILIGHT」の作曲は、Hanif Sabzevari、Peo Dahl、KOUDAI IWATSUBO。Hanif SabzevariとPeo Dahlもスウェーデンの作家です。Hanif SabzevariがFacebookに「TRAGEDY」が1位を獲得したことを投稿し、共作したPeo DahlとKOUDAI IWATSUBO(イワツボコーダイ)が感謝のコメントをしているのも現代ならではの光景です。