『嵐はなぜ最強のエンタメ集団になったか』先行公開PART.1

嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場

山本「嵐は誰かのようになりたいと言ったことがない」

田幸:ジャニーズ内でのポジションでいうと、あまりにも嵐が絶対的なので、そろそろ下のグループが出てきてくれないと困りますね(笑)。私がすごく好きだった売れる前の嵐の空気感は、今のHey! Say! JUMPが持っていると言い続けているんですが、そろそろ彼らの時代が来るんじゃないかと思っています。

山本:同意です。あの時、嵐に味わっていたときめきを今、JUMPに感じている。

田幸:自分たちで考えてやっていることはまだまだしょぼかったりするんだけど、その手作り感が良いんですよね。あたたかくほのぼのしていて。

山本:メンバーも内弁慶ですよね。

田幸:そう、なんかぎゅっと固まっていてね。そこが温室グループって感じでかわいい。

山本:嵐が後輩に与えた影響でもっとも大きいのは、「仲良し売り」だと思います。彼ら以降の後輩グループはみんな仲良しをアピールしますよね。

田幸:ジャニーズだけでなく、他にも影響を与えていますよね。「オレがオレが」っていうタイプの人が出てこない。JUMPもそうですけど、圧倒的センターの山田くんでさえもソロを一回断ったりしていて。今はグループの意識が強いんですよね。

関:僕は嵐というのはジャニーズで異質なものだと思っているんですよ。本流ではないので、嵐を見習ってはいけないと思うんです。他のグループがお手本にするべきグループじゃないと思う。

田幸:ジャニーさんイズムじゃないですもんね。

関:嵐は成功したけれど、ジャニーズの中であれを普遍化するべきではないと思っていて。だから真似をするよりも、嵐と違うなにができるかを考えた方が良いんじゃないかな。

山本:嵐のメンバーの過去の発言を思い返してみると、「SMAPに憧れた」みたいなことを今まで言ったことがないと思うんです。TOKIOやV6の背中を追うっていう共通意識があったと思うし、彼らは一番になりたいとはずっと言っていたけれど、誰かのようになりたいとは言ったことがなかった。それがトップになれた理由だと思う。最近の若い子は“嵐になりたい”とか“キスマイになりたい”とか言うから、その時点で違うんじゃないかと思います。

関:ジャニーズは個人の魅力で売るというのがたしかなやり方だし、SMAPはそのやり方で成功したと思うんですけど、嵐は嵐がまずあって、というのがあるので。だから今の若手の人たちはSMAPのやり方を手本にするほうがいいのかなと。自分が個人として何をやりたいかということをちゃんとやるっていう。だから、嵐はどうして上手く行っているのか謎(笑)。

田幸:嵐がブレイクしたのは、やはりタイミングですかね。

山本:関さんも著書で書いていますけど、時代だと思います。

関:多くのアイドルがAKB48のように誰が一位で、という格付けを作っていく中で、嵐は同じように民主主義だけど、平等を貫いているでしょう。これまで誰もそのやり方をしなかったんだよね、どちらも私たちの日常の生活なのに。いつも競争だと疲れるじゃないですか。嵐はそれを拒否しているからこそ、求められたのかもしれない。

田幸:本来は誰が一番か、みたいなのが芸能界だったわけですよね。でもそんな中に、嵐がポコッと入ってきて。そして嵐の人気によって、いつの間にかそっちがメインになってきているっていう。

山本:でも、櫻井くんなんかは、もうその状況に気付いて危機感を持っていますよね。去年くらいのインタビューを読むと、「僕は『変わりたい』とはっきり思っている」「メンバーの誰かが『ガラッと路線を変えて、こうやりたい!』って言い出して、それにほかのメンバーも賛同するなら、全面的に5人で舵を切ります」(『日経エンタテインメント!/13年7月号』より)と言っていて。櫻井くんは要所でグループが今、何を考えているのかをちゃんと話してくれるんです。そこが信用できるというか、まだ付いていこうと思えるところですね。

関:彼は優秀なスポークスマンですよ。メンバーが何を思っているのかをまとめて発言するという彼の賢さね。

山本:それが嵐がただの仲良しグループじゃないところだと思います。ラップ詞もちゃんと書いているから、昔の櫻井くんの詞を読むと泣きそうになります。「この時代はこんなこと言ってたんだ」っていうのが、後からつながっていく。

関:若手で嵐みたいに、新しいスタイルを模索しているグループっているかな。

山本:Sexy Zoneが本当は5人だったらね。ジャニーズの超王道で見応えがあって良かったんですけど。でも逆に3人になったからこそチャンスがあるのかもしれない。それは切ないですよ、もちろん。グループのファンだった人たちはどんどん離れていってるし。やはりグループ内のメンバーの関係性にファンが付くから、そこの物語が途切れてしまうと心が離れてしまう。だけど、新しいチャレンジではあると思う。

田幸:バレーボールでのデビューはなくなったものの、今年新しいグループが誕生するので、そこにも注目したいですね。今まさにジャニーズJr.のメンバーで組んでいる最中だと思うのですが、目が離せないです。(続きは書籍で)

(構成=岡野里衣子)

■書籍情報
『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』
リアルサウンド編集部・篇
価格:¥ 1,500(+税)
予約はこちらから

内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』から生まれた、まったく新しい嵐エンタメ読本。

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