ふかわりょう、二丁拳銃・小堀、ダイノジ、やついいちろう……芸人とDJの親和性
そして、その時流に乗り、自主企画イベントで頭角を現してきたのがダイノジだ。2005年より「ジャイアンナイト」と題した主催イベントを行い、日本各地を渡り歩いてきた彼ら。主に、大谷ノブ彦がDJを行い、大地洋輔がパフォーマンスやアジテーターとして観客を盛り上げる役割を担っている。音楽に造詣の深い大谷らしく、洋楽邦楽問わずなのはもちろんのこと、J-POP、アイドルソング、インディーズバンドの楽曲までカバーする幅広い選曲センスは圧巻で、2009年夏の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」では、DJブース史上最多動員記録を樹立したほど。音楽に対する愛情の深さと、「観客と一緒に盛り上がりたい」という一途な願いが作り上げたそのプレイスタイルは、DJとしての活動10周年を迎えた今も変わらず貫かれている。
そして現在、芸人DJとしてノリに乗っているのが「エレキコミック」のやついいちろう。友人でもある曽我部恵一のすすめでDJをはじめ、2009年に初のミックスCDをリリース後、フェスや自主企画イベントで観客を沸かせてきた。主に邦楽ロックやJ_POPの選曲を得意としているが、昨年発表した『Tropical Hour!!』では、レキシと「エレキシ」なるユニットを組んでオリジナル曲「トロピカル源氏」を発表するなど、DJ業にとどまらない展開も見せ始めている。ふかわのクリエイター気質と、小堀やダイノジが培ってきた選曲重視型。その両方を併せ持つハイブリッドとして、芸人DJ界の新たな指標となるのではと密かに注目している。
一見、噛み合わないようも見えるお笑い芸人とDJ。だが、どちらも観客の前に立ち、ダイレクトにその反応を受け止め、ネタ及び選曲に反映させていくという本質的な部分は、意外なほど似通っている。また、彼らの場合、芸人として「ウケる/ウケない」を日々肌感覚で磨いているためか、選曲にスキがなく、ある意味ストイックなのも特徴のひとつ。ゴリゴリのハウスで沸かせたあと、90年代J_POPに落とすなど、絶妙なハズシ(オチをつける)を入れてくるあたり、DJブースの中でひとつのネタを仕上げている感覚に近いのではないかとさえ思う。プレイ中に要所要所で笑いをとることを忘れない姿勢も、芸人らしさの表れだろうか。近年は、「ナインティナイン」の岡村隆史や「カラテカ」の入江慎也もDJ業にご執心とのこと。芸人DJの裾野は確実に広がっている。
(文=板橋不死子)