出会いも、別れも、悔しさも糧にして、圧巻のパフォーマンスを披露ーー「HIMEHINA LIVE 2024『涙の薫りがする』レポート

 田中ヒメと鈴木ヒナの2人によるバーチャルアーティスト・HIMEHINA(以下、ヒメヒナ)が、8月2日・3日、豊洲PITで2DAYSワンマンライブを行った。題して「HIMEHINA LIVE 2024『涙の薫りがする』 Sponsored by LIVE DAM AiR」。

 本稿では、オリジナル曲中心のセットリストに怒涛のカバーメドレーをまじえ、バンド演奏や視覚演出満載の贅沢なパフォーマンスをたっぷり3時間届けた二日目の公演をレポートする。

 ヒメヒナは2018年デビューと、VTuber・VSingerとしては“古参勢”に入るベテランアーティスト。もともと「劣等上等」のカバー(執筆時点でYouTube再生数1979万回)や1stオリジナルソング「ヒトガタ」(同1598万回)など、音楽活動におけるクオリティの高さが早くから話題となっていた実力派だ。2023年夏のライブ「提灯暗航、夏をゆく」で「5年以内に日本武道館でのライブ開催を目指す」と宣言してからは、バラエティ面の活動を縮小、アーティストとしての活動により力を注いできた。

 そんな中でおこなわれた本公演は各媒体の有料配信にくわえて、アンコールを除く本編部分がYouTube、bilibiliで無料配信。さらに映像・音声込みでのミラー配信がOKという大盤振る舞いだった。このライブにかける覚悟や自信、そしてヒメヒナを愛するJOJI(ファンネーム)全員に会いに行きたいという、彼女たちの思いが伝わってくる。

 定刻が近づくと、ピンクと水色のニンライト(人参型のペンライト)が揺れるなか、ステージ左右の画面に配信から参加するJOJIたちのコメントが表示された。現地の歓声と配信のコメントの勢いが、ワクワクを高めていく。

 その熱気もつかの間、ピアノの旋律とともに映像が流れると、会場はシンと静まりかえる。駅舎を歩く2人の語りは、やがて音楽にのったポエトリーリーディングとなり、シームレスに音楽へと変化していった。そうして、2人は、終わらない旅を往く列車に乗り込む。思わず、今回のライブKVが脳裏をよぎった。

 ヒメヒナの挨拶「はおー!」にちなんだ「80」から始まるカウントダウン中には、これまでの二人の活動の軌跡が思い出のように流れていく。早く始まってほしい、二人に会いたい、歌を聞きたい、声を届けたい、でも終わってほしくない……いろんな気持ちがないまぜになりながら、ついに開幕を迎えた。大歓声に包まれた紗幕の向こう、現れた二人のシルエットがハイタッチやハグをする様子に、思わずこちらも笑顔になってしまう。

 ステージの上昇、ジェットスモークとともに紗幕が左右に開き、「HIMEHINA LIVE 2024、全力でいくぞー!」と叫びながら、笑顔のヒメヒナが登場した。ライブではおなじみの衣装を今日は色違いになるように着ていて、ショートブーツとロングブーツ、プリーツスカートとフレアスカート、胸元の襟とリボンなど、細部の対比が際立つ。アップテンポな新曲「絶望を翔る恒星」でのスタートに会場の熱気はいきなり最高潮、アウトロでは力強いコールが自然発生した。

 筆者はヒメヒナのライブを初めて観たが、この時点ですでに、これまで彼女らのライブを見てこなかったことを強く後悔した。二人の圧倒的な歌唱力やオリジナル曲の強度はこれまでの音源や動画でも伝わっていたが、生ライブゆえの息遣いをまとった歌、キレのあるダンスパフォーマンス、惜しみない視覚演出、ファンの熱量、それらを総合した「体験の強烈さ」は、これまで感じたことのない没入感と満足度があった。

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