意外にも歴史が長い? バーチャルな存在の“始祖”から続く「実写×VTuber」によるVlog文化を紐解く
バーチャルな存在によるVlogの発祥地点、Ami Yamato
日本で「バーチャルYouTuber」として名乗りをあげた始祖はキズナアイだが、その何年も前にバーチャルアバターでVlogを投稿していた存在がいる。それがAmi Yamatoだ。
日本人で、東京とロンドンを行き来している彼女。初投稿は2011年06月14日。実に15年前だ。
一番最初の動画は3Dのバーチャルな空間と思わしき場所で撮影されている。概要欄では「ロンドンに帰ってきたのを機にビデオブログはじめてみました。」と述べており、色々な考え事を言葉にしてまとめるために、自撮りVlog形式で投稿するスタンスをとっているようだ。
明確に実写映像と融合して撮影されているのは「Breaking Stereotype」という4本目の動画からだ。ステレオタイプな日本人像を重ねて見られることについての悩みを打ち明ける動画で、緑豊かな実写映像の中で自撮りをしている。Ami Yamatoが「現実に存在するひとりの人間である」という、動画シリーズの姿勢を明確にした一本だった。
その後も数多くの、実写の中に溶け込むようなVlogを出し続けているAmi Yamato。リアル映像の人間とも自然に接しており、違和感を全く感じさせない映像を見せてくれている。
キズナアイと明確に異なる点でいえば、Ami Yamatoの動画はアバターの姿で撮影されてはいるものの、彼女自身はあくまでも現実社会に生きている「人間」としての表現を貫いていること。バーチャル世界に住んでいる「VTuber・バーチャルYouTuber」ではない。彼女の軸足は現実世界側にあるのだ。
かつては日本の科学未来館で、ロボットにバーチャルYouTuberのキズナアイと間違えられて、苦い顔をしていたこともある。
Total respect to #KizunaAI for working this look. 🎀
これが似合うからキズナアイを尊敬してるのよね。 pic.twitter.com/yO2nIvvT2Y— 𝗔𝗺𝗶 𝗬𝗮𝗺𝗮𝘁𝗼 (@AmiYamato) July 25, 2017
なお、Ami Yamato自身はキズナアイのことは認知しており、X(旧Twitter)では「尊敬してる」という発言もしている。(なおこのツイートに対して、キズナアイもリプライを送っている)。
なお、Ami Yamatoは現在も活動を続けている。2026年6月26日には、夏の日本の暑さについて冗談混じりで紹介する自撮りVlogをアップしている。
ARを用いて現実世界に溶け込んだ電脳少女シロ
「2次元で応援している女の子が現実に来たら、皆さん嬉しいですよね? シロ、今日はそんな現実の壁を突破したいと思います」
そう言ってARを用いて現実世界の映像に混ざり込んだのが電脳少女シロ。2017年6月28日にデビューした彼女が、2017年11月11日に投稿したのが「ARで現実のお兄ちゃんに恋愛相談してみた: Augmented reality【082】」という映像だった。
あくまでも自身は電脳世界にいる「2次元の女の子」だが、バーチャル世界からAR技術を用いて現実の壁を越えて出てきた、という建て付けになっているのが興味深い。内容はお兄ちゃんと妹(シロ)による「カフェへのバーチャルお出かけ」というもの。Vlogではないが、現実世界に干渉しようとして大きな一歩を踏み出した動画だ。
その後、電脳少女シロは現実の人間への接触をどんどん行うようになっていく。2018年9月12日には、俳優の新田真剣佑と浜辺美波に直接インタビューする様子が撮影されている。こちらでの彼女は、現実世界に既に存在している、という様相だ。
テレビ番組「ガリベンガー」シリーズなどで、実写の現実世界に溶け込んでレギュラー出演してきた電脳少女シロ。電脳世界に住んでいるVTuberという地盤を持ちつつ、現実世界との壁を破り、多くの実写の人間と並んで立ち続けるパイオニア的存在になった。
実写世界でのデート動画を撮影していた富士葵
2017年12月8日にデビューした富士葵も、かなり早い段階で実写世界に飛び出したVTuberだ。
最初に実写世界を撮影したのは『君の名は。』の聖地巡礼動画。バーチャルデートという名目で2017年12月15日にアップされている。Ami Yamatoのような明確なVlogという形式をとっているわけではないが、バーチャルとリアルの境界線を取り除いて実写映像の中に飛び込んだ、という意味では日本での先駆者のひとりといっても過言ではないだろう。
このバーチャルデート動画は後の2020年8月29日に、リメイク編がアップされている。内容はほぼ同じだが、実写融合技術が大幅にグレードアップしているのは、特に地面に映った影を観ればよくわかるはずだ。
またMVとして「夏色」のカバーを2018年7月14日にアップした際にも、江の島の実写背景の中に溶け込むような映像が用いられている。寝ている猫をなでようとするなど、現実世界に働きかけようとしている様子が見て取れる。
富士葵はその後も数多くの実写融合型の映像をアップし続けている。山にも登るし、外歩きもする。現実の人間と並んで撮影することもある。近年は特に、相方であるキクノジョーと共に実写での実験や工作を中心としたコンテンツが多く制作されている。富士葵の活動スタイルにおいて、既にバーチャルとリアルの壁は存在しないといえるだろう。