ホロライブ・ときのそらの“これまでとこれから” 活動10年を前に振り返る、王道アイドルとしての矜持と歩み
「ふわふわ」なだけではない、ときのそらの人物像
ときのそらの人物像を理解するうえでは、「ふわふわでほがらかなお姉さん」という人物像に、自身の考えや気持ちをはっきりと口にしていくタイプでもあるという、補助線をひとつ加えてみるといい。
学生時代を振り返った際、上級生と同級生との関係性・立ち位置も関係してかなりつよい言葉選びで怒り、下級生を叱ったことがあると話していた。
演劇部の一員として舞台の裏方仕事をやっていたなかで、いつも穏やかでふわふわとした自分から一転したエピソードとして話していたが、後日同窓会にて後輩たちに覚えているか聞いたところ「覚えてないです」「怒られた記憶もなければ、誰よりも優しくて、どの先輩よりも穏やかに、何もかも受け入れてくれていた」と話されるオチも聞かせてくれたのだった。
部活の上級生として、一時的な感情にまかせるのではなく、ちゃんと面と向かって意見としてぶつける。ふわふわとした雰囲気を持つときのそらのなかにも、自我を強く持って「これだ!」という意見をぶつけるエナジーが備わっていることがわかる。
実際にときのそらの配信を見ていると、送られたコメントを真面目に受け取って、しっかりと考えた末に答えることが多い。字数の少ないコメントであっても、返信の意図や文脈を想像し、自分の気持ちや考えを、リスナーの温度感に合わせて伝えようと試みている。
またホロライブメンバー同士の配信では、稀にセンシティブな話題が飛び交う場面もみられるが、ときのそらは決してその輪に加わろうとしない。無礼講だと冠した配信の中で後輩から話題を振られたとしても、明確に「声に出したくない」というほどにだ。
ときのそらのこうした振る舞いから伝わってくるのは、リスナーやファンが不愉快な気持ちにならないこと、自身の意に合わない部分があればしっかりと意見を表明すること、先にも触れた、自分の意志や“ときのそららしさ”を大切にするポリシーではないだろうか。
文字にしてみると簡単だが、言動や振る舞いをコントロールするのも、実際に貫徹するのは難しい。先に上げたホラー配信での自己コントロール力の高さにもつながってくるポイントだ。人からみればアイドルやエンターテイナーとしての、本懐のようなものだと感じられるだろう。
ときのそらの配信や動画を振り返ったとき、再生数が多いのはもちろん歌や音楽が絡んだ配信である。記念3Dコンサートや歌配信などが彼女の再生数トップに軒並み入ってくる。祝いの場ということで視聴者数が増えるのはもちろんだが、これは彼女が最初期からつづける歌手としての活動に多くのファンが魅了されている証左ではないだろうか。
実際、彼女はシンガー/アーティストとしても精力的に活動をおこなってきた。2019年にビクターエンタテインメントと契約を結ぶと、同年3月に初アルバム『Dreaming!』をリリース。以降リリースされたアルバムは5枚、シングルは30曲以上、EPは9周年記念EP『CHECK!』を含めると4枚にもなる。旺盛な楽曲リリースペースはホロライブでもハイペースであり、いちシンガー/アーティストの活動として見ても立派なキャリアだといえる。
ことし11月には9周年記念イベント「9th Anniversary Party『Everyday of Light』」を、横浜・ぴあアリーナMMで開催する予定ではあるが、彼女の目標は「横浜アリーナでライブをする」こと。同じ神奈川県のほぼ同レベルのアリーナ会場でライブができるということは、夢の達成まで王手をかけたも同然のようにみえる。
彼女のリリースペースを考えると、10周年記念ライブではスペシャルな内容のアルバムを携えて横浜アリーナ公演を敢行、ホロライブのメンバーだけでなく彼女とVTuberシーンの最初期を駆け抜けたレジェンドたちもゲストに現れ、自身の夢を華々しく達成する……そんな夢舞台を想像してしまいそうになる。もしそうなれば、ホロライブおよびときのそらのレガシーとしてこれ以上にないワンシーンになるだろう。
さて、そんな想像はいったん横に置いておいて、2026年のときのそらに再び目を向けてみよう。にじみ出ている生来の穏やかさや優しげな空気、新たなビジュアルから発せられる新鮮なお姉さん味、そして彼女が捧げるエンターテイナーとしての矜持(プライド)と同僚たちとの関係性の変化。これらがうまく混じり合うことで、ときのそらというバーチャルシンガー/活動者の輪郭が、また新たに掴みとりやすくなる。
彼女の今後1年は、これまでのときのそらの総括と、新たなときのそらへの助走、それらを兼ねた1年になっていくのかもしれない。