「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第16回『バンドじゃないもん! ワンマンライブ Vol.4「カサナルイズム!カナデルリズム!~君の笑顔で世界がやばい編~」』

バンドじゃないもん!が内包する強烈なスリルとは? Zeppワンマン徹底レポート

 

 「ツインドラムあいどる」としてメジャー・デビューし、さらにメンバー(恋汐りんご・七星ぐみ・水玉らむね)を追加してアイドル色を強めたものの、かっちゃんの脱退で一時は楽器演奏ができるメンバーはみさこのみの状態に。その後、ベースを弾ける望月みゆが加入。水玉らむね脱退後に、「ちゃんもも◎」こと天照大桃子と、キーボードの甘夏ゆずを加えたのが、現在のバンドじゃないもん!だ。紆余曲折のあったグループだが、そのぶん現在のバンドじゃないもん!はメンバーの個性の豊かさとグループとしての「強さ」をあわせもっている。

 開演を告げるメンバーのアナウンスがあり、ステージのスクリーンにオープニング映像が流れる。そしてステージの幕が上がると、そこには2階建ての洋風建築の回廊のような舞台装置が設置されていた。こんな大がかりな舞台装置がバンドじゃないもん!のライブに用意されたのは初めのことだ。さらに、みさこのドラムも台に乗っていて、いつもより一段高い。ステージを見ただけで、今日のライブへの意気込みが一目でわかる光景だった。

 1曲目の「お姫様ごっこ」から、みさこが前で踊ったり、ドラムセットに戻って立って叩いたりと忙しい。これに先立つ2015年6月21日、私は『YATSUI FESTIVAL! 2015』で1年以上ぶりに最前列でバンドじゃないもん!のライブを見たのだが、フィジカルにして非常に情報量が多い現在のバンドじゃないもん!の姿を目の前で見るのは鮮烈だった。それはZepp DiverCity Tokyoの2階席から見ても変わらない。

 

 元般若のDJ BAKUが作曲した「RAVE RAVE RAVE」では、レイヴな楽曲にあわせて扇子も使い、Zepp DiverCity Tokyoが一気にジュリアナ東京に変貌した。「イヌイットディスコ」では照明とのシンクロが見事。「バンもん!のテーマ」は初期から演奏されている楽曲だが、現在はみさこ・望月みゆ・甘夏ゆずによる生演奏のパートが追加されている。

 バンドじゃないもん!のメンバーは、苦しさも葛藤も基本的には表に出さない。彼女たちはお涙頂戴も一切しない。その代わり、過剰なほどの幸福感をアピールすることで、ファンをここまで増やしてきた。しかし、メンバーにとってみれば、精神的な負荷も大きかったはずだ。……そんなことをメンバー紹介を聞きながら考えていると、みさこは叫んだ。「今日はみんながなんで生まれてきたかを教えてあげます、それはバンもん!と出会うためだー!」と。もんスターの歓声に、みさこは「まだ足りない!」とさらに叫んだ。続く「もっと愛しあいましょ」はリンドバーグのカヴァーだが、今ではすっかりオリジナル曲のようだ。

 

 そして「雪降る夜にキスして」では、この日の最初のハイライトが訪れた。みさこのドラムセットが乗った台の後ろに、動物のかぶりものをした数人のスタッフがやってきた。何をするのだろう……と思っていると、ドラムセットの乗った台ごと花道の先端まで押して運び、みさこはいつもよりも長いドラムソロを叩ききったのだ。ドラムセットを運ぶのも、みさこがドラムを叩くのもすべてが人力。バンドじゃないもん!らしい泥臭さにして、強烈なカタルシスをもたらしたシーンだった(参照:みさこのTwitterの動画 https://twitter.com/SKCmisako/status/618347686777913344)。そう、この日の花道の幅は、みさこのドラムセットの台の幅に合わせていたのだ。

 「アイの世界」では、七星ぐみの指導でもんスターをジャンプさせ、Zepp DiverCity Tokyoに巨大なウェィヴを発生させた。MCというか小芝居(初期のバンドじゃないもん!のライブでは小芝居がいつもあった)を挟んでの「YATTA!」ははっぱ隊のカヴァー。なぜ今日この楽曲をやるんだ、という馬鹿馬鹿しさもバンドじゃないもん!らしかった。

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