香月孝史が『アンダーライブ セカンド・シーズン』ファイナル公演を考察

乃木坂46のアンダーライブは継続すべきーークリスマスライブに見た“修練の場”としての意義

 

 そしてアンダーライブの中核には、井上小百合や伊藤万理華、齋藤飛鳥、さらには中元日芽香らが立つ。2014年のアンダーメンバー躍進の象徴でもある伊藤をはじめとして、彼女たちにはチームの中心に立つ人物としての風格さえ備わってきた。その中でも特筆すべきは、井上小百合だろう。乃木坂46のデビュー時から選抜常連としてポジションを築いた井上だが、この一年はアンダーで過ごすことも多く不安定な立場にいた。これまでの乃木坂46ならば、そこで新たに活路を見出すことは難しかったに違いない。しかし、セカンド・シーズンでアンダーの中心に立った彼女は、ライブグループとしてのアンダーメンバーを先導し続けた。この日のファイナル公演では、原則としてセンターに立ちつつ、全員センター企画では曲目に応じて様々なポジションを手広く担当した。選抜常連を経たのちにアンダーライブの中心となった彼女はこのライブでただ一人、センターを務めながら同時にグループの背骨として全体を見渡す場所に立っているようだった。これもまた、「アンダー」が「控え」を意味する言葉ではなく、選抜組とは性格を異にするライブグループとしての色合いを濃く持つようになったことで実現した景色だろう。

 アンコール後のMCではメンバーの口から、今後のアンダーライブがどうなるのか、まだ不透明であることが語られた。仮にアンダーライブが今年限りの現象になってしまうのだとすればそれはあまりに惜しい。来年1月24日開催の「LIVE EXPO TOKYO 2015 ALL LIVE NIPPON VOL.3」に、乃木坂46アンダーメンバーでライブ出演することは決まっているが、それ以降アンダーメンバー単位の活動が長期継続的なものになるのかはまだわからない。選抜メンバーの多くが固定されている乃木坂46にあって、選抜かどうかにかかわらず活路を見出し自信を深める場を築いたのだから、継続させることにこそ意味があるはずだ。また、このアンダーライブの成果によるレベルの底上げで、乃木坂46というグループはようやく対外試合に打って出るための準備を整えたに過ぎない。ライブの連続によって自信を得たアンダーメンバーにしても、今日のアイドルグループとしてはまだまだライブ経験の浅い部類に入る。その意味でも、来年以降にアンダーライブが発展的に継続されることを願う。

 ここまでアンダーライブを通じた達成にクローズアップしてきたが、選抜常連メンバーだからこそ見える景色もまた、当然ある。生駒里奈は常々、「外」の世界を見ることの必要性を言動であらわし、また「外」の世界をグループ内で最も知る兼任メンバーの松井玲奈はライブでもTVバラエティなどでも、自身のパフォーマンスによって乃木坂46メンバーの覚醒を促すよう立ち回っている。「芸能界」という広い場に乃木坂46を適切に位置づける俯瞰した視野は、選抜メンバーがくぐってきた経験によってこそ得られるものだろう。アンダーライブファイナルの翌日、翌々日に行なわれた乃木坂46全体のライブで見せた松井の身のこなしや振る舞いは、やはり他のメンバーとはキャリアも視野も明らかに別のレベルにいた。「外」に目を向ける彼女たちの広い視野と、アンダーを中心としたライブの底上げとがうまく接続されるならば、乃木坂46のパフォーマンスは次のレベルに進むはずだ。そのことを考えれば、「選抜=マスメディア」「アンダー=ライブ」というように得意分野がはっきり分断されてしまうことは、必ずしも健全とはいえない。両者の足並みが揃い、双方の往還が活発になった時、グループ総体としての充実度は大きく増すのだろう。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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