ホロライブ・ReGLOSS『X-ReCHORD』開催を機に振り返る、カバー社とVR/ARの歴史

培ったVR/AR技術のなかで「映す技術」に焦点をあてる
このように、ホロライブおよびカバーは、VTuber事業を通じてVRおよびARを活かしたさまざまなコンテンツの提供をつづけてきた。ここまで紹介した事例は、VRや配信アプリにおけるAR機能など、カバー社の事業としてのチャレンジだったが、こういった技術が一同に結集する場といえるのが、音楽ライブでのVR技術・AR技術の利用になるのではないだろうか。
2025年7月22日から24日かけて、パシフィコ横浜で開催された『CEDEC 2025』において、カバーのクリエイティブ制作部で活動するスタッフやクリエイティブチーム・TxDで活動するメンバーが集まり、ホロライブのライブ公演がどのように制作されているかを講演した。
別メディアではあるが、筆者はこの講演を取材・イベントレポートとして執筆しているので、今回のコラムにあわせた部分について筆をとりたい(参考:ホロライブのライブ公演はどうなってるの?実在感を大切にした照明演出システムや現場から見た視点を語る【CEDEC2025】)。
【⏩COVER News⏩】
7月22日〜24日に開催される「CEDEC 2025」に、カバーより2名のエンジニアが登壇いたします。リアルとバーチャルが融合するホロライブプロダクションのライブ演出を支える、最先端の技術や開発の裏側をご紹介します!… pic.twitter.com/jxFKRpxYyH
— カバー株式会社 (@cover_corp) July 10, 2025
ホロライブなどのVTuberのライブ公演を、配信チケットを購入するなどして配信サイトでみたことがあるファンの方がいれば思い出してみてほしい。画面を通じてさまざまなカメラアングルからライブの模様を視聴者に届けているが、実はこれらは3つのライブ視点を混ぜた映像なのだ。
現地で演奏ならびにパフォーマンスしているタレント本人をモーションキャプチャーで捉え、バーチャルステージ上に描画。それをバーチャルカメラで撮影するフル3D CGのライブ映像がひとつ。会場撮影カメラで現地の模様をとらえた映像がひとつ。そして、実写背景とバーチャルステージをARカメラで合成した実写+CG映像がひとつ。
これらをスイッチャーでそれぞれ切り替えることで、多彩なカメラアングルとオフラインならではの観客・タレントが同じ空間に存在するライブ感を演出している。
配信サイトには、会場全体を映す実写カメラのアングルも加わり、バーチャルカメラ・ARカメラ・会場撮影カメラのすべてのアングルをうまく混ぜ込みつつ、多彩なカメラアングルを交えてファンへ届けているということになる。
ここではかなり簡単にまとめたが、バーチャルカメラで捉えたCG映像と、ARカメラで捉えた実写+CGの映像はもちろん異なる生成フローを経ており、出力される映像そのものもかなり違ってくる。
これらさまざまな映像が、例えば音声と0.1秒でもラグがあれば、映像と音声の差異によって違和感につながってしまうため、これらのフローも、本人のパフォーマンスも、一瞬も止めることなく続けなくてはいけない。
これに加えて、バーチャルカメラ・ARカメラ・会場撮影カメラ、それぞれの色味や影の見え方も重要だ。同じタレント・ステージ・衣装だとしても、それぞれの視点・映像で色味が異なれば、それすらも違和感の元凶になる。
同講演では、Unityを使ったライティングシステムを紹介し、さまざまなタイプのライトを使ってタレントを照らし、光があたったあとの影落ちの表現、角度・濃さなどを含めて、見ている側の違和感をゼロに近づけることに大きくこだわっていると解説されていた。
1つのライブで3つの映像・技術が同時並走し、ミスもラグも許されない。なんともヘビーで緊張感のある“精微な仕事”であるかが想像できるだろう。
この講演のなかでAR技術に特化したライブとしてテーマにあがっていたのが、2023年12月24日に行われたhololive Xmas AR LIVE 『Sweet Happy Holiday』だ。
同ライブは、新宿住友ビルの三角広場で展示されているクリスマスツリーの前で収録されたバンドの演奏と、タレントのパフォーマンスとをミックス。現実の映像と3Dビジュアルのタレントをうまく合成するために、さまざまな工夫とテクニックが駆使された公演となっている。それから3年が経過し、ホロライブのAR技術をライブ公演で表現される場が改めて登場した。それが、記事冒頭で記した今年11月29日に開催されるReGLOSS AR LIVE『X-ReCHORD』なのだ。
1年に数十回以上の音楽ライブを開催し、大きなトラブルを起こすことなく公演をつづけてきたホロライブの制作スタッフ陣が、3年ぶりとなるARライブにどのようなアイディアやテクニックを詰め込むのだろうか。
今回は、筆者が取材した経験のある「映す技術」についてフォーカスしたが、そもそものタレント本人を表現する3Dビジュアル(ボディ)を「描く技術」、VRカメラやモーションキャプチャーによる「捉える技術」など、さまざまな技術が我々の目では気づかないレベルで向上していると考えられる。
カバーはVTuberプロダクションとしてホロライブのタレント事業に力を入れているが、同時にVRやARといった技術、知見を結集させた表現の拡張にも挑戦し続けている。。
もし『X-ReCHORD』を視聴する方がいれば、ReGLOSSのパフォーマンスだけでなく、彼女らを映しだし、演出する技術にも注目してみてほしい。























