芸能人とインフルエンサーの境目はさらに縮まる? BitStar渡邉拓代表に聞く“動画市場の未来”
「1億総クリエイター時代」に訪れる変化
ーーヒットの理由がわかった気がします。今年もYouTube、TikTokでいろんな変化がありましたが、2024年以降はどのような変化を辿っていくと思われますか?
渡邉:現在は100人に1人がYouTubeに投稿したことがある、4人に1人がショート動画を投稿したことがあるというような時代になっていきています。2024年に限らずもっと先の未来でいうと、この10年は「1億総クリエイター時代」ということで編集技術も上がっていきますし、グラスをかければ動画が配信されているような、意識せずともクリエイターになっていく時代になっていくのではないかと考えています。
つまり、年々クリエイターが増えていくため、一人一人はロングテール化するし、自然とクリエイターや視聴者は多様化すると考えています。そのためニッチでも自分らしさを表現し、規模は小さくても支持されるような細分化されたクリエイターはさらに増えていくと考えています。
ーーYouTubeでもどんどんショート動画がヒットコンテンツになっていくのでしょうか。
渡邉:今後はショート動画からヒットコンテンツが生まれるのが王道のステップになっていきます。ノンバーバルのショート動画も増えていくと思いますし、長尺動画は1再生あたりの再生時間が長くなっているので、既存ファン向けのコンテンツという意味合いが強く、より二極化が進むとみています。
さらに2024年以降は、クリエイターが起業するというのもトレンドになると予想しています。先ほどの話につながりますが、クリエイターが増え、一人当たりのインプレッションが下がると、それだけでは食べていけないケースも出てくる。プラットフォーム以外でなにかやりたい、LTV(※)を高めたいという観点でいうと、目線が事業に向いていきます。少し前だとアパレルやコスメが多かったですが、海外だとすでにMrBeastが「MrBeast Burger」という飲食事業を手がけています。今後はアパレル、美容以外にも、食やスクール事業などいろんなカテゴリで、クリエイターがプロデューサーや起業家という役割を担っていくっていう流れが出てきそうです。
(※)LTV:「顧客生涯価値(Life Time Value)」の略称。ある顧客が自社の利用を開始してから終了するまでの期間に、その顧客からどれだけの利益を得ることができるのかを表す指標。
ーーたしかに飲食事業にチャレンジされる方も少しずつ増えてきていますね。
渡邉:昔は好きでYouTubeをやっていて、そこで稼げたらいいなみたいな形だったのが、市場や環境が変化していくなかで、クリエイターたちの将来に対する不安感が、起業に拍車をかけているような気がしています。彼らも自ら事業をやっていく、私たちもそこをサポートできるような形になっていきたいなと思っています。
もうひとつは、芸能人とインフルエンサーの境目がさらに縮まると予想しています。これまで芸能人の方がYouTubeに参入するケースはよくありましたが、ソーシャルで活躍している人が芸能界に出ていく機会が加速するとみています。少し前だと芸能界とソーシャルの分断は激しかったですが、いよいよこの境界線はなくなっていくでしょう。
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