新作『DEVASTATION IN THE VOID』インタビュー

伝説のハードコア・パンク・バンド、SLANGが語る結成27年目のバンドヒストリーと復興支援

KO「被災地をトラック1台で廻ってもキリが無いって思って、NBC作戦を始めた」

ーーKOちゃんは東日本大震災の被災者支援として「NBC作戦」をやっていて、今でも続けているけど、あれは震災が起きた直後に現地に行って始めたの?

KO:そうですね。基本的に物資は、集める人と受け取り先が決まっているだけで、あとは各地勝手に動いていますね。俺は、あっち送ってこっち送ってって指示を出して確認するくらい。

ーー支援したくてもどうすれば良いかわからない人達って沢山いると思うんだけど、KOちゃんがそれを始めたきっかけは?

KO:震災後、一週間後くらいに被災地に行ったんですけど、もう街がグチャグチャで酷すぎて。みんな学校とか体育館とかにいて寒かったし、配ってるご飯もパンと牛乳だけみたいな感じで……。

ーー現実を感じたんだね。

KO:これ、国は何をやっているんだろう?と。デカい所は自衛隊とかちゃんと入ってるんですけど、小さい所では町内のじいさんばあさんだけが固まっていたりする。そういう所が酷くて。物資を持ってきている人も結構いたんですけど、体育館とかだと3月の寒い時にひっきりなしに出入りするから、ドアが開きっぱなしになってとにかく寒いんですよ。段ボール敷いたり畳敷いたりはしているんですけど、靴履いて上がって10分ぐらいしたら足がもう冷たくなってくる。俺たちはでかいトラックとかで来るワケには行かないから、4tの車を借りて、何とかしてあの規模にある程度の物資を配れないか考えた。それで、モコモコした暖かい靴下と、子供のおやつですね。おやつもかさばる袋菓子とかじゃなくて、ハイチューみたいな、小さいけど結構長持ちするようなもの。あれだったら何万個も入るから、そういうのを配って回っていました。

ーー最初は個人で支援を始めて、そこからNBC作戦に繋がっていった感じ?

KO:そうですね。最初はみんなに物資を送ってくれって頼んで、それを被災地に運んでいた。で、ネットで情報を拡散してもらうのに、何か名称がないといけないと思って、適当につけたんです。

ーー“なまら物資直送作戦”ね。

KO:2回目に行った時は、俺が何度トラック1台で廻ってもキリが無いって思ったんですね。それに、北海道からトラックで海渡って来ると、トラックのレンタル料金なんかで十数万円くらいかかるんですよ。だったらその分、窓口を作ってどんどん送ってしまえばいいと思いました。福島の奥の方は宅急便通ってなかったですけど、南三陸とかは1ヶ月後ぐらいには宅急便が行くようになっていましたし。

ーーどういったルートで配って行ったの?

KO:1回目は新潟からしか入れなかったんですよ。だから新潟入って、福島通って、沿岸部をずーっと上がって行く感じ。2回目はたしか秋田から入った。太平洋側は全部ダメだったんで、秋田から入って国道45号線をずーっと。

ーーそのルート上の小さい所を重点的に配って行く感じで?

KO:避難所ばっかりですね、あの時は。大きい所も行ったけど、宮城のすごくデカイ体育館みたいな所とかは二千人とか入ってるんで、全然配りきれないですよね。そういう所は1回目行った時に知り合った人の要望の物と、靴下とかだけ降ろして。あとは子供集めてお菓子を配って。当時はお店なんか全然無くて、お菓子とか全然無かったですね。配給みたいなのでも、お菓子なんか全然出ないって言ってたし。

ーー「NBC作戦」は、メンバーも一緒にやっているの?

KO:1~2回目はKOHEYと2人だけで行った感じですね。

KO-HEY:3回目はKOさんだけ残って……。

KO:ああ、それでパワーストック(SLANG主催の復興支援フェス)か。

ーーパワーストックって、それが始まりなんだ。あの流れから復興支援ライブとかが始まった感じだよね?

KO:そうなんです。現地の人に「いつかライブやれたらいいよね」って話してたら、すぐにでもやって欲しいって言われて。BRAHMANや横山健、SIONさんとか氣志團も賛同して出てくれました。

KIYO「バンドを辞めようとか思った事は全然無いよ、本当に」

ーー27年に渡ってバンドを続けてきた理由って何かな?

KO:辞める理由がわからない。でも、辞めなきゃいけないのかな?って真剣に考えた事はあるんですよ。俺らの10代や20才ぐらいの頃とは時代も違うじゃないですか。20才過ぎてロックとかやっているのはバカしかいない、みたいな。俺は子供が21才で生まれているから、その頃も「俺バンド辞めなきゃいけないのかなぁ?」って、そういう問いかけは何度かありました。その都度、真剣には考えるんですけど、考えても考えても辞める理由がわからないんですよね。だって、別に辞めたからといって何も変わらないですよ。普通に仕事しながらやればいいし、たまにしか出来なくてもやればいいし。完全に辞める理由って何なんだろうって思う。

ーーKIYOさんも?

KIYO:俺はギターが物理的に弾けなくなるまでやるつもり(笑)。辞めようとか思った事は全然無いよ、本当に。

ーーそういう意見を聞いて、KO-HEY達はどう思う? 辞めて真面目になろうとか思った事ある?

KO-HEY:いや、まだ無いです(笑)。KIYOさんもお子さん2人いて、バンドも2つバッチリやっていて、仕事もちゃんとしてるから、辞めるとか理由がわかんないですよね。

KO:日本の人って辞めないですよね。アメリカとかすぐ解散するじゃないですか。ヴァルカーズとかG.B.H.とか、ああいうレジェンド達は例外だけど。きっと世界で日本だけですよね、いくつになってもバンドを続けるのって。

ーー今後については何か展望とか、音楽に求める可能性とかはある?

KO:あんまり欲を出さないように気をつけています。前のメンバーチェンジから今のメンバーになる前、1年くらい空いてた時にすごく色々考えたんですよね。メンバー見つからないし、でもお店もあるし……一人で東京で部屋を借りて、札幌と行ったり来たりしながら色々考えたんです。それで「曲を作って演奏出来るって何て幸せな事なんだろう」ってことに気付いた。新曲が出来た、わぁ嬉しい! 歌詞が出来た、わぁ嬉しい!っていうシンプルな喜び。そしてそれを演奏出来る事が最高のことで、もうこれ以上の事を求めちゃいけないんだって思った。そういう風に気付いてからは、あんまり可能性とかは考えてないですね。“何かをやるために何かをやる”みたいなやり方は一切辞めようと。そういう風にやっていった方が、どんどん面白くなるから。

(取材・文=ISHIYA)

PIZZA OF DEATH SLANG特設サイト
東日本大震災被災者支援プロジェクト「NBC作戦」

■リリース情報
『DEVASTATION IN THE VOID』
発売:8月6日
価格:2,365(税込)
発売元:PIZZA OF DEATH RECORDS

<収録曲>
1. Scum
2. Apocalypse Now
3. 亡骸の丘
4. Yoshimura Hideki
5. Dystopia
6. Death Of Democracy
7. Reason of Brutality
8. Vicious “Nuclear Fuel” Cycle
9. The End Of The Nuclear Era
10. Cursed Dawn
11. 162 Graves

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