BTS、完全体で再始動——JIN「解散を話し合ったこともあった」涙のスピーチから8年、これまでの軌跡と次章への期待
3月21日、メンバーたちの入隊のために活動を休止していたBTSが、ついに完全体でカムバックする。今や韓国を代表するワールドスターだけあって、そのカムバックライブ『BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG』は、Netflixを通じて世界190カ国に生配信される。当日のチケットは事前予約制で無料配布されるが、屋外公演のため最大26万人規模の動員が見込まれており、2002年の『FIFAワールドカップ』以来となるこの地域での最大規模の集会のひとつになることから、警備には警察官約4,800人とソウル市・関連機関の職員約3,400人が配備されるという。
全員揃ってのパフォーマンスとなるのは、2022年10月15日開催の『BTS <Yet To Come>in Busan』以来、3年5カ月ぶり。『BTS <Yet To Come> in Busan』は、2030年の『万国博覧会』開催地誘致キャンペーンのために開催された無料公演で、6月に「グループでの活動休止」を発表していたため、完全体での一時見納めとなる貴重なステージとなった。公演は、90分・全19曲で、BTSのキャリア全体を1本に圧縮したようなセットリストで構成された。セットリストの最後に未来を語る「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」(アルバム『Proof』リード曲)を置き、「終わりではなく、続きがある」と明確にメッセージを残した。
そして、この公演の2日後に兵役履行が正式発表。12月の最年長JINの入隊を皮切りにメンバーたちの入隊が続いた。これを鑑みると、“兵役前最後のライブ”ではなく、“数年後の再会を前提に設計された別れの儀式”だったといえるだろう。つまり今回の『BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG』は、Busanで止めた物語の続き……4年越しの再開なのだ。
“花様年華”でブレークし『MAMA』で大賞受賞も……メンバーの中にあった「解散」の2文字
これを機に、ディスニープラスで配信されているドキュメンタリーシリーズ『BTS Monuments: Beyond The Star』の内容を元に、もう一度BTSの歴史を振り返ってみよう。
同番組は、2023年12月から2024年1月にかけて全8話構成で配信。BTSのデビュー前からの成長、それぞれのソロプロジェクト、2025年のグループ再始動に向かう様子に密着している。
なお、BTSのデビューは2013年。Big Hit Entertainment(現HYBE)創業者のパン・シヒョクは、ヒップホップグループを構想し、RMを中心にSUGA、J-HOPE、JIN、JUNG KOOK、V、JIMINの7人グループを作り、ギャングスタラップをベースにした「No More Dream」でデビューさせた。しかし2013年は、SMエンターテインメント所属のEXOが「Growl」(アルバム『XOXO (KISS&HUG)』タイトル曲)で無双していた年。大手事務所所属グループが市場を支配しており、当時は中小事務所の新人という位置付けだったBTSは苦戦を強いられた。
BTSブレイクの転機となったのは、2015年からの「青春三部作」といわれるアルバム“花様年華”シリーズだ。ヒップホップのイメージを一新させ、少年から青年へと成長する過程の苦悩や葛藤を美しいメロディに乗せて描き、青春の危うさをクローズアップした楽曲に路線を転換。時代と彼らの成長過程がマッチし、デビュー3年目にして「I NEED U」で初の音楽番組1位を獲得した。
2016年にはアルバム『WINGS』のタイトル曲「Blood Sweat & Tears」が大ヒット。ライブ会場は急速に拡大し、アジア最大級の音楽授賞式『Mnet Asian Music Awards(MAMA)』で念願の大賞も受賞。韓国音楽界の頂点に立った。
2017年以降、BTSは本格的に世界進出を果たす。『Billboard Music Awards』でトップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞し、『American Music Awards』では韓国グループとして初のパフォーマンスを披露した。トリプルA面シングルとして発売された「DNA」や「MIC Drop」が海外チャートで存在感を示し、「世界のBTS」へと駆け上がった。
2018年は、グローバルアーティストとしての地位を決定づける年となった。アルバム『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』は、韓国アーティストとして初めて「Billboard 200」で1位を獲得し、“LOVE YOURSELF”シリーズの最終章となる『LOVE YOURSELF 結 'Answer'』も続けて大ヒット。ワールドツアーは北米・欧州へ拡大し、韓国発グループとして前例のない規模の観客を動員した。
