銀杏BOYZの新作はポップにしてエクストリーム! 2014年最初の大問題作を分析
「俺、18から曲を書き始めて、この曲が一番コード数の多い曲だったのね。コードが20何個あるっていう、自分にとって完全に初めての感覚で、こんなに曲作りって楽しいんだと思って。この『ぽあだむ』のポップさをより引き立たせるために、ノイズが必要だと思ったの」
「『ぽあだむ』を作ってる時はね、フリッパーズ・ギターのことは考えた。俺が高校の時に聴いてた渋谷系の空気感っていうかさ、あれをそのまま俺が出すのは無理だからさ。今の空気感をそこに入れて、なんかそういうポップでキラキラしたものをやりたかったの。あの曲は、とにかく曲作ってて楽しかったな。最初はアコギで作ってたんだけど、楽しくてさ。これからは、こういう曲をいっぱい作りたいなって思ったよ」
先日、自分が峯田和伸にインタビューした時のそんな発言(いずれも「MUSICA」2014年1月号から引用)からもわかるように、今回のニューアルバムは9年間待ち続けていたファンを拒絶するような作品ではないし、たった1人にはなってしまったけれど、今も峯田和伸は銀杏BOYZの未来だけを見ている(同じインタビューの中では「ソロはやりたくない。銀杏BOYZを続けていく」とも明言している)。あまりにもエクストリームな作品であるが故に、リリースされてからも、きっとまた賛否両論が巻き起こるであろう『光のなかに立っていてね』と『BEACH』の両作品。しかし、2014年の日本の音楽シーン、最初にして最大の問題作であることだけは間違いない。手元に音が届いてから一ヶ月以上経つが、それ以来、自分は一日も『光のなかに立っていてね』を聴かない日はない。
■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter