永田寛哲×もふくちゃん、プロデューサー対談
ピクシブ発アイドル、虹のコンキスタドールが目指すものは? 永田P×もふくちゃんが対談
イラストSNS「pixiv」を運営するピクシブ株式会社が、プロジェクトの中心となって次世代クリエイターアイドルを育成する「つくドル!プロジェクト」。そこから生まれた第1期生ユニット・虹のコンキスタドールが、初のシングルCD『にじいろフィロソフィー』をリリースすることが決定したほか、初ワンマンライブを2015年1月11日に開催。新メンバーとして鶴見 萌(つるみ もえ)が加入し、総勢11名になるなど、8月のお披露目以降、活発な動きが続いている。
SNS運営企業がなぜ、アイドルグループを手がけることになったのか。ピクシブ副社長で、プロデューサーを務める永田寛哲氏と、今回サウンドプロデュースを主に手がけるもふくちゃんこと福嶋麻衣子氏に、虹のコンキスタドールの狙いやコンセプトについて語ってもらった。聞き手は、『アイドル楽曲ディスクガイド』の編者で、アイドルカルチャーに詳しい編集者・ライターのピロスエ氏。(編集部)
永田「pixivとして動かせるコンテンツのひとつとして、アイドルもアリじゃないか、と」
――イラストSNSであるpixivが、なぜアイドルの運営を手掛けることになったのか、その経緯から教えて下さい。
永田:pixivというサイトはおかげさまで順調に発展してきましたが、次のステップとして単純に会員を増やしていくというだけではなくそれ以外で何をすべきか考えたときに、やりたかった方向性がふたつありました。ひとつは海外のユーザーをもっと増やしていきたくて、そのためには自社で何かしらのコンテンツを持ちたいなと。というのも、pixivとはコミュニティであり場なので、例えば海外のイベントに呼ばれても「これがpixivです」と持っていけるコンテンツが無い。なので、pixivとして動かせるコンテンツを作りたいという流れが社内でまずあった。現在オリジナルマンガを配信したりと、いろいろコンテンツを作るという試みを開拓しているところで、その中のひとつとして、ちょっと飛び道具ではあるけど、アイドルというコンテンツもアリじゃないか、と。
――なるほど。もうひとつは?
永田:絵が描ける人や絵に興味がある人だけを相手にしていると、会員数は徐々に頭打ちになっていきます。そこで、絵を描きたいって思う人たちをどんどん増やしていかないといけない。たとえば、小学校で休み時間にマンガを描いてるような子というのが今クラスに5人いるとしたら、それを10人に増やしたい。そうすれば、その増えた5人にもpixivを使ってもらえます。あと、ピクシブはイラストだけじゃなくて、小説やコスプレのサービスも提供しているし、最近では音楽のイベントも立ち上げました。創作するということに関するあらゆるモノ、クリエイター、ジャンルを問わずpixivにどんどん集まってきてもらいたいなっていうのがあって。集まってもらうには、やっぱり創作するという行為が面白い、楽しいと思ってもらったり、創作している人に憧れを持ってもらいたい。そこで「つくドル」(クリエイター+アイドル)のコンセプトを思いつきました。アイドルとしての活動を軸にしつつ、そこから先でクリエイターを目指していくという道筋が提示できれば、またちょっと違う切り口で魅力が示せるだろうと。だいたい、このふたつの土台を元に、最終的には僕がアイドルをやりたいという(笑)情熱というか想いがあって、それが組み合わさって誕生しました。
――アイドルをやってみたいという想いは昔からあったんですか?
永田:僕がアイドルにドハマリしたきっかけは、モーニング娘。を中心とするハロー!プロジェクトなんですが、その盛り上がりが個人的に若干トーンダウンしてしまった時期があって、ちょうどその頃にpixivが立ち上がったのもあって、しばらくは仕事に専念していた。それがつい最近、HKT48にハマってしまい、またアイドルシーン全体への興味が戻ってきたんですが、やっぱりアイドルはコンテンツとして最高に面白いな、としみじみ実感した。なので、僕の中でアイドルと言えば、ハロプロと48グループ、このふたつが軸なんです。これまでも、インディーズ規模のアイドルをプロデュースしないかというお話をいただいたことはありましたが、そこに目線を置いちゃうと、自己満足で終わってしまうのが嫌でやりませんでした。やるからには、自分が影響を受けてきたアイドルに迫るものを目指したいと。でもそれって、目標としては非現実的な夢物語ですよね。宝くじ当たったらいいな、みたいな妄想レベル。それが、いろいろな出会いや偶然もあったりする中で、本格的なアイドルをプロデュースできるかも、という土壌がちょっとずつできてきた。もふくちゃんを始め強力なメンバーも集まってきて、これなら夢物語を現実性のあるところまで持ってこれるんじゃないかというのが、ようやく見えてきて。だったら、本気でやってみようじゃないかと。
もふく「永田さんとの作業の中で一番重要な仕事は『夢マップ』を作ること」
――その夢を実現させるために、戦法やコンセプトもいろいろ考えているとは思うんですが……。
永田:そもそも「つくドル」という、クリエイター+アイドルっていうコンセプトが、僕らが他のアイドルと戦える可能性が唯一ある部分だと思ってます。それに、pixivはアイドルに関係ないサイトですが、何かきっかけがあれば応援してもらえる可能性がある母体ですし、そこに1300万人の会員がいる。メンバーである彼女たちには、もちろんアイドルとして大成してもらいたいですけど、プラス、クリエイターとしての活動も、伸ばしていかなきゃいけなくて。そこのバランスというか、どういう順番でどういう方向性に持っていくのかっていうところが、一番重要だと思っています。
――そして「サウンドプロデューサー」という肩書きで、もふくちゃんもこのプロジェクトに参加しています。
永田:サウンド面に関しては、かなりの部分もふくちゃんにお願いしています。僕は「こういう曲をやりたい!」みたいなことしか言えないので、そこから先を技術的に落とし込んでもらうというところで、クリエイターの選定からレコーディングでのディレクションまでやってもらっています。その他にも、アイドル運営の実体験から、いろいろ具体的な意見やアドバイスをもらっています。
――例えばどういうアドバイスがありました?
もふく:年間スケジュールを作るとか(笑)?だいたい1年間ぐらいのロードマップみたいなものを作って。内容に関しては永田さんと話し合いながらですけど、何月にこういうことをして、これぐらいのファンを増やして、1年後にはこれぐらいの箱で、っていう、まあ「夢マップ」みたいな……。最初にこのプロジェクトを本格的にお手伝いしようってなった時に、最初に作ろうと思ったのがそれです。それが見えていると、逆算して「あ、この時期にこの人数のお客さんを入れなきゃいけないんだったら、この間に何枚はCDを出さないといけないね」とか「こういう曲が欲しいね」とか、逆算で見えてくるので、それは永田さんとの作業の中で一番重要な仕事かなと思っている部分です。
――サウンドプロデュースに関しては?
もふく:永田さんが「こういう曲をやりたい」とラフなアイデアをくださるので、そのアイデアだったらこういう風にふくらませたらいいんじゃないか?とか、歌詞はこの人で作曲はこの人でアレンジはこの人にしようとか、楽器は今回は生楽器を入れましょうとか、あとスタジオの予約とかまでしています(笑)。マスタリング現場とかTD現場も全部見てます。