魔改造ピンボールを邪道プレイでねじ伏せろ! ステージが感情をデザインする『XENOTILT』は“良スルメゲー”だ
あの魔改造ピンボールが帰ってきた!
常識離れの3層構造ステージ、弾をばらまく巨大ボス、編隊飛行するザコ敵。メガドライブ調のグルーヴィーなミュージックとピクセルアート。すべての瞬間がギラギラに輝き、マルチプラーの嵐が吹き荒れる。あまりにも“ビデオゲーム”な画面が放つ音と光の快感で我を失うそのとき、ピンボールという魔法の時間が始まるのだ。
『XENOTILT』(PC/Steam)はビデオゲームらしさを突き詰めたアンリアルなピンボールである。シミュレーター路線にはない奔放なプレイ感と、攻略の実感を得やすいステージ構成でカルトヒットした、前作『DEMON'S TILT』の後継作だ。
本作はどうみても普通のピンボールと違う。タレットを撃つ。パークで強化する。副題“HOSTILE PINBALL ACTION”(敵対的ピンボールアクション)のとおり、「ピンボール風アクションゲーム」だから普通ではないと説明している。しかし、実はピンボールの基本をとことん味わえる“初心者向けピンボールゲーム”なのだ。風変わりな要素の数々が、驚くことに「ボールを狙った場所に弾く」楽しさのためにある。
本稿は初心者の壁「ノーマルモード10億点突破」実績の攻略を通じ、本当に初心者向けピンボールなのか解説する。トレイラー動画で興味を持った人は、ここで記事を読むのを止めてプレイしてもらいたい。おそらくスコア3000万点でゲームオーバーになるはずだ。そこからスコア10億点まで伸ばす秘訣をいまから開示しよう。
台を叩いてボールを止めろ
『XENOTILT』はピンボールをプレイしたことがなくても大丈夫だ。アクションゲームが好きなら、メキメキとうまくなる成長体験が気に入ると請け合おう。もちろん、最初のうちは思いどおりにいかない。しかしプレイを重ねて「気付き」を得ると、スルメのように噛むほど味が染み出てくるのが面白い。
本作の特徴はステージ中央の巨大ボスである。フリッパーと距離が近く、移動パーツも多めで、ボールをあらぬ方向に跳ね返す。さらにザコ敵や敵弾という障害物もばらまく。ボスのせいでボールが予想外のところに落ちる、という点で普通のピンボールよりも難しい。そのかわりボールを狙って弾くのが簡単になっている。
ここで役立つのが、ピンボールの基本テクニック「ホールド」だ。まずはフリッパー(ゲームパッドの左右ボタンでパタパタ動く羽根)を上げてボールを制止させる。それからフリッパーを下げれば、フリッパーを上げるタイミングだけで狙いの方向にボールを弾けるのだ。これならコツを掴みやすい。
とはいえボールに勢いがあり、上げたフリッパーを駆け昇ってしまうときもある。そんなときは、ボールの勢いを相殺する方向に左スティックを傾けよう。するとボールが左スティックの方向にクンッと動く。この左スティックがナッジ(台叩き)である。台をトンッと叩いた衝撃でボールを動かしているのだ。ホールドできるまで台を叩こう。何度でも叩こう!
実機でやろうものなら店員が飛んできて出禁になるほど台を叩きまくれる。反則ではない。ティルト(振動センサー反則)にならないならナッジはテクニックだ、という説もある。画面右下の振動センサーが限界に近いと画面四方が赤く染まる、デンジャー演出のおかげでナッジしやすい。ナッジを使ったホールドを覚えたなら、「ピンボールはテクニックのゲーム」だと実感するのも時間の問題だ。
攻略の楽しさを追求した魔改造
そしてピンボールは知識のゲームでもある。分かる楽しさ、気付きの喜びに浸りたい人にも『XENOTILT』をオススメしよう。ホールドしてから弾く再現性の高さが知識の攻略を保証する。まずはスタートを狙ってボールを弾こう。すべてはそこから始まるのだ。
スコアの大量獲得は次の行程である。
- スタートにボールを通す
- プロトコル(ミニゲーム)を達成する
- 点灯したジャックポットにボールを当てる
ジャックポットはスコア素点がバンパーの100倍以上で、さらにジャックポット倍率も乗る。ただ闇雲にボールを弾き続けるよりも、時間をかけてでもジャックポットを獲得したほうがスコアを伸ばせる。ピンボールとはどれだけ狙いに当てることができたかを誇るゲームだと思えばいい。
だからスタートを狙い、次はプロトコルのターゲットを狙おう。狙いに当たるうれしさ、外れる悔しさを数度味わえば、スタートやプロトコルを狙いやすいフリッパーがあると気付くだろう。さすれば、フリッパーから別のフリッパーにボールを渡したいという欲が出る。
この欲を叶えるのにもナッジが役立つ。さながらアクションゲームの2段ジャンプのように、弾いたボールをナッジで左右や上へ方向転換してやればいい。当然、フリッパー+ナッジの合わせ技はプロトコルやジャックポットを狙うのにも使える。ホールドを覚えてからボールコントロールを意識する、攻略の導線が確かでプレイ意欲をかき立ててくれるからヤミツキだ。
知識が技術を鍛え、技術が知識を見つける。腕前の上達はスコアとなって表れる。どんどん伸びるスコアでうまくなったと実感できる。ゲームオーバーでハイスコアを得たとき、「まだまだイケる」と伸びしろを感じたならしめたものだ。ピンボールという魔法の扉が開いているにちがいない。
一撃100億点のウィザード(天才)を目指せ
以上で述べた2点、ボールのホールドとジャックポットの獲得が理解できれば初心者の壁「10億点突破」はすぐそこだ。3層ステージの各層に6つのプロトコルがあり、ボス撃破という難しい目標を含む。各プロトコルのコツを掴むごとにスコアが伸びるぞ。そしてプロトコル全達成でスーパーボーナスタイム「ウィザードモード」に突入だ。グローバル倍率アップ+マルチボールで100億点突破も夢ではない。
そのあとは? ノーマルモードでさらにスコアを伸ばすもよし、別のゲームモードで遊ぶのもよし。スコアならぬ生存タイムを稼ぐクライシスモード。フリッパーが短くなり1ミス終了のハードコアモード。3種のボーナスステージやパークのアンロック・セッティングを追加したEXモード。ノーマルモードをやり込んだあとも味変を楽しめる。
そこまで遊んだプレイヤーはどんな体験を得ているだろうか。ウィザードモードを繰り返してスコアの高みを目指す。マルチボール中に技術や知識を手放してフリッパーをパタパタ動かす。各層のプロトコル攻略を考える。スタートを狙ってボールを弾き、当たり外れに喜び憂う。ボスやバンパーで跳ね返ったボールを無事にホールドでき安堵する。などなど、さまざまな感情の混然を味わったに違いない。だから感情の起伏を期待してもう1回プレイしてしまう。それがピンボールという魔法なのだ。
ボールをドコに弾き、ドコに跳ねるかで感情が左右される。つまり、ピンボールのステージが感情をデザインしているのだ。これはすべてのピンボール台にあてはまるハズである。ならば、感情の波の多彩さ・奥深さ・味わいやすさが“名機”と呼ばれる条件のひとつではなかろうか。その名機の条件を常識離れしたビデオゲームで実現した、というのが驚きだ。誰でも楽しめるピンボール風アクションゲーム、2024年イチオシのスルメゲームとして『XENOTILT』をオススメしよう。
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