ホロライブ・ときのそらの“これまでとこれから” 活動10年を前に振り返る、王道アイドルとしての矜持と歩み
9年間で残してきた、2000本もの動画・アーカイブに映るときのそらの姿
装いもイメージも新たになったときのそらだが、そんな彼女が自身のYouTubeチャンネルを通じ約9年間で投稿してきた動画数はいくつか、ご存知だろうか。
その数、約2000本。
生配信およびそのアーカイブとなっているライブ配信、歌ってみたやミュージックビデオなどの動画、ダンスや踊ってみたなどのShorts動画など、現在公開されている動画数を合わせて、約2000本ほどの動画・アーカイブが公開されている。
活動初期には3Dで全身を見せた姿で雑談を行なっており、最初期のファンにとっては懐かしい姿だろう。その後、Live2Dのビジュアルを得てからは、他のVTuberらとおなじくゲーム配信および歌配信をスタートしている。
この2年ほどは『Minecraft』や「マリオ」シリーズ、「ゼルダの伝説」シリーズ、「サガ」シリーズなど、いわゆる名作といえる作品を中心に配信でプレイしているが、「ときのそらのゲーム実況」といえば、ホラーゲームを想像するファンも多いだろう。公式プロフィールにも「歌とホラーゲームが大好き」とあるように、彼女はさまざまなホラーゲームを配信でプレイしてきた。
ふだんの配信では、ふわふわ&ぽわぽわなムードを醸し出している姿がよく見られる。ハイトーンな声質の持ち主なため元気良く明るい雰囲気を感じさせるが、力の抜けたほがらかな口調でリスナーに話しかけているのが、普段のときのそらである。
だがホラーゲームでのときのそらは、ゲーム内のシリアスなムードにのめり込むように、かなり落ち着いたプレイを見せる。驚かせポイントとなるジャンプスケア(註:ホラー映画やホラーゲームなどで、観客やプレイヤーを突然の大きな音や映像の変化)に出くわしても、悲鳴などをほとんど発することがないその姿に、かなりの強心臓ではないかとファンは認知していたはずだ。
だが、ときのそら本人に言わせればその認識は実際とやや異なるようで、博衣こよりとのコラボ配信で「(そら先輩は)普段のホラー配信でも他のひとが驚くところで驚かなかったりする」と話を振られた際には、このように返したのだ。
「じつはあたし、ホラーゲームは得意じゃないです」
「自分の中で『叫ぶのは私らしくない』というプライドがあって、普通のホラーゲームをやっているときはびっくりポイントが来るのがわかるから、叫ばないように歯を食いしばって叫ぶのを抑えている」
「だから、叫ばないのではなく、叫ばないようにしている、が正しいの」
ゲーム配信ひとつとっても“自分らしさ”、“ときのそららしさ”を求め、表現しようとする。そんな思考と実践を求めているというのは、配信画面を見ているリスナーの視点では伝わらないかもしれない。だがそういった部分にも目配せし、意識しているのだ。
先にも書いたように名作シリーズをこの2年でよりもプレイするようになっており、ホラーゲームをプレイする頻度はグッと低くなっている。ホラーゲームをプレイするとき、彼女の思うような”ときのそら”らしさを感じさせてくれるように、ゲーム配信一つ一つの所作や他配信者との違いのなかに、ときのそら”らしさ”が表現されているのかもしれない。
ときのそらと「ぬんぬん」の歴史 相づちの空耳から生まれた代名詞
そんなときのそらの口癖といえば、「うんうん」と相づちを打つ際の空耳から生まれた「ぬんぬん」というワードだ。
活動の初期からリスナーに広まった「ぬんぬん」は、いまではリスナーが配信前に待機している際の合言葉になっているだけではなく、ときのそらがよく使っていた顔文字「(๑╹ᆺ╹) 」も「ぬんぬん」と呼ばれるようになるなど、自他共に認める彼女の代名詞となった。
ときのそら曰く、「わたし的には、“ぬんぬん”はわたしが作りだした概念だから、ぬっさんとかぬんちゃんとか呼ばれても……呼び方変わったら普通は反応できないとおもうんだけど、反応できちゃうんだよね(笑)」とのことで、実際「ぬっさん!」「ぬん!」と呼ばれると、「わたしのことか?」という温度感で「はぁい」と返事をすることが多く見られるようになった。
最初にぬんぬんが生まれたのはいつなの?誰が描き始めたの(๑╹ᆺ╹)?
