着実な成長を遂げるメタバース産業との交錯 有識者が予測する“2024年のバーチャルシーン”

有識者たちが考える、2024年のVTuber業界・XR業界

――最後に、ざっくりとしたものでもかまいません。みなさんによる来年以降の業界予測を伺いたいです。2024年のVTuber業界・XR業界はどのようになっていくと思いますか?

たまごまご:ここまで話してきたように、今年は「VTuber」という存在がポップカルチャー化して、いろんな境界線がなくなったと思うんです。でも、同時に今後も『Live2D』を中心にストリーマー、配信者として頑張るVTuberの方々は、そちらの技術がどんどん磨かれていくと思います。

 3Dでやっていきたい方々は、3Dモデルを作るのもフルトラ(フルボディトラッキング)を運用するのも比較的簡単になってきているので、そちらを活用していくようになると思いますし、2D中心・3D中心の二手に別れていくと思います。ゲームや雑談を中心にしたストリーマータイプと、VRを活用して歌やダンスなどの自己表現をしていく人という風になっていくんだろうなと。

 その中でいえば、ダンス系VTuberは今まで伸びるのが難しかったジャンルでしたが、来年は伸びてほしいと個人的に思っていて。『VRChat』にいるダンスで伸びたい人たちも、ハードウェア面の制約で苦しい状態が続いていたので、ブレイクしたらいいなと思っています。

くさの:大枠は自分もたまごまごさんと一緒で、『VRChat』のパフォーマーと、ゲームや雑談のストリーマーとが、それぞれの道で日の目を浴びていくだろうと考えています。個人勢の方々もどんどんフックアップされていくだろうと思っていますね。

 ただ、「VTuberである必要性があるのか」という存在意義の話が広がっていく可能性もあるのかなと思います。

 配信をやるのであれば、あるいはパフォーマンスをするのであれば、バーチャル空間で活動しなくてもいいのではと考える人も増えると思うんです。そういうところとどう向き合うべきなのかというのは感じています。

 まさに前編で話したようなリアルとバーチャルの在り方や境界線について、VTuber当人だけではなくファンの中でも考えることを迫られるタイミングが来るんじゃないかな。

――リアルのタレントの方々がバーチャルに行くことを自然に受け入れられるけれど、リアルにくる人たちを果たして受け入れられるか、という問題ですね。これはたしかに、行き先が違うだけなのに、まったく別物に感じられますよね。

くさの:もちろん、奏みみさんのようにバーチャル/リアルの二刀流で活動していく方は今後も増えていくと思いますし、それが広がることも全然ありうる。けど、それが嫌だと感じるファンもきっと中にはいて、そこはすごく難しいなと思いますね。

浅田:たしかに、「バーチャルである必要があるのか」という自問によって辞める人が増えるかもしれないというのは、業界全体を見たら寂しいことではありますね。

 ただ、一個人の選択としては決して悪いことじゃないと思うんです。その人が今やりたいことと照らし合わせて、進む道を変えるというのは、ポジティブな選択とも受け取れるのかなと。

 あと、僕は社会的成功より自己実現の方がVTuberの在り方として良いと思っているんです。もちろん社会的成功が自己実現という人もいると思うので、有名になることが悪いことだとは言わないですけど、VTuberがそれだけに留まる存在じゃないというのは、それこそ宇推くりあさんが証明していて、そういう在り方があってもいいと自分は思ったんですよね。

 VTuberって、「Tuber」って単語が入ってる以上「YouTuberに付随したタレント性」みたいなイメージがどうしても言葉としてあると思うんですが、そういったタレント的な活動だけでなく、社会に溶け込んで活躍できる存在になってくれたらいいなと思っています。だから、将来的に「VTuber」という言葉が“融けて”なくなってもいいと思うんですよね。

くさの:すごくわかります。僕もそう思ってます。

浅田:同時に、ここにいる方はその方向性で一致してるような気がするんですけど、それを嫌がる人もいるんじゃないかと思います。でも、本当に「バーチャル」という在り方で幸せになろうとするなら、言葉の枷を外すフェーズに入った方がいいのかなと。もっといろんな形になっていいし、その過程でリアルの姿で活動をすることが選択肢に入ってきても、それはそれでひとつの在り方なんだと思います。

くさの:言葉のお話でいうと、そもそもYouTuberやVTuber/バーチャルYouTuberって、「YouTube」というプラットフォームの名前を軸にしているじゃないですか。でもありえない話ではあるんですが、YouTubeがもしもなくなったら、どう名乗るんだろうと考えることがあって。サイトがなくなったら言いようがなくなってしまうとか、他のサイトに行ったらどう言われるんだとかを考えてしまうんですね。

 もっと言ってしまうと、「バーチャル」という言葉もそうで、今は世の中にそれで伝わっているからそれでいいと思うんですけど、来年以降「バーチャル」という言葉すら足かせになりそうだなと思っているんです。

 「リアルの人と何が違うんですか?」と言われたときに、実はそんなに違いがないとか、バーチャルな姿になってることだけが違いとして残っているだけだと、やっぱり自分の「バーチャルYouTuber」としての在り方や生き方を自問せざるを得なくなると思うんです。

浅田:外部からのVTuber定義論とかではなく、自分にとっての「バーチャルとは何か」というのは、どこかで考えないといけない段階に入っていくんでしょうね。

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