『紅白歌合戦』黒柳徹子・V6井ノ原・綾瀬はるか司会起用の意図とは? “節目の年”という視点で読み解く

 第66回『NHK紅白歌合戦』の出演者が11月26日に発表された。

 今回の紅白は、総合司会に黒柳徹子と有働由美子アナウンサーを起用し、赤組は綾瀬はるか、白組はV6の井ノ原快彦が司会を務めることが決定。また、近藤真彦や今井美樹、X JAPANといった往年のアーティストが復帰するほか、初出場アーティストとして大原櫻子、Superfly、乃木坂46、μ’s、レベッカ、ゲスの極み乙女。、BUMP OF CHICKEN、星野源、山内惠介、三山ひろしの計10組が発表された。

 今回のラインアップから『紅白歌合戦』をテレビ史的にどう読み解くことができるのだろうか。『社会は笑う・増補版』『紅白歌合戦と日本人』の著者である太田省一氏はこう解説する。

「『紅白歌合戦』は単なる歌番組ではなく、世の中の移り変わりを演出に取り込んだり、その年に注目された出来事や人を紹介する一種のニュース番組でもあります。今回の黒柳さんを総合司会に起用するという発表には事前の報道にも名前が挙がっていなかったので驚きました。しかし、よく考えると今年は『紅白歌合戦』にとっては“節目の年”です。戦後70年、ラジオ放送開始から数えて日本の放送90年、そして東日本大震災発生からまもなく5年という3つの節目が重なっています。戦後70年を実際に生き、テレビ放送が始まった1953年に発足したNHK放送劇団の1期生となって以後テレビ・ラジオの第一線で途切れることなく活躍、そしてユニセフなど社会貢献にも熱心な黒柳さんは、その“節目の年”の『紅白歌合戦』の総合司会としてまさに適任と言えるでしょう」

 また、同氏は綾瀬と井ノ原の司会起用についてこう語る。

「東日本大震災が起こって以降、『紅白歌合戦』でも復興チャリティーソング『花は咲く』が2012年以降毎年歌われています。震災からまもなく5年ということで、もう一度そのような場面があるだろうと思います。そんななか、2013年の紅白の司会として天然キャラでお茶の間を沸かせた綾瀬はるかは、その年に同曲を紹介した際、感極まって涙ぐむという場面がありました。こうした姿も評価され、再度司会を務めることになったのではないでしょうか。井ノ原快彦は『あさイチ』の功績が大きいでしょう。NHK朝の帯放送になる情報番組の司会者としてあらゆる世代に親しまれており、また番組で固いテーマを扱うようなときでも、自身の考えを要所に挟みながら番組をスムーズに仕切っている彼の姿は、紅白の司会にもぴったりと判断されたのでしょう」

 続けて、80年代~90年代組の復帰については、メインの視聴者層を考慮した結果ではないかと推察する。

「そうした歌手やアーティストが選ばれたのは、『紅白歌合戦』が歌番組としてあらゆる世代に向けて見られることを想定しているからです。『ミュージックステーション』をはじめとする地上波の音楽番組は若い世代向けのものが多く、逆にNHKの歌謡曲番組は若い人から見られることが少ないですが、そのなかで紅白は全世代に向けて作られている現在ほとんど唯一の音楽番組ではないでしょうか。では、全世代をターゲットにしたときに、どの年齢層が中心になるかというと、番組の制作サイドは、ここ数年来80年代に青春を送った50歳前後くらいの人たちを想定しているように見えます。この年齢層の人たちは十代の頃、演歌というよりもアイドルやポップス、ロックに夢中になった世代なので、例えば80年デビューでアイドルブームの中心だった近藤真彦や、ポップス・ロック系の高橋真梨子、X JAPAN、今井美樹、レベッカなど、80年代後半~90年代にかけてそうした分野で活躍したアーティストが目立つラインナップになったのではないでしょうか」

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