東映アニメーション発の人気声優ユニット「サテライト」とは何者か 老舗アニメスタジオがメタバースで仕掛ける“新たなエンタメの形”

人気声優ユニット・サテライトの魅力を探る

 1月27日に開催された、東映アニメーションによる初のVR空間でのアニメフェス『Virtual Anime Fes』。新作発表会や朗読劇、そして期間限定ユニットによるライブパフォーマンスなど、様々なコンテンツがソーシャルVR『VRChat』上の特設会場から発信された。

 日本のアニメーションスタジオのなかでも随一の歴史を持つ東映アニメーションだが、実はVR空間を活用した取り組みは、2022年より『ONN'ON STUDIOS』というプロジェクトにて、継続的に実施されてきた。2年近くの積み重ねが花開いたのが、『Virtual Anime Fes』というイベントだったと言えるだろう。

 本記事では、『Virtual Anime Fes』に至る『ONN'ON STUDIOS』のこれまでの取り組みや、2つのオリジナル楽曲をひっさげてデビューした期間限定ユニット「サテライト」、そして『Virtual Anime Fes』というイベントは実際どのようなものだったか、その魅力と合わせて様々な角度から紹介していく。

広がり続ける『ONN’ON STUDIOS』プロジェクト

 まずは、『ONN'ON STUDIOS』について簡単に解説しよう。

 『ONN'ON STUDIOS(オナノンスタジオ)』は、2022年12月16日に始動した東映アニメーションのメタバースプロジェクトだ。プロジェクト名の「ONN'ON」は“On and on(延々と続く)”を意味し、「いつまでも終わることなく、広がり続ける、あの頃の僕らの遊び場」というコンセプトのもと、ソーシャルVR『VRChat』に様々なCG空間(ワールド)を制作・公開している。

 現在公開されているワールドは全部で3つ。1つ目に公開された「ToeiDogaStudio1956」は、「1956年の東映動画スタジオ(一期棟)」を再現した、デジタルアーカイブの性質が強い空間だ。

 東洋一のアニメーション制作スタジオとして建設され、『白蛇伝』や『太陽の王子 ホルスの大冒険』といった、日本初の長編フルカラーアニメーション映画が生まれた場を、くまなく見学することができる。

 2つ目に公開された「Nostalgia1999」は、「1999年7月のオタク部屋」をコンセプトに制作されたワールドだ。

 ソニー・ミュージックソリューションズも制作に関わったこのワールドには、当時のアニメグッズやソニー製品が所狭しと詰め込まれている。そんなノスタルジックあふれる部屋の中を、小人サイズで探検することができる。

 そして3つ目が「ImaginaryPark2070」。「1956年の大泉学園」、「1999年の秋葉原」、「2017年の羽田空港」、そして「近未来の渋谷」の4エリアが凝縮された、マルチバースなテーマパーク空間として制作されたワールドだ。

 各エリアには東映アニメーションゆかりのアニメ作品のキャラクターなどが配置されており、特定の会場には実験的に「AIコンシェルジュ」も滞在するなど、様々なコンテンツが詰め込まれている。

 これら3つのワールドは一般公開され、24時間だれでも訪問することができる。そして、「Nostalgia1999」ではアニメ作品の「WatchParty」イベントが開催されるなど、持続的な空間活用が実施されてきた。こうした取り組みを継続するなかで、「ImaginaryPark2070」にて先日開催されたのが、東映アニメーション初となるVRアニメイベント『Virtual Anime Fes』だ。

期間限定ユニット「サテライト」が結成 その魅力を探る

 新作やMRゲームなどの発表など様々な催しが行われた『Virtual Anime Fes』。このイベントにて結成された期間限定ユニットが「サテライト」だ。

 公式キャラクターのメモリ(CV:麻倉もも)、ねいろ(CV:下地紫野)、かえる(CV:高橋花林)による3人組ユニットで、いずれもデジタル技術の発展で進化をとげた「近未来のバーチャル住人」である。アニメなどの“古く破損したデータ”を通して人間の創造に魅了され、これら過去のデータをアーカイブすることを目的に音楽活動を開始した、とのことだ。

 今回のイベントに合わせて『夜はONN’ON(オナノン)』、『サテライト』の2曲のオリジナル楽曲が制作され、イベント内のステージにて披露される運びになった。先日開催された後藤真希のアンバサダー就任式でも、「サテライト」はオープニングアクトとして「夜はONN’ON(オナノン)」を歌唱する様子を会場へ中継した。

【Special MV】サテライト「サテライト」

 一見すると「VTuber」のような存在に思えるかもしれないが、声優のキャスティングが明言されていることから、「サテライト」は純粋なキャラクターに近い存在といえる。正統派ヒロインな「メモリ」、おしとやかな「ねいろ」、元気いっぱいな「かえる」とキャラクター付けもかなり強く、担当声優の演技力によってそれが存分に表現されている。そのうえで、(特に『VRChat』現地会場では)彼女らが動く姿を目の前で見ることができたため、より「生きて存在するキャラクター」であることを感じられるのが魅力だろう。

 各キャラクターごとのディレクションは、「夜はONN’ON(オナノン)」と「サテライト」のレコーディング時に実施されたようだ。今回、筆者は東映アニメーションから楽曲収録時に実施された特別インタビュー映像を視聴する機会に恵まれた。その内容の一部をお伝えしよう。

 それぞれの楽曲について、かえる役の高橋は、先に収録した「夜はONN’ON(オナノン)」はノリのよいダンスチューンで、個々のキャラクターらしさを全開にした一方、「サテライト」はグループ全体の楽曲というテイストが強く、「3人の一体感を意識した」とのことだ。ねいろ役の下地はキャラクターの方向性ゆえに多少落ち着きを持たせて歌ったものの、「ついつい楽しくなり、『下地紫野の元気なところ』が出てきて調整が少し大変だった」というコメントを寄せた。

 楽曲に対する感触は3名とも好評。ねいろ役の下地は「VRがテーマなので電子音を想像していたが、どちらかと言えば宇宙を彷彿とさせ、でも王道な感じがある」と、メモリ役の麻倉は「音域の幅広さは大変だったが、のびやかで気持ちよく歌えた」と評価している。合わせて麻倉は「ぜひいっしょに踊ってみてほしい一曲」ともコメント。高橋も「これからたくさん聴いてくれたらうれしい」と語った。

 そして、テーマとなったVRについて、下地は次のような抱負を語ってくれた。

 「自分も含めて、VRというものを聞いたことはあっても、まだ身近に感じられていない人は多いはず。『Virtual Anime Fes』という大きなイベントを通して、VRをより身近に感じて欲しいですね。そのお手伝いを3人でやっていき、みなさまの“VRライフ”の架け橋となれるようがんばります!」

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