山下穂尊のリアルプロダクト体験記

試乗会でなく試聴会? 三菱自動車×ヤマハがタッグを組んで本気で作った“走るリスニングルーム”を体験!

 先日、三菱自動車さんの新型『アウトランダーPHEV』の“試聴会”があると聞いて山梨の小淵沢に取材に行ってきました。天候は生憎の曇り~小雨模様でしたが、酷暑を極めた今年の夏の合間の、涼しい快適な1日でした。

 自動車なのに試乗会でなく“試聴会”というワードが気になったのだが、スタッフさんに言われるまま会場に到着。小淵沢駅からの送迎車も『アウトランダーPHEV』で、テンションが上がる。元々アウトドアやウィンタースポーツに興じることが多い筆者なので、SUV車はマストなところがあるのだ。

 公言しているので、包み隠さず話すが、自分は普段は「Jeep」に乗っている。何気にかれこれ14年くらい乗っている愛車である。それもまたSUVであり、何かと山道などに行くことも多いので、とにかく四駆はマストだ。友人の2WDセダンが山道で後輪空回りしてスタックするところを何度も見ていると、とにかく四駆は必須だ。

 さて、今回の『アウトランダーPHEV』であるが、もちろん車種としての認識はしていたのだが、実際にまじまじとその車体や内装を見たことはなかった。筆者の肌感で言えば、比較的最近になって登場してきた車種のイメージであった。三菱自動車といえば、やはり、「パジェロ」や「デリカ」といったある程度無骨な四駆が目に浮かぶ。

 実際に小学生の頃には「パジェロ」や「ランドクルーザー」、「サファリ」や「テラノ」、「サーフ」シリーズなどに憧れを抱いていた(90年代のSUVたちもカッコよかったなぁ)。

 そして実家の車も実際、「デリカ」を10年以上は使っていた。そんな中で『アウトランダーPHEV』という車種を初めて知ったのは10年くらい前だっただろうか。

 当時、大忙しの時代で毎日のように地下のスタジオにこもってレコーディング作業をしていた。

 その時のディレクターがどのような話をしたかは詳しくは覚えていないが、「三菱自動車の『アウトランダーPHEV』が凄いぞ!」と興奮して話していたのを覚えている。そこで初めてその存在を認識したと記憶している。

 それから約10年が経ち、そんな車の「試聴会」に呼んでもらえるとは当時は全く思いも至らず。さて、現場に着いて改めてわかったことだが、この「試聴会」とは実際に現行車と新型車の車内における音響環境の性能を聞き比べられる、というものであった。

 聞けば、三菱自動車さんがヤマハさんと手を組んで『アウトランダーPHEV』の車内音響環境の向上を試みたそうだ。ちなみに筆者は現役当時、ヤマハさんのアコースティックギターにも度々お世話になっていた。

 会場に着くと、三菱自動車の方々、そしてヤマハの音響エンジニアなどの面々とご挨拶させて頂く。なんと三菱自動車のエンジニアの方には以前、現役時代に僕が制作した楽曲に関わってくれていた方もいて、なんだかご縁を感じてしまった。

 当時、娘さんを連れて横浜スタジアムのライブにも来ていただいたようで、我々と娘さんが当時楽屋のあたりで一緒に写った写真を嬉しそうに見せてくれた。あまりそのような企業さんのプレゼン会的な場所に来ることも少ないので、なんだかとても新鮮である。

 閑話休題。社員さんが作ったパンフレットやプレゼン用の資料を頂いて、まずはプレゼン会場へ。インテリアのデザインや走行性能の向上、PHEV車ということでそのバッテリー性能の比較などプレゼンを受ける。

 PHEVについては個人的にも気になっていたところもあり、興味が湧く。実際にセカンドカーとしてキャンピングカーを所有しているのだが、普通の車と違い、キャンピングカーにおいてはサブバッテリーの有無、働きが重要な要素になってくる。

 サブバッテリーや、ポータブルバッテリーなどは日々進化をしているので、やはり気になるのである。この『アウトランダーPHEV』は簡単にいえば普通車にサブバッテリーを搭載してるようなものなので、このご時世、そこから電源を供給できるということは災害対策などの観点からしても画期的。

 さて、今回は「試聴会」ということでメインは車内オーディオ環境である。

 会場にはそれぞれ『アウトランダーPHEV』が用意されていた。ちょうど小雨もおさまってきており、幸先の良いタイミングだ。

 1台目に体験したのは現行車(当時)。2台目と3台目が、今秋にリリースされる車種で、それぞれオーディオ環境のレギュラーとハイエンドモデルだそうだ。改めて『アウトランダーPHEV』、存在感や重厚感、高級感など、フロントサイドからしてもかっこいい。

 まずは現行車となる赤い車両に乗車。久しぶりに新しい車に乗り込んでみたけれど、フロントパネルとかステアリングとかなんか未来感が凄い。

 14年乗っている『Jeep』がいかに年月を経たかを改めて感じさせられる。スタッフさんから説明を聞いて、いくつかの曲をワンコーラスずつ流してもらう。タイプの違う楽曲を4〜5曲ずつ。

 これを1台目、2台目、3台目、とやっていくようだ。なるほど、「試聴会」とはそういうことか!

