異例のヒットを記録したコスメブランド『CipiCipi』 仕掛け人&人気YouTuberが語る“開発の裏側”

 アパレルブランドやカラーコンタクト、コスメや飲食店など、YouTuberがプロデュースを務める事例は年々増え続けている。そのなかでも人気YouTuber・ふくれながプロデュースをしているコスメブランド『CipiCipi(シピシピ)』は、「シピシピ グリッターイルミネーションライナー R」の累計出荷数86万本(2020年8月〜2024年6月までの数字)、クッションファンデーション「シピシピ フィットスキンクッション」の累計販売数は45万個(2024年6月時点)と、異例のヒットを叩き出している。

 そしてブランドミューズにはガールズグループ・TWICEのチェヨンが就任。人気漫画『SPY×FAMILY』の限定デザインを販売するなど、その人気はますます勢いを増している。今回はプロデューサーであるふくれなと、ともに開発を行っている株式会社Rainmakersの専務取締役COO・内田愛氏にインタビューを実施。なぜ『CipiCipi(シピシピ)』はここまで成功を収めることができたのか。ブランド立ち上げからの開発の裏側まで、人気の理由を語ってもらった。

“コスメプロデューサー・ふくれな”の裏側

ーー近年、YouTuberの方がアパレルブランドやコスメブランドをプロデュースしているケースがかなり増えていますが、プロデュースというのは実際にどういったことをするのでしょうか?

ふくれな

ふくれな:私の場合は、トレンドのリサーチから企画出し、デザイン決めや最終決定まで、ほぼすべて行っています。何をどのタイミングで作りたいのかを提案して、Rainmakersさんと相談しながら、少しずつかたちにしていっていますね。

内田愛(以下内田):何を作るのかという1番最初の部分から、ふくれなさんはかなりこだわっています。私たちはふくれなさんの発案をもとに、製品化するための工場の選定やサンプルの調整などを行います。サンプルが完成したらふくれなさんが日常生活のなかで実際に試してみて、そこからさらに調整を行っていくという流れですね。

ーー企画開発から製造まで、ふくれなさん主導で進めているんですね。コスメのリサーチは
普段どのように行っているのですか?

ふくれな:いま韓国がトレンドの発祥で、日本でも韓国のコスメブームがずっと続いてるので、リサーチも韓国を中心に行っています。韓国のYouTuberの方やインスタグラマーの方の新作情報はいつもチェックしてますね。韓国で商品が発売されると、日本では2週間〜1か月後に発売することが多いです。なので韓国でコスメについて発信している人の動画やSNSを見ながら、実際にそのコスメを購入しています。

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ーー現地で購入をしたりもするのでしょうか?

ふくれな:現地より、オンラインで買う方が早いんですよね。情報をキャッチしたら通販サイトでとりあえず早く手に入れて、質感などをチェックしてます。でもそこはオンラインなので、写真と商品のギャップがあるときもあります。写真より完成度が高いものもあれば、「写真の見せ方が上手いんだな」というのもなかにはありますね(笑)。そういうのを見ると、自分のブランドの商品は写真の写りだけで満足しないものにしよう、と燃えてきます。

 あと、韓国のメイクサロンの方の動画もYouTubeでチェックしてるのですが、日本語訳されていないので、話している内容がいまいちわからないんです(笑)。それでも、紹介されている商品はとにかく購入してみて、使い心地をチェックしています。

内田:商品は企画が出てからすぐに店頭に並ぶわけではないので、内容を練っているあいだにも世の中のトレンドはどんどん流れていきます。でも、ふくれなさんは最速でリサーチをしてくれているので、ちょうど国内で新しいトレンドが認知されてきたタイミングで、新作を発売ができることが多いんですよ。

ーーいかにトレンドを早く掴むかが重要なのですね。『CipiCipi(シピシピ)』のなかでもとくにヒットした商品はなんですか?

