書籍『隣の嵐くん』出版記念インタビュー(後編)

嵐のスタイルは若手ジャニーズにどう受け継がれたか 明治大学名物講師が分析

 嵐の魅力を現代思想の視点から読み解いた書籍『隣の嵐くん~カリスマなき時代の偶像』について、執筆者の関修氏にその読みどころを聞くインタビュー後編。前編【「嵐には理想的な人間関係がある」明治大学の名物講師が嵐の魅力を語る】では、同氏が嵐に魅了されたきっかけから、SMAPと嵐の違い、そしてフランスの精神分析家、ジャック・ラカンが提示した「四つのディスクールと資本のディスクール」から見えてくるメンバーの関係性について語った。後編では、嵐以降の若手グループの分析から、アラシック特有のルール、そしてAKB48との組織論的な違いについてまで語ってくれた。

嵐のスタイルが後進グループに与えた影響

――本書では、SMAPが打ち出した5人組のスタイルを独自に発展・洗練させたのが、嵐というグループだとしています。嵐以降の若手ジャニーズでは、その手法はいかに受け継がれているでしょうか。

関:SMAPが先鞭をつけ、嵐が洗練させたような形が、彼ら以降にあるかどうかは正直まだわかりません。Kis-My-Ft2は、光GENJIから通じる伝統的なスタイルを持っています。グループを二分化して、その対比で楽しませるパターンですね。ただ、良いところは嵐と似ています。7人で誰が1番ブサイクかを決めるバラエティー番組『キスマイ BUSAIKU!?』は、嵐の「マネキンファイブ」と同じで、全員のメンバーが自分なりに考え、与えられたシチュエーションにどう対応するか、ということを観せるわけです。ただ、その中でどうしても二手に分かれてしまうような流れが今のところあります。彼らが今後、グループとしてどう変わっていくのかは気になるところですね。また、Sexy Zoneは5人組で嵐と同じ人数ですが、まだ若いのでどうなるかわかりません。嵐も最初からきれいに現在のスタイルになっていたわけではないので、Sexy Zoneもグループが成熟するにつれ、彼らなりの新しい形を見いだすのかもしれませんね。

――『キスマイ BUSAIKU!?』はたしかに、1人1人のキャラクターが印象に残りますね。

関:メンバー全員が均等に扱われていることはすごく重要なポイントです。そこは嵐からよく学んでいます。それまでのジャニーズにはどうしても格差がありました。たとえば光GENJIでは諸星くんが、KAT-TUNでは亀梨くんが際立って目立つ存在です。しかし、他の人達がおとなしく見えてしまうと、1人1人に才能があっても嵐のようにグループとして浸透することがありません。嵐は1人1人の活躍もさることながら、5人で揃うことを絶対に疎かにしません。2つ持っている冠番組やコンサートを大切にしています。嵐は5人揃った時が一番輝いているということを、メンバーはもちろん、ファンやスタッフも良くわかっているのでしょう。

――ファンからしても全員揃っているところを見たいものですからね。

関:そうです。嵐はグループでいるメリットを最大限に活かしていて、バラエティ的な『嵐にしやがれ』と、体を使うゲーム系の『VS嵐』で、彼らのいろいろな面を見せてくれます。それは視聴者として楽しいことです。しかも、一人一人の活動も万遍なく露出度が高いので、5人になったときに1人だけ認知度が低い、というようなことがありません。ドラマにしても、5人のうちの誰かが途切れなく出演しています。それぞれの活動が別の誰かの活動や、嵐全体の活動につながっているんですよね。だからこそ、5人は本当に仲が良いし、厚い信頼関係を築けているんだと思います。

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