X、ブロックの仕様変更でも“ユーザーが移行しない”理由とは

 近日中にブロックの仕様変更が予定されているX(旧Twitter)。変更内容としては、ブロックしたユーザーから「いいね」や返信などはできないものの、ブロックした相手からは投稿が閲覧可能になる。接触されることはないが、それでもブロックした相手に自分の投稿が閲覧できるようになり、ブロックという機能が実質意味を持たなくなると言って良い。そのため、ストーカーや虐待加害者など明確なブロックする要因があったユーザーから投稿を覗かれることを不安視する人は結構いる。

 Xのこの仕様変更をきっかけに、ここ最近のXユーザーにはある2種類の動きが見られる。まずは10月いっぱいで自身のXアカウントを非公開にする、つまりは“鍵垢”にすると宣言する人が増えていることだ。とりわけ、推し活しているコンテンツのグッズ交換を目的とする“取引垢”でXを使用しているアカウントで顕著である。取引垢のXユーザーにとってXは情報収集や交流の場ではない。推し活を円滑に行うためのツールでしかなく、いまのうちに推しているコンテンツが同じ人と相互フォローして、これまで通りの推し活ライフを目指しているのだろう。

「Xは対戦型ソーシャルメディア」インプレッション数を伸ばした“対戦”に問題点も…

 次の変化として、ユーザー名に「Blueskyに移行中」「Threadsに移行中」と記し、特定のSNSに移行する予定を表明するXユーザーが増加中であることも挙げられる。また、「Bluesky・Threadsに移行する」と投稿するXユーザーも多く、本格的なXのユーザー離れを予感させる。インプレッション数を稼いで収益を得ようとする“インプゾンビ”が問題視される中、インプゾンビの駆除に一向に乗り出さなかった。そして、今回のブロックの仕様変更に堪忍袋の緒が切れ、Xを見限る人は結構いるのかもしれない。

 また、XのCEOであるイーロン・マスク氏は2024年2月に「Xは対戦型ソーシャルメディアだ」と投稿した。「対戦ゲームのように投稿という攻撃を他者に頻繁に繰り出すことが適切なXの楽しみ方である」と言わんばかりの内容だ。Xでの攻防が活性化すればインプレッション数が増え、広告掲載企業に喜ばれることから、このような投稿をしたものと思われる。

 もちろん、健全な議論が活発化するのであればそれは歓迎すべきだ。しかし、現状インプレッション数を伸ばしている“対戦”は、人種や性別、貧富などをテーマにした差別や分断を助長するケースが目立つ。ヘイトスピーチはプラットフォーム側にとっては対処すべき課題ではあるが、マスク氏の投稿から察するにヘイトスピーチの規制に積極的に取り組むとは思えない。差別的な投稿との遭遇を避けるため、ほかのSNSに引っ越すユーザーもいるかもしれない。

Xの一強時代は続く…BlueskyやThreadsがみんなの居場所になるには?

 とはいえ、ブロックの仕様変更はユーザー離れにつながらない可能性が高い。結局のところ、ユーザビリティの高さではなくユーザー数の多いSNSに人は集まる。人が多ければ有益な投稿、暇つぶしに最適なくだらない投稿と出会いやすい。実際、“企業”としてBlueskyのフォロワー数が最も多い人気漫画『葬送のフリーレン』の公式アカウントのフォロワーは6.3万。Xの公式アカウントはフォロワー数93.1万と圧倒的に引き離されており、Xが“みんなの居場所”ではなくなる事態は想定しにくい。

 やはり「Blueskyで話題の人物」「Threadsでバズった食べ物」といった話題を作れない限りは、Xユーザーは離れることはないだろう。ほかのSNSに引っ越した元Xユーザーの多くは数か月後には出戻りしているかもしれない。ブロックの仕様変更は明らかに改悪ではあるが、不満を言いながらも今後Xを渋々使うことになりそうだ。

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