視覚・聴覚・触覚で大迫力のDJ松永を感じる——ソニーPCL『Creative Summit 2024』で披露された最新映像技術たちを体験して

一瞬で3D世界に飛び込む

 最後に3Dコンテンツも紹介しよう。「空間再現ディスプレイ」は視線認識技術を搭載した立体映像体験装置だ。ディスプレイの前に立った人の視線を認識し、ディスプレイに映し出された空間の角度が変わるというもので、まるで目の前に置かれた立体物を見ているかのような感覚で映像を視聴できる。これは立体的な広告等への活用も検討されているようだ。

 ディスプレイへの描画は、リアルタイムでレンダリングを行うUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンを使用している。一方で、映し出される3Dモデルはソフトウェアの操作無しで確認できる。「実際に3D制作を行うクリエイティブチームと他チームとが会話をする際に、より円滑なコミュニケーションを取るツールとしても役に立つのではないか」と、ソニーPCLクリエイティブ部門の千葉有紗氏が考えを語ってくれた。

 「可搬型ボリュメトリックキャプチャシステム」は複数台のカメラを使用して、被写体の動きや姿を3DCGモデルとして瞬時に取り込むことができるシステムだ。こちらも「清澄白河BASE」に常設されている設備のモバイル版だ。

 ここではオリジナルショートムービーの「リテイク」の世界に入り込めるコンテンツが体験できた。カメラの中に囲まれた空間に立ち撮影すると、映像内の宇宙飛行士の代わりに3Dモデルになった自身の姿が映し出されるというものだ。

 こちらは特に一般の来場者に体験してほしいということで、今後さまざまな場所でのエンタメユースを想定しているということだ。比べるのも失礼な話だが、考え方としては観光地で見かける「顔はめパネル」に近いかもしれない。

“少し先の未来”を感じさせるイベント

 ソニーPCLは2022年に先端技術を活用した制作機能を備える常設スタジオ「清澄白河BASE」をオープンし、様々な技術の活用を試行錯誤してきた。

 そして今回のイベントでは、そこで培った技術を「可搬型」、つまり持ち運びできる形にした提案が目立った。これまで一部の特別な場所でしか利用できなかった技術を好きな場所で活用できるのは、制作現場にとって大きなメリットになるだろう。

 さらに制作現場の外にも広がっていけば、社会が変わるきっかけになるかもしれない。たとえば「空間再現ディスプレイ」が一般的になれば、上司へ説明するための資料を作る手間が減るかもしれない。「アクティブスレート」をライブハウスやクラブで活用すれば、大きな音が出せない状況でも、これまでと同じかそれ以上の迫力を演出できるのではないだろうか。そんな“少し先の未来”を想像させてくれるようなイベントだった。

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