だが、その裏でメンバーたちは限界に近づいていた。成功の加速に心が追いつかず、12月の『MAMA in HONG KONG』の「今年の歌手賞(大賞)」受賞スピーチで、JINが「解散を話し合ったこともあった」と涙ながらに告白。多くのファンに衝撃を与えた。
メンバーがさまざまな葛藤を抱えていた中、2019年には世界的な人気がさらに加速。ワールドスタジアムツアーでは、イギリスのウェンブリー・スタジアムやアメリカのローズボウル・スタジアムといった各国の象徴的会場を満員にして、ミニアルバム『MAP OF THE SOUL : PERSONA』のリード曲「Boy With Luv」は世界的ヒットに。9月にはニューヨークの国連本部でスピーチを行うなど、音楽活動を超えて社会的メッセージを発信する存在としても注目を集めた。
「Dynamite」「Butter」の世界的大ヒット後、グループを続けるための「Chapter 2」へ
2020年は、コロナ禍によってライブ活動が停止する一方、BTSにとって新たな飛躍の年となった。8月に発表したデジタルシングル「Dynamite」は初の全編英語詞シングルとして世界的ブームを巻き起こし、「Billboard Hot 100」で初登場1位を獲得。明るいディスコポップのサウンドはパンデミック下の世界に大きな希望を与え、BTSはグローバルポップの中心へと躍り出た。10月には『Billboard Music Awards』に出演し、仁川国際空港ターミナルよりリモートで「Dynamite」を生パフォーマンス。トップ・ソーシャル・アーティスト賞も4年連続で受賞した。
続くアルバム『BE』のタイトル曲「Life Goes On」は、「Billboard Hot 100」で3度目となる首位を獲得し、11月の『American Music Awards』では、ソウルオリンピック主競技場よりリモートで「Dynamite」のほか、「Life Goes On」を初披露。フェイバリット・デュオ/グループ・ポップ/ロック賞とフェイバリット・ソーシャル・アーティスト賞の二冠を受賞した。韓国国内では『Melon Music Awards』で3つの大賞含む6冠を獲得。『MAMA』でも4つの大賞含む8冠を達成する無双状態に。
2021年は、3月に『グラミー賞』にソウルより事前収録で出演し、「Dynamite」で初の単独ステージを披露。全編英語詞のデジタルシングル「Butter」は「Billboard Hot 100」で長期間首位を維持する記録的ヒットとなり、続く「Permission to Dance」も英語詞でリリースし、世界展開を強めた。同年末にはアメリカ・ロサンゼルスで大規模対面公演を再開し、世界中のファンに直接パフォーマンスを届けた。
2022年は、グループの大きな転換点になった。2022年6月14日、デビュー9周年企画『BTS FESTA』の食事会動画でRMはこれまでを「Chapter 1」、そしてこれからを「Chapter 2」と定義。「Chapter 1」の総括となったのが、アンソロジーアルバム『Proof』だ。会食動画では RM が涙を見せ、他メンバーもかなり感情的だったため、世界中で「BTS活動休止」と大きく報道されたが、後にそれが“終わりではなく、7人が長く続けるための設計変更だった”と理解されていった。
その後の「Chapter 2」期間でRMは作家性を深化させ、JINはイギリスのロックバンド・Coldplayとの共同制作でソロシングル「The Astronaut」を発表し、感情をまっすぐ届ける“親和力”を高めた。また、SUGAはアルバム『D-DAY』を発表し、作家、プロデューサーの「Agust D」(SUGAのソロ名義)としての評価を上げた。Vもアルバム『Layover』で独自な質感を確立している。
さらに、J-HOPEは世界的音楽フェス『Lollapalooza』にヘッドライナーとして出演。JIMINは「Like Crazy」で韓国ソロアーティストとして初めて「Billboard Hot 100」で首位に立ち、JUNG KOOKも「Seven」で「Billboard Hot 100」と「Billboard Global 200」の両チャートで初登場1位を獲得した。メンバーそれぞれが独自の音楽活動を展開し、個々の表現を広げ、ソロでも世界的飛躍を遂げたわけだ。つまり「Chapter 2」は、“BTSというグループを終えるのではなく、いったんグループ中心の走り方を止めて、7人それぞれが個として成熟する期間”だったといえるだろう。
今回の完全体復帰は、「Chapter 1」に戻るのではなく、「Chapter 2」を経た7人が再合流することに意味がある。彼らの次の章がどのような形で始まるのか、世界中の音楽ファン、そしてARMY(BTSファンの呼称)が注目している。