香月孝史が『アンダーライブ セカンド・シーズン』ファイナル公演を考察

乃木坂46のアンダーライブは継続すべきーークリスマスライブに見た“修練の場”としての意義

 

 アンダーライブ自体、当初は光の当たることの少ない非選抜メンバーの活動の場として企画されたものだったはずだ。つまりそこには、選抜仕事の代わりに与えられた活動という意味が強く含まれていた。しかし連日のライブは、むしろ選抜に入ってしまえば経験することのできない、ライブパフォーマンスの修練の場としてアンダーメンバーを磨いた。彼女たちは選抜常連メンバーのような有名性こそ持たないかもしれないが、ライブでの爆発力は選抜メンバーを凌駕するに至り、アンダーライブ経験者にしか持ち得ない武器を手にした。「選抜」「アンダー」という言葉が通常含んでいる“上と下”の意味合いは薄れ、乃木坂46の「アンダー」とは、選抜と性格の異なる、ライブグループとしての意味を強く持つようになったのだ。それを証明したのが、この日のセカンド・シーズンファイナル公演だった。

 このライブの目玉企画、メンバー全員が一曲ずつセンターポジションを務める「全員センター」で、アンダーメンバーの成長ぶりはより際立った。樋口日奈センターによる「ぐるぐるカーテン」から始まり、企画最終盤の研究生・鈴木絢音センター「そんなバカな・・・」、佐々木琴子センターの「ガールズルール」に至るまで、誰がセンターをとってもそのポジションを引き受ける準備ができているように見える。連日のライブで培ってきた経験は、グループ内の立場にかかわらず、ライブという場で堂々と主役を競う姿勢を植えつけた。気づけば、二期生が入っておよそ一年の間、大きな課題だった一期生との壁もアンダーライブでは薄くなっていたように思う。まだ正規メンバーとされていない二期研究生さえ、受け持ちの曲ではセンターを当たり前にこなしている。これまで不完全燃焼の扱いを受けてきた研究生が、正規メンバーと分け隔てなく全員センター企画に参加したことの意義は大きい。満足にアピールする場もなかった彼女たちが正規メンバーを、ともすれば選抜メンバーさえも喰ってしまうためのチャンスがようやく開けたのだから。

 乃木坂46全体のライブでは選抜常連組の陰に隠れてしまうメンバーのポテンシャルに、スポットが当たる。この機会はグループ全員にモチベーションと焦りを与えうるものだし、そうあってほしいと思う。たとえば、川村真洋。グループ内で誰よりもキレのある動きを見せながらも、その力量を示す場に恵まれてこなかった。この日、川村がセンターに立った「音が出ないギター」は、彼女のパフォーマンスに似つかわしいクールな仕上がりになったが、それ以上に彼女の利点はどの楽曲、どのポジションにいようとも、細やかに己の技量を発揮しきるところにある。ライブ序盤で披露されたグループの代表曲のひとつ「制服のマネキン」では、三列目ながら最も目をひくアクトを見せていた。川村はこれまでのアンダーライブで「制服のマネキン」のセンターも務めているが、彼女が中心に据えられると、同曲はまったくイメージを一新してしまう。アンダーライブが固有の意義を強く持った今だからこそ、グループ全体のライブで彼女を中心に置くことが乃木坂46のライブを一歩先の局面に導くのではないか。そんな想像も容易に浮かぶ。

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