AI搭載モニターは「ハードウェアチート」と物議 “快適なゲームプレイ”との境界線を考える

加速する競技タイトルの“Pay to Win化”。道具が大勢に影響しやすいことの是非は

 「より良い環境を構築したい」。そのような想いを抱くPCゲーマーは少なくない。そのいくらかは競技タイトルを快適にプレイするために、自分好みのパーツやガジェットを買い揃えているはずだ。この「快適」という言葉は「有利に戦える」とニアリーイコールである。つまり、それらを選ぶひとつの基準が、先に述べたような「高性能であること」というわけだ。

 その前提に立つと、競技タイトルの分野は“Pay to Win化”しているとも言える。Pay to Winとは、より多くの資金を投入した人間が勝利を手に入れやすいという構造を指す言葉だ。ゲームカルチャーにおいては、基本プレイ無料・アイテム課金型のタイトルに対して使われやすい。知識・技術・プレイ時間などを重んじてきた従来のモデルとは対極にある概念であることから、そうした性質を蔑む意図でも使われることがある。

 当然だが、性能の良い製品は比例して価格も高くなりやすい。「快適にプレイする(≒有利に戦う)」ためには「高いパーツ、ガジェットを買う必要がある」という傾向が強まってきているのが、シーンの現状だ。AIを搭載した高機能モニターの登場は、そうした時流を示す一端とも考えられるのではないだろうか。

 『MEG 321URX QD-OLED』について、MSIはまだ価格を明らかにしていないが、AIという新たな機能を搭載していることを考慮すると、従来の同等の製品よりさらに高価格となることが予想される。もしこのような製品の使用が認められるeスポーツシーンとなっていけば、新規参入は難しくなっていくと言わざるを得ない。同分野の発展において重要な役割を担う人気タイトルの運営には、そうした点も踏まえた冷静な対処・判断を期待したい。

 “道具“の良し悪しが勝利に深く関わるようなeスポーツであっては、さらに逆風は強まっていくに違いない。スポーツであると主張するのであれば、バットやグローブ、ボール、ユニフォームの質で大勢が決しない分野である必要があると、私は考えている。

画像=Unsplashより

GoogleとOpenAIの争いは激化必至か 2024年注目の生成AIトレンド4項目

2023年は生成AIが飛躍的に普及した年であり、特にOpenAIの「ChatGPT」が市場をけん引する形で広まりを見せた。本稿で…

関連記事