「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第7回 Shiggy Jr. presents「なんなんスかこれ。」
Shiggy Jr.がライブで見せた“末恐ろしさ”ーー穏健なようでラディカルな音楽性とは?
まだインディーズでミニ・アルバムを2枚リリースしただけなのに、一部の音楽ファンから注目を浴びているShiggy Jr.。シティポップと形容されることの多い彼らだが、その真価とは「ポップミュージック」であることに賭ける過剰なほどの意気込みと、呆気にとられるほどの参照元のてらいのなさだ。2014年11月21日に新代田FEVERで開催された『Shiggy Jr. presents「なんなんスかこれ。」』での彼らのステージは、そう確信させるものだった。
Shiggy Jr.の主催イベントに招かれたのはSANABAGUNとlyrical school。両者ともヒップホップである、という点もShiggy Jr.がジャンルの垣根をあっさり越えていて面白い。
SANABAGUNは、2MCに加えてトランペットとサックスも擁する生バンド編成のグループ。バンドは太いグルーヴを繰り出し、そのサウンドにはレゲエやジャズの要素も。さらにはグループ全体で振り付けを始める場面や、「なんなんスか」というイベント名のコール&レスポンスもあり、ユーモアも操るステージだった。
11月2日のリキッドルームでのワンマンライヴが大成功を収めたlyrical schoolは、台湾公演も経ての凱旋ライヴ。いつものようにまずバックステージで円陣を組む声が響き、そして6人がステージへ。意外だったのは、2曲目から「おいでよ」「わらって.net」「抜け駆け」とメロウな楽曲を並べてきたことだった。それでもフロアの熱はまったく落ちない。前半の意外な選曲は、リキッドルームを経ての自信の表れだったのかもしれない。短いMCを挟んでの後半では、一転して「FRESH!!!」「brand new day」「PRIDE」と今年のシングル曲を並べて、一気に盛りあげた。
lyrical schoolは『PRIDE』でオリコン週間シングルランキング9位を獲得したばかり。lyrical schoolが終わったらフロアの人数が減るのでは……とも気にしていたのだが、多少の入れ替わりこそあれまったく人は減らずに満員のまま。むしろ、Shiggy Jr.のセッティング中にリズム隊が軽く演奏しただけでフロアが盛りあがっていたのだ。開始前からこの異様な昂揚感はなんなのだ、と思いながら私もその空気に同調していた。
今夜は、ヴォーカルの池田智子、ギターの原田茂幸、ベースの森夏彦、ドラムの諸石和馬の4人に加えて、アコースティック・ギター1人、ブラスセクション3人、キーボード2人、コーラス1人を加えた総勢11人からなる大編成だった。
「oh yeah!!」でライヴが始まると、シティポップと呼ばれていたShiggy Jr.を実際に聴いたとき、むしろ「ギターポップ」や「ネオアコ」といった単語を連想したことを思い出した。この日の「oh yeah!!」を締めくくったのはアコースティック・ギターの音。続く「Summer Time」は、一気にテクノ色を強めたアルバム『LISTEN TO THE MUSIC』の収録曲で、ライヴではキーボードを加えて人力テクノを展開しはじめた。「Day Trip」では、いよいよサックス、トロンボーン、トランペットからなるブラスセクションが大活躍。今夜は新代田からデトロイトが見えそうなモータウン風味だ。コーラスとのハモりも心地良く、それは「baby I love you」でも同様だった。「oyasumi」でのギターのうなりかたには、「パワーポップ」という単語も脳裏に浮かぶ。さらにメンバーがステージからフロアを煽り、この光景だけ見るとフェス系のバンドのようだ。