『フリースタイル日本統一』#15ーーこの日の裂固は最強だった 呂布カルマもブチ上がって拍手

フリースタイル日本統一 #15

裂固、ミメイに放ったパンチラインの連打 呂布カルマもブチ上がって思わず拍手

 前回の【#14】に引き続き、TEAM東海(呂布カルマ×泰斗a.k.a.裂固×楓×KANDAI)とTEAM京都(ミメイ×POWER WAVE×歩歩×Fuma no KTR)が対戦中。TEAM東海から4番手の泰斗a.k.a.裂固、TEAM京都からは3番手のミメイがそれぞれ登場し、お互いに総力を掛けた長期戦もいよいよ今回で大詰め。逆境に強い男=裂固が、ミメイ、Fuma no KTRの同世代ラッパーとどのように対峙するのか。オンエア前から期待が高まっていたところだが、その勝敗は審査員の判定を確認するまでもなく、明白なものとして映るくらいだった。

 本稿のメインとして振り返るのは、ミメイとの一戦。ビートはICE DYNASTY「COLD BOYS」で、ミメイが後攻を選択。ハイライトは次に引用した通りだ。

(2バース目以降から引用)

裂固:俺はライミングスキルというより"ラッパースキルの "ヤンチャすぎる"ラップでお前は"万策が尽きる"だけだ お前は"大阪"節 俺は"ローカ"ル節 分かる? 俺はこのマイク持ってここで"傍若無人"つまり"武士"のようにお前を切り裂いてく"待" "拡大" "危ない" "ライ"ム吐き"出し"てくだけ"サグライフ"では"ない"が俺はナチュ"ラルハイ"バッチリ 今日も"危ない" ここで領土"拡大"

ミメイ:俺もハナから"フルスロットル" 頭の良さ まるで"文武両道"日本統一を掲げるならば お前の街まで広げる"分布領土"

裂固:俺は東海だけど"地方の狂犬"そして俺は"素人同然"じゃなく"日本の頂点"を取ったんだよ 分かるか お前とは違う 戦極で優勝したぐらいで図に乗んな

ミメイ:「戦極優勝したぐらいで調子乗んな」ってワードは戦極優勝してから言ってみろよ/俺もテンション ボルテージなら"最高潮" 都取り戻すぞ "クソ大東京"

 ぱっと見でわかる、圧倒的なライムの数。もちろん、裂固の方が引用したラインの数が多いため当然なのだが、それでも引用符("…")をつけた部分はすべてライムを踏んでいるし、もしかすると筆者が追い漏れている箇所すらあるかもしれない。プロスポーツ選手がボールをドリブルする際に手元や足元を一切見ないのと同じく、フリースタイルラップのひとつの極地は、大前提として相手と会話、そしてアンサーをし、ユーモアを織り交ぜながら、ライムを畳み掛けるというもの。話の流れを無視する形で、お気に入りのライムを置きにいくことでは決してない。その点において、この日の裂固は最強だった。

 バトルの模様を雑感として振り返ると、裂固の〈俺はこのマイク持ってここで傍若無人〉のラインでは、あの呂布カルマがブチ上がり、思わず立ち上がって両手で拍手し賞賛を贈っていたのが印象的だった。かつて『フリースタイルダンジョン』で共に2代目モンスターを務めた者同士。そんな呂布カルマに"デカくなったな……"と思わせるような師弟関係すら、勝手ながら垣間見えてしまう。

 また〈日本の頂点を取ったんだよ〉と『KING OF KINGS 2022』での優勝経験に触れた部分は、このバトルで観客が最も沸いたシーン。ミメイより上の実績を示した点で、"それを言ってしまったら感"を筆者は少なからず感じてはしまったのも事実だが、そのあたりのボースティングを挿入するタイミング選びからもバトル巧者ぶりを感じられた(し、楓も呂布カルマも思わずぴょんぴょん跳びはねてしまっていた。バネ感がすごい)。

 裂固本人も〈FORKさんの背中を見てきた あの人すら超えてやる〉と大きく掲げていたが、全体的に40代中盤のような風格やオーラを漂わせた今回の一戦。このあたりの戦い方の心得や賢さにも、FORKから掴んだエッセンスを感じるし、後述するFuma no KTR戦で放ったラインは、もはやFORKの領域に近いなにかを感じられた。

 少し話を変えて、フリースタイルラッパーをよく、"ほのおタイプ"や"あくタイプ"など、さまざまなタイプ別に分類する構図をよく見るが、かつてノーマルタイプを謳われた裂固が、いまやかくとうタイプのようにライムを連打。ミメイも負けじと、裂固が放った言葉を即座に拾ってすぐさまアンサーしつつ、"分布領土"など、番組テーマになぞらえたラインを披露するなど、弱かったわけではさらさらない。裂固自身もバトル後、今回の勝因について、ミメイを相手に「まったく余談していなかったこと」と振り返ったのがその証拠。

 とはいえ、最後に〈クソ大東京〉と締めた点にありきたりさ、というより、もはや攻撃できるような隙が見つからなかったことが伺えたほか、最後に苦しい表情を見せていたあたりからも、審査員の判定を見ずして、すでに勝敗が決している様子が伝わってきた。結果は、5-0で裂固の勝利。

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