太田省一『ジャニーズとテレビ史』第十一回:『2016年期待のジャニーズメンバー』

KinKi、TOKIO長瀬、KAT-TUN亀梨、JUMP伊野尾……2016年注目のジャニーズを太田省一が深掘り解説

(C)タナカケンイチ

 同じく1月から天才怪盗役を務める主演ドラマ『怪盗 山猫』(日本テレビ系)が始まり、ソロ出演が多かったのがKAT-TUNの亀梨和也だ。ドラマ初回放送直後の『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)でもゲスト出演し、「THIS IS MJ」のコーナーで松本潤と「真のカッコいい男はどっちか」をめぐり三番勝負を繰り広げていた。

 そんなクールなカッコよさがとかく語られがちな亀梨だが、それだけではない。グループの冠番組『KAT-TUNの世界一タメになる旅』(『タメ旅』)(TBSテレビ系)を見ていると、タレントとしての地頭の良さ、判断力の高さが至る所で感じられる。場面に応じて自分が前面に出るときもあれば、他のメンバーをツッコんだり、さりげなくトークのフォロー役に回ったりすることもある。状況を踏まえ、最前線のプレイヤーにも司令塔にもなれるといった印象で、番組全体を常に見ているようなポジショニングの良さが光る。

 KAT-TUNもまた、今年はデビュー10周年を迎える記念の年だ。そうしたなか、大きく報道されたように昨年田口淳之介が今春限りの脱退を表明した。グループとしては試練に直面した形だ。ところが『タメ旅』では、田口の脱退は意外なほど頻繁にネタにされて番組の盛り上げに一役買っている。元々スタッフによる強めのメンバーいじりが番組の演出スタイルなこともあるが、それにしても脱退が決まっているアイドルグループのメンバーをこれほどいじる番組は、いままでなかったのではあるまいか。そんなぎりぎりの笑いが成立するのにも、亀梨和也のすぐれたポジショニング能力は、重要な貢献をしていると言えるだろう。

(C)タナカケンイチ

 Hey! Say! JUMPの伊野尾慧も年末年始の番組でソロ出演が目立っていたひとりだ。

 彼については、昨年すでに日本テレビの「24時間テレビ」でV6の岡田准一が「伊野尾がカワイイ 腹が立つ」と熱く語り、トーク番組で千原ジュニアがやはりその可愛さを絶賛するなど、その小動物的可愛さに注目が集まっていた。

 また本気か冗談かわからないような「テキトー」発言も、彼の可愛さと相まって魅力のひとつになっている。ジャニーズに入ったのは「美味しい物が食べられると思ったから」という発言をはじめとして、数々の「テキトー」語録を残しているが、そうした面もグループの冠番組『いただきハイジャンプ』(フジテレビ系)の開始によってファン以外にも知られやすくなった。

 そして大学の建築学科出身という経歴もある。先述の「24時間テレビ」でもその才は発揮されていたが、1月1日放送の『嵐にしやがれ』元日SPの「嵐旅館2016」でも嵐の大野智らとともに「ジャニーズ匠の会」の一員として、かまくらをつくるための設計図を作成していた。さらに1月12日放送の『幸せ!ボンビーガール』(日本テレビ系)でもDIYコーナーに登場し、幼稚園の下駄箱製作のための図面を書くなど、「建築アイドル」として活躍の場を着々と広げている。

 可愛い部分と知的な部分という対照的な二つの面。その絶妙なバランスが彼の最大の強みだろう。かつてダウンタウンの番組に出演した際、その学歴が話題になり、松本人志に最近のジャニーズの高学歴化の理由について尋ねられて「ジャニーズだけじゃ食っていけない」とこれまた本気とも冗談ともつかない返答をした場面からも、そんな二面性の魅力が伝わってくる。これまでジャニーズにいそうでいなかったニュータイプとも言え、その意味でも今年の活躍に注目していきたい。

 言うまでもなく、今年頭角を現し、飛躍するグループ・個人は他にも出てくるに違いない。冒頭にも述べた通り、ここで挙げたのはあくまで私の見た範囲内で目についた4組だ。今年のジャニーズを楽しんでもらう際のひとつの手がかりとして読んでいただければと思う。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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