INKT『Re:birth of INKT TOUR2015-2016』インタビュー

INKT率いる田中聖(KOKI)、バンド活動への決意を語る「ポジティブな意味で、一寸先は闇!」

「初めての状況ばかり、それもいいと思う」

 

ーーINKTの音楽性についても改めて聞きたいのですが、結成当初の音楽的なビジョンはどんな感じだったんですか?

KOKI:そこまで明確ではなかったんですけど、いちばん最初にこのメンバーで出した音だったり、個々のメンバーのキャラクターを含めて、「こういう感じだよね」というイメージは何となくあって。あと、いろんなジャンルからメンバーが集まってきてるのも大きいと思うんです。ひとりひとりルーツが違っていて、パンクが好きってヤツもいれば、メロコアが好きってヤツもいて。俺もヒップホップから始まってるし、kissyはクラシック、ジャズから来てますからね。だからINKTの音楽は、本当の意味でのミクスチャーなのかなって思いますね。全員が曲を作れるっていうのも、自分たちの武器だと思うし。

ーーメンバー全員でINKTの音楽を作り上げている感覚なんですね。

KOKI:うん、まさにそういう感じですね。それぞれに積み上げてきたものがあって、それをINKTとしてどう表現するかっていう。ソロプロジェクトではないので、みんなで積み上げて、叩上げていくしかないのかなって…。

ーーバンドのボーカリストとしてステージに立つ意識は、グループのときとは違いますよね?

KOKI:違いますね。ワンステージ、全部ひとりで歌い続けることもなかったですし。もちろん難しいところだったり、考えなくちゃいけないことも多いんだけど、逆に「すごく単純なことだな」と感じる部分もあるんですよ。要は自分の全部をさらけ出して、全力でぶつかればいいんだっていう。こっちが全力で向かっていけば、お客さんも全力で返してくれるってことも、この1年のライブで感じられたんですよね。あと、ライブを見てくれた友達やスタッフが「今日、良かったね」って言ってくれるときって、自分も楽しかったときだったりするんですよ。さっきも言いましたけど、やるべきことをやったうえで、楽しむのがいちばん大事なのかなって。

ーーINKTでのライブ活動を通して、ボーカリストとしての新たな発見もありましたか?

KOKI:うん、それはたくさんあると思います。ボーカルの楽しさをメンバーに引き出してもらってるし、音楽の奥深さ、幅広さを教えてもらってる気もするので。同じ曲を100回やっても全部違う歌になるし、「いい歌が歌えた」と思っても、常にそれより上があるっていう。メンバーは「歌って、ラップしてシャウトも出来るっていうのはKOKIの武器だよね」って言ってくれるんですけど、自分としては「メンバーから吸収したものをステージでどんなふうにぶつけられるか?」というところにやりがいを感じてますね。

ーー本格的な活動スタートから1年が過ぎて、バンドとしてもボーカリストとしても、スタンスが明確になってきたのかも。

KOKI:今年はずっと手探りが多かったし、今回のツアーを通して、土台が出来上がればいいなっていう感じだったんですけどね。メンバーそれぞれの音楽観、ステージに対する感覚も違うので、それをひとつにまとめていくのはけっこう大変で。まず、1回もステージに立ってないときにアルバムを作り始めましたからね。とにかく「これがINKTです」と言える曲が欲しかったんですよ。そういう曲がないと、音楽勝負になったときの自分たちの軸が見えないなって。結果的にはそれが「Trigger」だったんですけど、そこにたどり着くまでに時間がかかったかもしれないですね。

ーーまずはバンドの指針になる曲を提示する必要があった、と。

KOKI:バンドといっても、いろんなジャンルがあるじゃないですか。ポストロックもあるし、パンクもあるし、ビジュアル系もあるし、アイドルがバンドをやって、それがすげえ本格的だったりもするので。そんななかで、自分たちがブレずに打ち出せるものは何だろう?という模索はありました。「Trigger」はいま聴いても、すごくバランスがいいと思うんですよね。ガムシャラにすべてを注ぎ込もうとした曲だったし、それが良かったんだろうなって。

ーー「バンドを象徴する楽曲を作る」って、すごく高いハードルですよね。そういうシビアな制作も初めてだったのでは?

KOKI:初めての状況ばかりですね。それもいいなって思うんですよ。30歳になって、まったく初めてのことに挑戦するっていうのも、なかなかないだろうなって。みんなが「結婚して、安定した仕事をして」ということを考える時期に新しいことを始められるっていうのは、すごい幸せだなって感じてますね。僕らはある程度いい年齢になってますけど、INKTとしては初めてやることばかりですからね。

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