Nintendo Switch後継機は期待に応えられるのか 任天堂のアナウンスから見えてきた“輪郭”とは
任天堂は5月7日、Nintendo Switchの後継機にあたるハードを2025年3月期中に発表する方針を明らかにした。
期待や推測、リーク情報などが飛び交うなかで、ついに公式が存在を認めた任天堂の次世代機。今回のアナウンスから見えてきた新たな輪郭について考察する。
ついにベールを脱ぐ任天堂の次世代機
Nintendo Switchは2015年3月にその存在が明かされ、そこから2年後の2017年3月にローンチを迎えている。今年3月で発売から7年が経過した、ゲームカルチャーの歴史でも屈指のロングセラー機だ。「3大プラットフォーマーから誕生した最新ハード」ということもあり、リリース当初から広く普及してきたが、コロナ禍における巣ごもり需要の拡大を背景に、覇権とも言える現在の圧倒的な地位を獲得した。
ローンチからこれまでの8年のあいだには、プラットフォーム事業におけるライバルであるソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)やMicrosoftから、(Nintendo Switchから見て)次世代機にあたるPlayStation 5、Xbox Series X|Sがリリースされた。そのような時流もあり、ここ数年は“まだ見ぬ次世代機”を待望する世論が形成され、各メディアでは機能/スペックと発売時期の予測、リーク情報などが飛び交っていた。
マイナーチェンジモデルまで含めたNintendo Switchシリーズ全体での世界累計販売台数は、1億4,000万台超。これは過去発売された家庭用ゲーム機すべてのなかで3番目に多い数字である。日本国内では3,300万台強を販売。「歴代で最も売れた家庭用ゲーム機」の座に上り詰めている。
これらの数字に裏付けられた普及率や、ハードの販売周期などを考慮すると、すでに任天堂社内では次世代機の開発が進んでおり、まもなく正式発表されると見られていた。今回のアナウンスによって、ようやく公式がその存在を認めた。
「後継機」という表現は、後方互換性を備えていることの裏付けか?
先にも述べたとおり、界隈ではここ数年、Nintendo Switchの次世代機について、詳細を予測する世論が広がっていた。そこには、現実味のある内容が提示されるケースもあれば、話者が純粋に期待する(実現性の低い)機能が列挙されるケースもあった。そのようにして集まった意見を概括すると、「グラフィック性能の向上」「Nintendo Switchのソフトも遊べる後方互換性」「(他社製ハードと比較しての)リーズナブルな価格の維持」の3点に帰結する。2024年度内に発表されることが明らかとなった次世代機が、これらの要素を兼ね備えたものとなるのかに注目が集まっている現状だ。
任天堂は今回のアナウンスにおいて、新ハードを「Nintendo Switchの後継機」と表現していた。やや揚げ足取り的な側面もある考え方ではあるが、このことから見えてくる実像もあるように思う。「後継」とは、前任とされる事物から立場や役割を受け継ぐことを指す言葉である。任天堂は同機をNintendo Switchの代替になり得るものと考えているからこそ、「後継」という表現を用いたと考えられはしないだろうか。
上述した次世代機に求められる要素のなかで、「後継」という言葉にそぐうものを挙げるとすれば、それは「後方互換性」についてだろう。つまり、まだ見ぬ次世代機では、Nintendo Switchのソフトを遊べる可能性が高いとも考えられる。このことは、近い将来に世代交代を控える現在においても、Nintendo Switchの新作が発表され続けている事実とも整合性が取れている。任天堂は先のアナウンスのなかで、2024年6月に配信される情報番組「Nintendo Direct」では新ハードの情報を扱わず、2024年後半の新作ソフトの発表に終始すると明らかにしている。
「後継」という言葉に秘められたもうひとつの可能性
反面、長くゲームカルチャーを見つめてきたフリークにとっては、「後継」という言葉に苦い思い出もある。WiiからWii Uへと世代交代するときにも、任天堂は「後継機」という言葉を使っていたからだ。2006年末にローンチされたWiiは、同社が展開したゲーム機のなかで最も早く3,000万台を売り上げたことでもよく知られている。長い歴史を振り返ると、Nintendo Switchに勝るとも劣らないほどの成功を収めたのが同ハードだった。
そうした背景から次世代機にあたるWii Uには、現在の状況と同様に大きな注目が集まることとなったが、残念ながら期待どおりの結果には至らなかった。任天堂がこれまで積み上げてきた歴史を知る人にとって「後継」という言葉は、このときの失敗を思い出すものでもあるのだ。
今日では、理由もさまざまに考察されている。そのひとつと考えられているのが、ソフトのラインアップの乏しさだ。Wii Uもまた、爆発的に普及した前世代機・Wiiの後方互換性を備えていたが、専用のタイトルとなると、サードパーティーには技術的/経済的に開発のハードルが高かったことなども影響し、数えるほどしか魅力的な作品がリリースされなかった。このことが同ハードの普及を遅らせた結果、さらに開発/発売されるソフトが減少するという悪循環が発生。絵に描いたような失敗への道筋を辿ることになってしまった。
任天堂はこの失敗から得た反省をNintendo Switchのマーケティングに生かしていると言われている。現に同ハードにおいては、ローンチから7年以上が経過してもなお、サードパーティーによって開発されたタイトルの発売が続いている現状がある。
「後継」という言葉に示唆された2つの未来。満を持して発表される次世代機は、フリークが望む仕様を持っているだろうか。もし期待どおりのハードとなれば、任天堂がNintendo Switchの展開で獲得した権威はさらに盤石となっていく。大きな分岐点となり得るからこそ、同社はその開発/発売に慎重さを見せていた。その全貌がまもなく明らかになる。
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