— ときのそら🐻💿 (@tokino_sora) April 4, 2026
ときのそら自身、いつ頃から「ぬんぬん」が定着していったかは定かではないようだが、顔文字は2017年12月時点で使われており、その後ニコニコ動画、YouTubeなどでの配信で「ぬんぬん」という言い方をリスナーやファンに真似されるようになると、両者が合体。現在の合言葉であり、顔文字の通称でもある「ぬんぬん」へとつながっていったようだ。
しゃちょーやさしい!でもしゃちょー、自分だけ暖かそうなジャケット着てた情報をもらったのでしゅーん (๑╹ᆺ╹) #質問箱 #peing_tokino_sora https://t.co/KQVZWJE9tt pic.twitter.com/fQVsXcbBvv
— ときのそら🐻💿 (@tokino_sora) December 22, 2017
ぬんぬん
— おるだん (@ordan) August 6, 2018
そんな「ぬんぬん」は、いまでは顔文字がファンアートとして描かれ、時には3D化して画面に登場、そしてグッズ化もされるなどファンに愛されている。本人から醸し出されるイメージや雰囲気にピッタリな口癖が絵文字と紐づき、手に取れるものとして楽しめるように有形化したユニークな例だ。
こうして振り返ってみると、「人となりのイメージや言葉」が手で掴めるというのは、なんと不思議な出来事だろうと感心してしまう。ときのそらの人柄がかもしだすムード、なによりホロライブとファンのノリの良さや勢いを象徴するエピソードのひとつだ。
そんなわたしの
5周年記念グッズに
ぬんぬんぬいぐるみ(๑╹ᆺ╹)
あるよ✩°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝https://t.co/KFaIIqTH16 pic.twitter.com/FsU4N3kQnK— ときのそら🐻💿 (@tokino_sora) September 13, 2022
2018年以降、活動を重ねるごとに少しずつときのそらの後輩たちは増えていった。もちろん後輩からはリスペクトを贈られているわけだが、特に初期のホロライブについては、アキ・ローゼンタールとの会話で、以下のように振り返り、なかなか思うように後輩たちとの距離が詰められなかったことを告白している。
「いまよりも忙しかったから、ごめん!って(断ってしまう)ことは多かっただろうし、逆に避けられていないかと不安だった」
「後輩ができたのは嬉しかったけど、“そら先輩”って呼ばれるのはぶっちゃけ好きではなかった。壁を感じていた。なんだかんだいって先輩・後輩の関係はふつうにあるから、それは難しいなと思ってた。親しみを持ってもらってたならよかった」
2024年段階ですら、宝鐘マリンや雪花ラミィなど自身と3年近く遅れてデビューした一部の面々とはコラボ配信をしたことがないと話していたり、後輩側に関しても「そら先輩とコラボするなんて、恐れ多い」とハッキリと口にしているメンバーがいたほどだ。ときのそらが、ホロライブ内でいかに「始祖」として崇められていたかがうかがえる。
そんな絶妙な距離感から脱するきっかけになったのもまた、先述した「ぬんぬん」である。
2024年以降、さまざまな企画を通して後輩とコラボする機会に恵まれると、ときのそら本人、そして後輩たちも距離感を掴めたようで、兎田ぺこらや大空スバルらが「ぬっさん」「ぬん」と愛称で呼ぶようになった。また文化や芸能といったアート分野への興味があることで儒烏風亭らでんとは美術館や観劇、旅行にも出かける仲だという。“ホロライブの祖”であるときのそらは、意外なほどに親しみやすく、フレンドリーな1人の女性なのだ。
実際問題、いま現在でも「始祖」へのリスペクトが絶えることはないだろうし、「いやいや、あたしなんかがそらさんと話しても……」と謙遜し、遠慮するホロライブのメンバーの姿を想像してしまう。
だからこそ、「ときのそらが後輩たちとどんな関係をこれから築いていくのか」は、ホロライブのファンにとっての“コアな見どころ”になるかもしれない。