TOPメーカーが“デジタル手帳”に挑戦し始めた背景とは 「令和はデジタルとアナログの二刀流」
老舗メーカーがデジタルに踏み切った背景とは
手帳の使い方が徐々に変化しているなか、NOLTYプランナーズでは2024年4月からデジタルプランナーの販売を開始した。デジタルプランナーとは、iPadやタッチペンシルを使って、デジタル化されたノートアプリに書き込むというものだ。
70年以上の歴史を持つ老舗ブランドがデジタルに踏み切った背景について、郡山氏はこう語った。「最初のきっかけは、iPadでノートをとっていた社員がいたのが始まりです。みんな手帳が大好きで入社している会社なのですが、その社員は『iPadでノートをとるのが意外と楽しいですよ』と言っていて。それを聞いて周りは『どうした!?︎』という感じではあったのですが、そこで否定はせずに、『面白い』という受け取り方をしたんです」
NOLTYは、2013年に『能率手帳』から『NOLTY』へとブランド名を変更している。その背景について、郡山氏はこう明かした。「ビジネスパーソンが使う手帳というイメージから、全世代の方にも、NOLTYというブランドを通して“成長支援”をしていけるようにリブランディングをしたからです」
「私たちNOLTYプランナーズは、NOLTYというブランドのカスタマイズ提案を通して、みなさまの成長や、豊かな人生のために『自分の時間をデザインする』ためのツールを提供し、支援することが目的です。アナログでも、デジタルでも、その目的が果たせるのであれば挑戦したいと思っています」ただ、長きにわたってアナログ手帳を販売してきた組織だからこそ、デジタルへの挑戦は波紋を呼んだという。「デジタルプランナーの販売を開始した当初は社内がざわつきましたし、いまも若干ざわついています(笑)」
社内でも驚きの反応があったデジタル化への挑戦だが、ブランドが変わった背景を踏まえると、この挑戦は決して不自然なことではないように感じる。「たいしたことはできないかもしれない。それでも、手で書くことを続けてきた私たちだからこそ、挑戦する価値はあるんじゃないかなと思っています」
あくまで目的は手帳を作ることではなく、成長を願う人々に寄り添うことで、手帳はそのための手段なのだ。だが手帳のデジタル化が進む一方で、改めて“手で書くこと”の重要性も見直す流れが生まれている。「学校ではGIGAスクール構想が進み、いろんなものがデジタルに置き換わっています。だからこそ先生たちは、学生に“手で書く”ことをさせたいんだ、とよくおっしゃっていますね」現代の学生は生まれたときからデジタル環境で育っているため、年々筆圧も薄くなってきているようだ。
改めて“手で書く”ということについて、郡山氏はこう語った。「書くという行為は人間のいろんな感覚を使うので、記憶の定着度も違います。今回開発したデジタルプランナーでは、手書き感にこだわっています。アナログでもデジタルでも、共通して“手で書く”という行為が再現できるといいですよね」
デジタル手帳とアナログ手帳は決して別物というわけではなく、“手で書く”という共通の作用がある。ほかにも、手帳を使ううえで大事なことはもうひとつあるようだ。「手帳を“開くこと”が大事です。1日のなかで手帳を開く機会が多ければ多いほど、学習時間が伸びたり、忘れ物が減るという弊社独自の調査結果が出ています。これはデジタル手帳においても共通している要素なのではないでしょうか」