『Many Shapes』インタビュー

Taiko Super Kicksが語る“平熱”の表現「一時的に盛り上がるより、じわっと広がってほしい」

 東京出身の4人組Taiko Super Kicksが静かな話題を呼んでいる。2012年結成、2013年から本格的な活動を開始し、2014年にミニ・アルバム『霊感』を発表。この12月に待望のファースト・フル・アルバム『Many Shapes』を発表する。

 ミツメ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ヨ・ラ・テンゴといった名前を引き合いに出される彼らのサウンドは、どこまで行っても決して激することのない静かで平熱のグルーヴだ。サイケデリックでアンビエントでソフト・ロックでポスト・ロックな叙情性とシンプルで清冽なメロディ、抽象的で多義的だが内面的な歌詞を歌う伊藤暁里(vo,g)の印象的なボーカルーー聴くうちに酩酊してフッと気が遠くなっていくような、そんな危うくも魅惑的なアルバムに仕上がった。

 急用で欠席した樺山大地(g)を除く3人、伊藤、大堀晃生(b,cho)、小林希(ds)に話を訊いた。4人は大学の同じサークル出身、一番年上の大堀とその下の伊藤は社会人、小林と樺山はまだ大学生という若い4人である。(小野島大)

小林「デモを聞いて、すごくいいなと思って、一緒にバンドをやりたいと思いました」

ーー昨年の5曲入りミニ・アルバム『霊感』に続きファースト・フル・アルバム『Many Shapes』がリリースされます。その『Many Shapes』に至る過程をお聞きしたいと思います。そもそもバンドの結成はいつなんでしょう。

大堀晃生:2013…?

小林希:12年。

伊藤:秋?

小林:夏です(笑)。初めてのライブが2012年の7月ですね。

ーー結成のきっかけは?

伊藤:僕らサークル(早稲田大学「MODERN MUSIC TROOP」、ほかにオワリカラ、トリプルファイヤーなど)の先輩後輩なんです。サークルの中で始めるために始めたバンドなんです。僕が大学3年の時。サークルの中でもプレイヤーとして面白いなと思ってた人たちに声をかけて。

ーーどういうバンドにしようと思ったんですか。

伊藤:そういう話は一切なかったですね。ちゃんとバンドをやろうというより、ちょっとやってみようぐらいの感じだったので。

小林:彼(伊藤)の書きためていた曲をやるために集まったので、最初からこういうコンセプトで、というのはなかったですね。

伊藤:僕は2年の夏から3年の夏までアメリカ(NY州ロングアイランド)に留学してたんです。その間に曲を書いてたんですね。なのでバンド組んで最初の曲はちょっと米西海岸の感じがありました。ちょっとガレージぽい。ジャンクというか…。

大堀:ローファイな感じ。

伊藤:そうそう。ウエーヴスとかベスト・コーストとか。そういうものがアメリカ留学中に好きになって。

ーーアメリカに行く前から曲は書いてたんですか。

伊藤:中高時代は曲作りをやってたんですけど、大学に入ったら面白い人とか巧い人とか音楽に詳しい人がたくさんいて、全然敵わないと思って…。

ーーああ、高校野球の選手が大学野球に入ったらレベルの高さに驚いたみたいな(笑)。

伊藤:(笑)そんな感じでしたね。中高だと自分がメインでやってたんですけど、大学ではそんな感じじゃなくて、曲は書かなかった。

ーーそれがアメリカに行って、また曲を書きたいという情熱が湧いてきた。

伊藤:はい。ローファイとかガレージって巧さとは別の良さがあるっていうか。ヘタクソでもいい、ヘタクソだからこそいい、ってバンドもけっこういるので。

ーーああ、ちょっと言い訳が効く、みたいな。

伊藤:そうですね!(笑)。自分でもバンドやっていいのかな、と思えたんです。背中を押してくれた、みたいな。

ーー中高時代はどんな曲やってたんですか。

伊藤:中高時代ぽい曲ですね。…バンプ・オブ・チキンとか。

小林:えーそうなんですか!

伊藤:高校が終わるぐらいになるとレディオヘッドとか。

ーーそれがアメリカに留学して、ローファイ・ガレージみたいなものに興味を持ち始めて、Taiko Super Kicksを組んだころには、そういう曲を書きためていた。

伊藤:入り口はそうでしたね。

ーー彼が作っていた曲を聴いてどう思われたんですか。

小林:私はデモを聞いて、すごくいいなと思って、一緒にバンドをやりたいと思いました。

大堀:声がいいと思いましたね。

小林:そう! それまで歌ってるの聴いたことなかったので。ちょっとアメリカ帰りって感じはあった(笑)。デモもやたらローファイに作ってるんですよ(笑)。

伊藤:やたら音を歪ませて。

ーーじゃあ今とはだいぶ違う。

小林:違いますね。

ーーなるほど。大堀さんもデモを気に入って。

大堀:才能あるんじゃないかと思って。

伊藤:ありがとうございます!

大堀:(一緒にやったら)自分が得するかなと思って(笑)。

ーーこいつについていけば何かいいことあるかも、と。

大堀:それはありました(笑)。

ーーもう1人、樺山さんも加わって。最初からオリジナル曲ばかり?

伊藤:そうですね。

ーー最初に音を出した時のことは覚えてますか。

伊藤:樺山君にギターで轟音出してもらって。

小林:あまり考えないでやってましたね。

ーーだいぶうるさい感じで。ライブもそんな感じですか。

伊藤:そうですね。サークルの内輪のイベントで2曲だけ。結成してからちゃんとライブが始まるまで少し間があるんです。というのもそんなに長く続ける気もなかったので。それが2013年になって某ネットレーベルから声がかかって参加したら、サウンドクラウドの再生数が伸びたり反響があって、ライブハウスでライブもやるようになったんです。

小林:それが2013年の5月で、そこから毎月ライブをやるようになりました。

ーー最初はそんなに本気でやる気もなかったけど、たまたま外部の人に発見されて認められたので、やる気が出た。

伊藤:その通りです(笑)。

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