連載「Performing beyond The Verse」(第3回:VRパフォーマー・yoikami)

先天性の障がいに絶望も、VRに救われ“世界の舞台”へーーVRパフォーマー・yoikamiが目指す「アカデミー賞のその先」(前編)

プレイヤーから、後進育成へ

――次に、yoikamiさんがどんな活動・実績を積まれていったのかを振り返っていければと思います。まず、最初の大きな実績は、『SXSW』のVRダンスコンテストで優勝したことですよね。

yoikami:2021年開催の『XR Avatar Costume Contest+Dance Contest』ですね。ありがたいことに優勝させていただきました。

 とはいえ自分としては、評価いただけたのはうれしいものの、ダンスを始めて3年目でしたし、決して「自分は世界で1番ダンスが上手いんだ」とは思えなかったです。ただ、演劇人としての考え方に照らして「その称号だけは嘘をつかない」とも思い、その称号に対して負けない自分でなければならないなと考えました。

 なので、そこからはひたすら、様々なイベントや国際映画祭からのオファーを、全てYESで返答し、出演を重ねてきました。発熱してしまったり、吐血してしまうことも多々ありましたが、一つでも出演を諦めると緊張の糸が切れてしまいそうで。オファーはもちろん、動画も毎日公開していました。

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yoikami:合わせて、演劇についても学び直しを進めていって、その過程でダンスと演劇には共通するところがあるなと気づきました。ダンスにも脚本があり、演出がある。その理解が、より良いパフォーマンスにつながるんじゃないかって思ったんです。

 そうしているうちに、レインダンス映画祭や、日産自動車様の『メタバース新車発表会』でのメインパフォーマー出演など、大きな舞台へのお誘いをいただくようになっていき、気が付けば「あれ、もう舞台に帰ってきてないか?」という状態になっていましたね。

――自分がyoikamiさんと知り合ったのがその時期でした。当時、『VRChat』の著名なパフォーマーとして認識していましたが、大きな転換期の中にいたのですね。

yoikami:そうですね。さらにそこから、2022年から2023年にかけて、自分の師匠筋にあたる人たちも亡くなり始めてきました。こうした流れを見ていて、自分はもう一人前の役者としてやっていくフェーズを過ぎていて、後進育成にも力を入れるべきなのではないかと考え始めました。

 そこから、国際仮想現実ダンサー協会(VDA)やVR演劇協会など、環境を整えつつ講習会を開いたり、現実の学校でも特別講師として授業をさせてもらったりして、自分がダンサーとして後続のためにできることを全てやっています。

――『カソウ舞踏団』(yoikami氏が団長を務めるVRパフォーマー集団)の立ち上げと設立も、そうした後進育成の動きと連動したものだったのでしょうか?

yoikami:『カソウ舞踏団』はいわば、後進育成のプロトタイプですね。まだ誰もやったことのないジャンルの教育は慎重に展開したかったので、まずは彼らから育成を始めようと思い、2020年ごろから教育をスタートしています。

 いまは全員がプロとして生計を立てられるまで成長してきましたが、手探りだったこともあり、彼らにはかなり苦労をさせてしまったなぁと思っています。ですが、おかげで後の教育展開へとつながる経験をたくさん得られました。

(後編へ続く)

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