 現行車種はBOSEさんのオーディオで構成されているそう。それはそれで良いものな気もするのだが、早速試聴。ズンっと感じる低音域でロック調の曲が始まる。その後にクラシックやポップスなど。え、正直、全然これで良いんですけど……という素直な感想。そりゃ名門ブランドBOSEさん、悪いわけがない。相当の研究を重ねて作ってきてるはずだし、侮っちゃいけない。

 そして次の車種はこの秋、ヤマハさんとオーディオシステムを新開発した新生『アウトランダーPHEV』へ。カラーはブラック。これもかっこいいなぁ。実際に乗り込むと、タッチパネルも大きいし操作性が良いことがわかった。羨ましい!先程と同様の楽曲を再生。

 ん~、なるほど! 繊細さというかリアル体感的な感覚は確かに違う。繊細かつ、立体的な音量感。縦横高さの3D構造が音としてより際立つ感じ。どこか一つでも抜けるとジェンガのように崩壊しかねない危うさと、それを鉄筋コンクリートばりに丈夫に構成してあるような安心感との二刀流というか。ある意味、「抜け目がない」ということなのでしょう。

 話を聞くと、ヤマハと三菱自動車が『アウトランダーPHEV』専用に共同で開発したオーディオシステム「Dynamic Sound Yamaha Ultimate(ダイナミック サウンド ヤマハ アルティメット)」/「Dynamic Sound Yamaha Premium(ダイナミック サウンド ヤマハ プレミアム)というものでボディから音にこだわり、ドアのパネルの中などにも制振材や補強材などでカバーしてより良い音響環境を作ったそう。

 なんか贅沢な音を聞いているなぁ、と素直に感じる。ちなみにこちらのレギュラー車の音響環境は「Premium」と命名されており、もう一方のハイエンドモデルが「Ultimate」とのこと。レギュラーで「Premium」って付けてしまうところに筆者は攻めの姿勢を感じております。

 すごかったのが要はどのような環境でも、騒音下でもそこに見合った最高の「音」を届けることに徹底していたこと。今回は「試乗」ではなかったけれど、一般道、高速道路、エアコン使用時、雨天時、などなど、さまざまな場所や走行速度、天候でもその都度補正してくれる、という。

 たしかに高速道路の走行時は結構な騒音の中走ることになるし、大雨が降ってきたらそれもまた然り。その場でワイパーを動かしてもらったのだが、その音にすら反応して音響調整してくれちゃいました。未来です、これが。

 ちょっと衝撃的な体験をした上で最後の「Ultimate」を搭載している車(P Executive Package)へ。ちなみに「Premium」においては車内に8つのスピーカーを配置して、その再現性を高めているのだが、次の「Ultimate」は総数が12個。そう聞いただけでもう凄い体験ができるのだろうとワクワクしてくる。

 実際に乗り込みます。最後のカラーはホワイトなので、自分の「Jeep」と一緒でなんだか親近感。早速試聴をしてみると……。まるでオーディオルームにいるかのよう。自分も以前自宅にオーディオセクションを設けましたが、大きな部屋、という環境と、車内空間、という環境の性質の違いは圧倒的にあって。

 限られた環境だからこそ的確に表現出来る方程式をとても器用に射抜けていると感じました。自宅の部屋の家具の配置や、住空間の確保をした上での音響と、車内ならではのリスニング環境では後者の方が視聴者にはむしろ整っているのかもしれません。音響の世界も本当に青天井でゴールってないんですよ。

 でも好きな人は本当に好きだし、その先を目指してエンジニアさんや職人さんが日々孤軍奮闘しているわけで。良い意味でやり過ぎといえるくらいの到達点なのではないでしょうか。うちの自宅もオーディオシステムを何年か前に秋葉原まで行って構築しましたけど、おそらく負けていると思います。

 しかもこの「Ultimate」に関しては好みや気分に応じてさらに四つの中からサウンドタイプが選択出来るそう。

 「Lively」「Signature」「Powerful」「Relaxing」の中から選択可能。実際に試してみましたが、もはやマスタリングルームにいるような感覚。ちなみにマスタリングとはCDなどを制作する際の最終段階に行われる作業で、そこで最終調整された音源が出来上がります。

 まさにそのスタジオで作業しているような体験でした。予算や好みなどでも変わっていくとは思いますが、三菱自動車さん、ヤマハさんが手を取り合って仕上げた最強のオーディオカーというのも納得。実際、この取材を終えてから、リアルに買い替えもありかも、と考えたりしちゃっております。

 また今回は試聴のみでしたが、PHEV性能を強化し、EV航続距離は100km超になっているとのことで、走りの方も相当進化しているらしい。となると試乗もしてみたくなってきたな……。

◯商品情報

https://www.mitsubishi-motors.co.jp/

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