成馬零一『ワンダフルワールドエンド』映画評
大森靖子の世界観はどう映画化された? 橋本愛&蒼波純主演『ワンダフルワールドエンド』を観る
10月23日。渋谷シネクイントにて、『ワンダフルワールドエンド』がワールドプレミア先行上映された。
本作は、大森靖子の『ミッドナイト清純異性交遊』と『君と映画』のPVを元に、彼女の世界観を映画化したもの。主演は橋本愛、蒼波純、稲葉友。監督はPVと同じく松居大悟が担当している。
17歳の詩織(橋本愛)は売れないモデル。恋人の浩平(稲葉友)と半同棲生活を送りながら、ブログを書いたり、ツイキャスで配信をして、何とかファンを増やそうとしていた。そんなある日、詩織は撮影会でゴスロリ服を着た13歳の亜弓(蒼波純)と出会う……。
先行配信されたPVでは、詩織と浩平のデートに亜弓が動向する姿や、家の中で詩織が浩平をボコボコにする場面が大森靖子の楽曲にのせて描かれたが、完成した映画版はリアルな手触りを残しながらもファンタジックな、ガール・ミーツ・ガールの物語に仕上がっている。
上映終了後は大森靖子、松居大悟、稲葉友が登場。撮影の裏話を披露した。
松居によると、本作はPVの時点で映画化が決まっており、映画を10だとするとPVは4〜6について描いたものらしい。
本作は大森の語ったアイデアや実体験を、松居が作品に落とし込むという形で制作されている。そのため「映画を撮ったという実感は薄く、人のBLOGを代筆したような感じだった」と松居が語っていたのが印象深かった。
松居はクリープハイプの歌詞の世界を原案とした映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の監督も務めている。この作品も短編群像劇のようなPVをつなぎ合わせることでクリープハイプの世界観を表現した音楽映画となっていた。
いわゆる、漫画やアニメでは定番となっているメディアミックス的な手法だが、本作でも、大森靖子の世界観を、物語の形を借りて描き出すことに成功している。