姫乃たま「地下からのアイドル観察記」
アイドルから卒業する最高の方法とは? 地下アイドル・姫乃たまが考える
そんな中で、アイドル評論家の人が最もよい方法としたのは「時期を決めてファンと駆け抜ける卒業」でした。卒業時期を一年後と発表したAKB48の高橋みなみや、半年ほど時間を置いたモーニング娘。'15の道重さゆみなどが、最高の卒業をしたアイドルにあたり、「ファンも心の準備ができるし、最後までのイベントを全通するなど一緒に駆け抜けられる」といった、納得できる理由でした。
そして、これはまだ卒業を経験したことのない私の考えですが、最高かどうかはともかくアイドルというのは、無言でちょこちょこ卒業を繰り返していると思います。最近、最もリアルだなあと思ったのは、いずこねこの活動終了でした。
ひとりで舞台に立っていた茉里さんが、いずこねこを終了して、プラニメという新たなユニット活動へと移行していったのですが、あれほどリアルなアイドルの卒業は他にないなと思ったのです(彼女とはいずこねこの活動終了をきっかけにしてようやく知り合ったので、間違いがありましたらファンのみなさまご指摘していただけると幸いです)。
つまり完全なアイドルからの引退ではないので、アイドルに疎い人からすると、どういうことなんだという感じなのですが、ユニットのアイドルが主張していたような、ステップアップのための卒業は、アイドルからアイドルへという同ジャンルの中でも行われることがあるのです。
いずこねこの話に自分を重ね合わせるのはあまりに厚かましいのですが、私はアイドルを辞めようと思っていた18才の時に、現在の名前に改名して、活動を続けることを決めました。もともと゚*☆姫乃☆*゚という名義で16歳から活動していたのですが、クオリティが未完成なまま舞台に立ち続けてきた二年間に耐え切れなくなってしまったのです。プライベートで地下アイドルの活動に対して、非難めいた言葉を投げかけられても、何も言い返せない自分がいました。
活動を再開しようと決めた時に、姫乃たまという名前にしたのは、フルネームでないとあまりに芸名っぽいため、仕事をする際に馬鹿にしてくる大人が多かったためです(あと文字化けがひどかった)。しかし、私は活動を始めるときに適当につけてしまった、この源氏名のような名前を完全に切り捨てることができませんでした。やめようと思っていたアイドル活動も同様に切り捨てることはできませんでした。ただ自分の無力さを受け入れ、干渉しないからそばに置いてほしいという意味で、猫のような「たま」という名前をつけたのです。
あの改名は私にとってひとつの卒業でした。そして本当の卒業方法はまだ見つけ出せていません。最初に編集部に抱いた恨みにも似た気持ちは、最高の卒業方法が見つけられない自分を人のせいにしたかったからだと思います。
■姫乃たま(ひめの たま)
1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルの活動を経て、ライター業も開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。そこそこなんでもやります。仕事、ください。
[ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな
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■アルバム情報
FriendlySpoon
『フレスプのファースト・アルバム』
姫乃たまがボーカルとして参加したFriendlySpoonのフルアルバム『フレスプのファースト・アルバム』発売中。
〈収録曲〉
1.フレスプのテーマ
2.左から3番目の星
3.夢の風船旅行(リミックス:森本和樹)
4.月とトランポリン
5こころのしずく
6.フレスプのテーマ(ワルツ)
7.歌をおしえて
8.ゆるがせの朝に
9.幸せの輪っか
10.星空のふたり