香月孝史が『3rd Year Birthday Live』を分析

乃木坂46がバースデーライブで描いた“多層的な絵” 最新のグループ動向を読み解く

 

 過去曲の振り返りによって、このような多層的な絵をいくつも描いたのが今回のバースデーライブだったといえる。選抜メンバーとアンダーメンバーの拮抗によって、互いの立場の難しさがしきりに議論の種にもなってきたこの一年だが、これはまた非常に贅沢な状態でもあるのだ。選抜とアンダー、この二者はいつしか上下ではなく、混ざり合いながらも異なった特質を持つ二つのプロジェクトの並立のようになった。今回ライブの合間にも披露されていたように、人気ファッション誌に相次いで専属モデルを送り込んだことは、選抜メンバーが中心になって築いてきた乃木坂46のポジションの賜物である。一方、10thシングル『何度目の青空か?』までのアンダーライブの集大成である、「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」の冒頭でスポットを浴びたセンターの井上小百合を中心にしたパフォーマンスと演出には、アンダーを選抜にも増して光らせようとする矜持もうかがえる。

 アンダーライブ・セカンドシーズンを経た昨年の11月、10thシングルリリースに際して大阪、名古屋で行なわれた購入者特典ライブでは、選抜とアンダーを混合したメンバー編成をとっている。ある意味ではもはや差のなくなった両者が刺激し合ってチームを組むこの施策はファンからも好評を博し、メンバーたちもまた充実感をもって混合のメンバー編成を振り返った。今回のバースデーライブは端々で、その昨年終盤の混成チームの空気をあらためて垣間見せてくれたともいえるだろう。メンバーそれぞれが放つ個性の強さを考えれば、選抜とアンダーとで目立つ機会を得る頻度が変わってしまうことは非常に惜しい。ただし、どうしてもシングル表題曲の選抜メンバーは限られてしまうため、個々のメンバーすべてに“選抜”としての露出度で光を当てることはできない。また、この先の乃木坂46の進化や長期継続のためには、さらなる新メンバー加入は必然になるだろう。ただし、いたずらに増員されるばかりでは、メンバーそれぞれに見せ場を与えるためのキャパシティの限界はますます課題になる。

 

 そこで未来に向けての鍵になるのが、バースデーライブの中で発表された、新プロジェクトのメンバー「1期生」の募集だろう。つまり、「乃木坂46の3期生」募集ではなく、MCで松井玲奈が予測したように新たなグループとしての展開と考えられる。これは乃木坂46総体としての新局面を築くための一歩であり、同時に単なる増員によって現有メンバーそれぞれの活躍を埋もれさせてしまわないための新体制づくりとなるだろう。

 選抜、アンダーそれぞれの充実によって贅沢な状態を保ちバースデーライブを成功させた乃木坂46の4年目は、非常に明るい滑り出しといえる。メンバーを募集する新プロジェクトや「16人のプリンシパル」の他に新たに企画される新舞台公演などを経て、4回目のバースデーライブがどんな絵を描いているのか、ここからの一年を楽しみにしたい。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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