「バーチャルな在り方」のポップカルチャー化が進む 有識者が振り返る“2023年のバーチャル”
2023年の企業VTuberはどうだった?
――企業VTuberに話題を移しましょうか。ことし、みなさんの印象に残ったグループ・企業はどのあたりでしょう?
たまごまご:にじさんじ、ホロライブ、ぶいすぽっ!、ななしいんく、Neo-Porte……あとはあおぎり高校もかな。
くさの:たまごまごさんの挙げてくれたところにくわえると、のりプロもですかね。視聴者の数やライバーそれぞれの登録者でみれば、にじさんじとホロライブが2強で頭ひとつ抜けてるというのはごもっともなんですけど、視点を変えて企業IPとしてみてみると、他の事務所も相応に強いんですよね。
たとえばぶいすぽっ!はパソコンとかPCゲーム、とくにFPS関係のイベントによく出てPRをしていましたし、ななしいんくは今年の序盤こそ統廃合などでバタついた時期もありましたけど、在籍タレントによるライブもしっかりとおこなっていて、企業とのコラボも多いイメージです。家の近くにファミリーマートがあるんですけど、ほぼ毎日ななしいんくのタレントさんが何かの告知をしているんですよ。
浅田:やってますね。僕もこの前、ファミマで宗谷いちかさんが告知しているのを聞きました。
Brave groupも大きな動きを見せていますよね。、最近Brave groupの子会社・ENILISから発表された「Vlash」という事務所の1期生として星宮ちょこというタレントがデビューしていて、彼女はなどはまさにさきほど話に挙がった「バーチャルとリアルの垣根がなくなりつつある」という流れも汲んでいますね。
星宮さんはもともと同じ名義のコスプレイヤーとして活動していて、その人が普通にLive2Dのアバターをお披露目してVTuberを始めたり、なんならそのVTuberと全く同じルックスのコスプレ姿も公開したりしているんですよね。Brave groupはそれだけでなく、海外展開用の新規事務所も立ち上げている。“にじホロ2強時代”みたいに言われがちないま、そこに対抗しうる巨大な連合軍になってるんじゃないかなと思います。
くさの:ここまで名前の挙がった企業・事務所がしのぎを削っている状態ですけど、そういった競争があるからこそ「自分たちも頑張ろう」「やってみよう」という企業やプロジェクトが続々と出てきている気もしますね。
VTuberシーンは大手の芸能事務所も苦戦しているわけですが、「VTuberってこういう風にやればいいんじゃないか」とリスナーとして長い間みていた人たちが新しく企業やプロジェクトを立ち上げるパターンもみうけられて、VTuberのリスナーの層ってすごく層が深くなったんだなと思います。
浅田:なるほど。草野さんの見立てでは、ビジネスというよりかは、ファンカルチャーが極まった結果起業しちゃう、みたいな感じなんですかね。そういう視点でみると、純粋に「人気者」を作るのが芸能事務所の得意分野だとすると、この6社はやりたいことがより鮮明な気もしますね。
なかでもぶいすぽっ!などはその傾向が顕著で、eスポーツ業界を盛り上げるべくバーチャルタレントならぬ“バーチャルプレイヤー”を生み出していこうという軸がしっかりしている。だからこそ、かなりセンシティブでややこしい領域を突っ走れたんだろうなと思います。
たまごまご:VTuberシーン特有のメソッドでいえば、にじホロが面白がられたところって、プロフェッショナルなタレントは品行方正で正しくなければいけないというのからはみ出して、すごく一般人的な愚痴が出てきたりヘラったりする姿をメン限で見られたり、今までのタレント業界のルールにそぐわないハチャメチャさ、配信業界の味が混ざってるところなのかなと思うんです。そして、その辺のバランス感覚やいわゆる「ライン」の引き方をわかっている先達タレントがにじさんじ、ホロライブ、ぶいすぽっ!は育ってきていますよね。ここからは駄目、逆にここまでは攻めてエンタメを作っていこう、みたいなさじ加減もわかってきてて、うまい具合にアクセルを踏んでる感じがしますね。
くさの:その経験値の差ってめちゃくちゃ大きいですよね。演者もそうだし、それを支えているスタッフの経験値にも差があるでしょうし。
浅田:涙の数だけ強くなってるんですかね。
たまごまご:まさに。たとえば葛葉さんなどは本当に上手にラインを引いてますよね。昔はもう少し荒々しくて、ヒヤッとするシーンも多かったように思いますが、今はその荒々しさを残しつつ優しさも見せてくれるようになっていて、そりゃあ人気が出るわけだなと。
くさの:ハチャメチャなキャラクターの赤見かるびさんを、逆にあしらう葛葉さんの姿が見れるなんて、数年前は思わなかったですからね。