「シピシピ グリッターイルミネーションライナー S」

ふくれな:やっぱり「グリッターイルミネーションライナー 」ですね。ブランドを立ち上げて最初に開発した商品でもあるのですが、完成するまでかなり時間がかかりました。しっかり発色して崩れないのに、みずみずしい状態をキープできるのが特徴です。

内田:グリッターは、国内で販売しているものはラメが薄かったり密度が高いものがあまりなかったんですよ。ふくれなさんとも、保湿力をキープしたままラメが密着するという部分にかなりこだわりました。サンプルも10回くらい作り直しましたよね(笑)。

ふくれな:かなり時間をかけました(笑)。最初に開発した01番のグリッターは、発売当初からいまもほとんど内容は変わっていないんです。保湿力が上がって、パッケージを変えているくらいですね。このグリッターはお客さんがリピートしてくれてちゃんとヒット商品になっているので、やっぱりいいものを作るって大事だなと実感しました。時間をかけてよかったなと思います。

ーーほかに開発に苦労した商品はありますか?

「シピシピ フィットスキンクッション」

内田:グリッターと同じくらいヒット商品になっている「クッションファンデーション」ですかね。

ふくれな:ベース系の商品開発は初めてだったので、かなり苦戦しました。アイメイクと違って、肌質は人によって違うし、私が「いいな」と思ってもみんなは納得いかないこともあったんです。意見がばらつきすぎて、難しかったですね。

内田:ご友人にも、意見をもらったりしていましたよね。

ふくれな:とにかくいろんな人の肌で試してみたかったんです。グリッターもそうなのですが、『CipiCipi(シピシピ)』の商品は保湿力や潤い、グロウ感が特徴なので、ファンデーションでそれを実現するのがなかなか難しかったです。

内田:でも苦労してこだわったぶん、グリッターと並ぶほど『CipiCipi(シピシピ)』の売れ筋アイテムに成長してくれたのでよかったです。

ーーとくに気に入っている商品はありますか?

ふくれな:全部気に入っているんですけど「ポイントコンシーラー」は使いやすいですね。涙袋用のコンシーラーなんですけど、スティックタイプってやっぱりヨレやすいんですよ。これを最初に塗って、その上からアイシャドウを重ねるとプクッとなるし落ちにくいんです。あと、「リップセラム」も好きですね。これは100本くらい家にあって、「夜寝るときに塗るといいから!」って言って友だちに配りまくってます(笑)。保湿美容液なんですけど、メンズでも使えるんですよ。しかもチューブ型なんで汚れても拭き取りやすいんです。あとは「ガラスプランパー」も好きだし、あとは……。

「シピシピ リップセラム」

ーー本当にふくれなさんはメイクが好きなんですね(笑)。

ふくれな:好きですね(笑)。毎日メイクするようになったのは高校1年生からなんですけど、小学校6年生のころから、美容系YouTuberの方の動画を見ていました。

ーー美容に目覚めるのがすごく早かったんですね。

ふくれな:本当は中学生のときからメイクをしたかったんですけど、まだメイクが周りに全然浸透していなくて恥ずかしかったんです。高校生になってからメイクを初めて、流行ってるものを試しながらどれだけ“盛れるか”に挑戦していました。それはいまでもそうですね。

ーーそこまでメイクにハマったのはなぜですか?

ふくれな:もともと自分の顔がコンプレックスだったんです。裸眼が小さかったり、ホクロがあったり……。でもカラコンやメイクをしてみたら、こんなに自分って変われるんだということを知って、とても楽しいなと感じました。

ーーふくれなさんは動画でも、すっぴんからメイク後の“ギャップ”を見せる企画が多いですよね。

旦那さんも騙せる毎日メイク‼︎【ふくれな】

ふくれな:最初はすっぴんを見せることをすごくためらいました。そもそも顔にコンプレックスがあってメイクを研究し始めたので。でも身近な人が「すっぴんを見せた方が楽になるんじゃない?」と声をかけてくれたんです。当時まだYouTubeには何もつけていないすっぴんを晒している人はまだいなかったので、挑戦してみました。私もカラコンをつけたまま動画に写っていると、自分を偽って隠しているような気持ちになってしまっていたので。でもまっさらなすっぴんを見せることでメイクが持つ力の大きさをより発信することができたので、いまではよかったなと思っています。

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