「ゲーム×Netflix」に新たな注目作 実写ドラマ版「アサシン クリード」成功への分岐点は?

 7月18日、「アサシン クリード」シリーズがNetflixで実写ドラマ化されることが明らかになった。

 Ubisoftの代表作として、世界中にファンを持つ同シリーズ。本稿では、その現在地から実写ドラマの成功の分岐点を考えていく。

Ubisoftが誇る人気アクションアドベンチャー「アサシン クリード」

『アサシン クリード シャドウズ』公式シネマティック ワールドプレミア トレーラー

 「アサシン クリード」は、フランスのゲーム企業・Ubisoftが開発/発売を手掛けるアクションアドベンチャーだ。これまでナンバリングやスピンオフを含め、30近い作品が発表されている。最新作は、2025年3月に発売となった『アサシン クリード シャドウズ』。同作では、安土桃山時代の日本を舞台に、父を亡くした忍の藤林奈緒江と、信長に仕えたとされる弥助の、ダブル主人公による物語が描かれた。

 今回、発表となったNetflixでのドラマ化は、2020年に第一報がアナウンスされていたもの。長らく続報がなかったが、このたび本格始動し、製作体制が整えられることとなった。Ubisoftのプレスリリースによると、『DMZ ニューヨーク非武装地帯』と『HALO』でそれぞれショーランナーを務めたロベルト・パティーノ氏、デヴィッド・ウィーナー氏が製作総指揮を担当するとのこと。IPを保有するUbisoft、配信元となるNetflixは、共同制作として携わっていく。

 Netflixは、これまでにも数多くのゲーム作品を映像化してきた。『悪魔城ドラキュラ -‐キャッスルヴァニア-‐』や『バイオハザード』『アーケイン』などはその一例だ。2022年2月には、Irrational Gamesが手掛けるアクションRPG『バイオショック』のオリジナル映画化も発表されている。配信となった作品が総じて好評を博していることから、「アサシン クリード」の実写ドラマ化にも期待が集まっている。

 キャストや配信時期は現時点で未定。なお、Ubisoftからは2025年秋、スパイアクション『Tom Clancy’s Splinter Cell』のアニメ化作品『Splinter Cell: Deathwatch』が、おなじくNetflixから配信予定となっている。

ドラマフォーマットへの適応が成功への分岐点に

『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-: 月夜のノクターン』メイン予告編 - Netflix

 実は「アサシン クリード」が映像化されるのは、これが初めてのことではない。2016年に実写映画『アサシン クリード』が20世紀スタジオ(旧20世紀フォックス)から配給されている。同作もまた、人気ゲームを原作とした映像作品として話題を呼んだが、諸手を挙げて支持されるほどの結果は残せなかった。だからこそ、今回の実写ドラマ化には、また異なる注目が集まっている面もある。

映画「アサシン クリード」予告A

 Ubisoftによると、実写ドラマには、2つの影の組織による秘密の戦いの物語が描かれるという。一方は操作と支配によって未来を決定づけようとし、もう一方は自由意志を守るために対抗しているとのこと。歴史の転換点を舞台に繰り広げられる登場人物たちの攻防がメインテーマとなっているようだ。同作が事前の話題性に違わない評価を獲得できるかは、エンターテインメントとしての完成度の高さはもちろん、登場人物や組織のパーソナリティをシリーズらしく描けるかにもかかってくると言えるのかもしれない。

 他方、もうひとつの分岐点と考えられるのが、ドラマが持つコンテンツ特性だ。世の中にはさまざまなコンテンツが存在しているが、私は、ゲーム、映画、小説、マンガと、ドラマ、アニメのあいだには明確な差があると考えている。それは、前者が決まった尺の長さを持たないコンテンツである一方で、後者がある程度のフォーマットで放送/配信されやすいコンテンツであるという点だ。そのため、ドラマやアニメでは、1話ごとの区切りを見据え、意図的にキャッチーな山場が用意されることも少なくない。つまり、ゲームの実写映像化をめぐって、映画化以上に工夫が必要となるのが、ドラマ化であるというわけだ。

TVアニメ『グノーシア』第1弾PV | 2025年10月放送開始

 私が知るかぎり、「アサシン クリード」は、ドラマのコンテンツ特性に向いた作品ではない。なぜなら、同シリーズは、必要に応じて適宜シナリオに割くテキスト量(=プレイ時間の長さ)を変えながら、ひと続きにストーリーを描いてきた作品であるからだ。たとえば、2024年末にTVアニメ化が発表され話題となった人狼系アドベンチャー『グノーシア』とのあいだには、ストーリーテリングの形に大きな違いがある。同作のようにアニメとしての区切られ方を作品性からイメージしやすいのであれば、成功する未来も見えやすいというものだが、少なくともゲームシリーズとしての「アサシン クリード」は、“そちら側”の作品ではない。制作側がこの決して低くないハードルをどのように越えるのかもまた、シリーズの実写ドラマ化をめぐる注目点であると言える。

 はたして実写ドラマ版「アサシン クリード」は、ゲーム作品の映像化の成功例に名を連ねることができるだろうか。今後の続報に注目したい。

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