嵐・相葉雅紀の演技が評価を高めている理由とは? 『ようこそ、わが家へ』好調の背景を読む

 そこで連想するのは、2014年に行われた嵐のハワイツアーの模様を収めた映像作品『ARASHI BLAST in Hawaii』における、ドキュメンタリー映像内での相葉の発言だ。相葉は嵐結成から10年前後が経ち、グループが本格的なブレイクを迎えていた頃、目まぐるしく過ぎていく日々に焦りを覚えていたという。「ものすごく自分の中のスピードがあがって、本当に生き急いでいるみたいになっちゃっているときがあって。毎日、刺激的なところに立っていて、楽しいんだけど、精神的には出す一方だったから。入れるものがなくて、このままじゃヤバいかもなって思っていた」と、過剰なアウトプットに疲弊していたことを明かしている。しかし、11年、12年と年月を重ねることにより、そうした焦りは次第に消えていったそうだ。

「なんとなく自分の中でペースを掴めるようになったというか。それは大きいかもしれない。いまはすごく気持ちにゆとりがあるというか、そのなかでちゃんと仕事に向き合えるし、追いかけられるんじゃなくて、追いかけることができる。(中略)それは仕事の内容どうこうじゃなくて、自分の中の精神的なものなんだけど」と語る彼の顔には、精悍ささえ漂っていた。

 相葉は、歌が抜群に巧いわけでもなければ、人並みはずれてダンスに秀でているわけでもない。演技に関しても、天性のアクターとは異なるだろう。そのうえ、2002年と2011年には気胸を患うなど、身体も強いほうではない。だからこそ、相葉の魅力はすぐには伝わりにくく、遅咲きになった部分もあるだろう。しかしながら、嵐の一員として必死に仕事に向き合った日々は、彼を確実に成長させ、精神的にたくましい男へと変えたに違いない。

 『ようこそ、わが家へ』が人々の心を掴むのは、ごく普通の、どちらかといえば華奢な青年が、大事な人を守るために戦おうと決意して強くなっていく姿が、相葉がアイドルとして成長してきた軌跡に重なり、勇気を与えられるからではないか。30代となり、精神的なタフネスさを備えた相葉は、同作でどこまで化けるのか。次回放送を楽しみに待ちたい。

(文=松下博夫)

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