著名人を起用した、ゲーム内容と一致しない“詐欺広告”の是非ーーセールス好調の『ラストウォー:サバイバル』から考える

 SNSや動画サイトを利用する人なら、毎日目にすることになるゲームの広告動画。ピンを抜き宝物の入手を目指すタイプのパズルゲームや、数字を増やしていくタワーゲーム等がおなじみだが、いざゲームをダウンロードしてみるとまったく違うゲームをプレイさせられる、海外、主に中国製の「広告詐欺ゲーム」であることは少なくない。

 こうした広告は一口に広告詐欺とは言い切れないグレーゾーンのものから、実際のゲームとはまったく関係ないもの、ほかの有名タイトルを連想させるような悪質なものまでさまざまだが、どれも妙に記憶に残ってしまったり、イラっとさせられたりすることから、良くも悪くも記憶に残りやすい。より多くの人の印象に残っているのではないだろうか。

 一方で、広告が話題になればその効果は確実にあるようで、頻繁に広告を目にし、その広告の内容が良くも悪くも話題になったタイトルは、セールスランキングで成功を収めることも少なくない。

積極的な広告展開によってセールスランキング上位に入った『ラストウォー』

 直近でよく目にするゲームの広告といえば、『キノコ伝説:勇者と魔法のランプ』や『ラストウォー:サバイバル(ラストウォー)』といったタイトルだろう。どちらのゲームも広告の量が非常に多いため、誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。これらのゲームは、広告の効果もあってセールスランキングで上位に入っている。特に『ラストウォー』は6月に入ってからもランキング上位に位置する注目すべきタイトルだ。

 モバイルアプリ・ゲームのレポートやブログ記事等を発信するSensor Towerによると、2023年8月にリリースされた『ラストウォー』は、2024年初頭に急激に売り上げを伸ばしたとのこと。その要因は積極的な広告展開にあるという。

 『ラストウォー』の広告はお笑い芸人のかまいたちや、インフルエンサーのマックスむらいといった著名人が広告に出演していることが特徴だ。有名人が出演していることで、ゲームの注目度が増したことは間違いないだろう。また、広告の出演者が「このゲームは詐欺じゃない」と発言することから、著名人の起用は広告に対する信頼度を上げるという狙いもあるようだ。

広告とゲームの内容は完全には一致せず

 では、『ラストウォー』は広告と実際のゲームの内容が異なっているのだろうか。広告では、左右のスワイプ操作で自キャラを動かすことで、上から流れてくる敵やパワーアップを撃ち、ボスの撃破を目指すゲームとして紹介されている。広告を見る限りは、頭を使う要素のあるアクションゲームだと受け取る人が多いだろう。

 しかし、実際のゲームでメインとなるのは基地を運営し、ガチャで引いたキャラクターを育成していくことだ。広告に出てくるゲームとまったく同じものは存在せず、類似したミニゲームが実装されているものの、育成したキャラクターを配置してゾンビを迎撃するといった内容となっている。ステージクリアには操作精度や判断力ではなく、キャラの育成が重要となっており、さらにはある程度ゲームを進めるとPvPの要素が強くなっていく。このように、本作は広告でイメージするような、「ちょっと頭を使うアクションゲーム」というより、「対人要素のあるストラテジーゲーム」といえるだろう。

 このように、本作は広告とゲームの内容が完全に一致しないタイトルとなっており、アプリストアには広告に対する不満の声が少なくない。また、X(旧Twitter)で流れる本作の広告に対して、広告の内容と実際のゲームの内容が異なることがコミュニティノートで注意喚起されたこともある。

 多くの人にとっては、詐欺的な広告と受け取られても仕方がないことは間違いないが、数年前に話題になった『マフィアシティ』や『エバーテイル』といった、広告の内容と実際のゲームがまったく異なるゲームとは違い、『ラストウォー』は広告に類似したパートが、ゲームのサブ要素としてはそれなりのボリュームで実装されている。そのため、「そこまで悪質な広告ではない」と考えることもでき、人によって意見が分かれるところだろう。

 また、本作のストアページや、SNS検索の結果を見ても、「広告の内容とは違うが面白い」「面白かったので課金した」といったゲームの内容を評価する声も少なくない。実際に筆者も数時間、無課金でプレイをしてみたが、スキマ時間で遊ぶにはちょうどいいカジュアルなゲームという印象を受けた。

カジュアルなスマホゲームはレッドオーシャン

 ゲームの内容は一定数のファンを獲得するポテンシャルを持った『ラストウォー』だが、それでもグレーゾーンな広告を大量に打ち続けるのは、それだけカジュアルなスマホゲーム市場の競争が激しいことが背景にあるのではないだろうか。

 『ラストウォー』だけ見ても、類似したタイトルは複数存在し、その多くが本作の広告と酷似した内容の広告を打っている。ゲームの内容にはあまり差がないため、広告を活用して多くの人にタイトルを認知してもらいダウンロードにつなげることが、この市場で生き残るための戦略なのだろう。だからこそ、より印象に残るような詐欺的、若しくはグレーゾーンな広告が大量に流れてくるというわけだ。

別タイトルの似たような広告も流れてくる

 詐欺的な広告であっても、広告で紹介されたようなゲームだと思った人や、本当に広告通りのゲームなのか確かめたくなった人などがインストールするため、今後も多くの企業がこうした実際のゲーム内容と異なる広告を大量に打ち続けるだろう。

 とはいえ、こうした戦略にはリスクもある。広告枠を大量に確保したり、著名人を起用すれば、広告にかかる費用も上昇し、広告が期待通りの効果をもたらさなかったときのリスクも高まるほか、法規制や、SNSや動画サイトなどのプラットフォーム側による広告の配信停止といったリスクもついて回る(なお、こうした広告は法的にはグレーゾーンのようだ)。

 多くの広告で同じ映像や素材の使いまわし等が見られるが、極力広告制作のコストを下げ、大量の広告を配信するのと同時に、こうしたリスクを少しでも下げようという努力なのだろう(使いまわしにより、一層広告の胡散臭さは増しているが……)。

 他方、広告を流すプラットフォームにとっては、広告枠の販売は重要な収入源である一方で、詐欺的な広告を配信し続ければ、ユーザーからの信頼が揺らぎかねない。また、出演した著名人にもイメージダウンの恐れがある。ある意味、すべての関係者にとって綱渡りのような状況で、こうした広告は配信されている。このように、『ラストウォー』の躍進は、ゲームの成功における広告の重要さを再認識させると同時に、広告を取り巻くこうした現状も浮き彫りにしているのではないだろうか。

 一方、広告のターゲットである我々ユーザーは、問題のある広告を消費者庁やプラットフォームに通報するか、チープな広告をミームとして楽しむくらいしかできることはない。だからこそ、視聴者やユーザーを置き去りにするような戦略を採ってほしくはないものだ。

〈Source〉
Sensor Tower:https://sensortower.com/ja/blog/lastwar-revenue-surging-from-2024

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