アーケード音楽ゲーム史に残る“夢の饗宴” 『AMUSEMENT MUSIC FES 2023』の衝撃

ミュージシャンを介した繋がり

 また公式なメーカー間コラボレーションのみならず、インハウスアーティストの独立を介した音楽面での間接的な繋がりも、音楽ゲーム楽曲史の観点からは無視できるものではない。

 真っ先に言及されるべき事例は、ナムコで『F/A』(1992年)や『リッジレーサー』(1993年)などを手掛け、ハードコアテクノをゲーム音楽に導入した第一人者とされる細江慎治(sampling masters MEGA)が、独立後にコナミの『beatmania IIDX 5th style』(2001年)に提供した「tablets」「outer wall」だろう。

 その後、細江はアリカの音楽ゲーム『テクニクティクス』(2001年)に書いた「Roteen Da Moon」の明確な直系作にあたるロッテルダムテクノ「rottel-da-sun」を、コナミ『beatmania IIDX 6th style』(2002年)に書き下ろし。古巣のナムコへも『太鼓の達人12』(2009年)のリリースに際して系列作「Rotter Tarmination」を制作しており、複数メーカーの音楽ゲームタイトルにわたってシリーズ楽曲を展開する手法の草分けでもある。

 ほかにもメーカーに所属したのち独立、他社の音楽ゲームに楽曲を書き下ろすことで非公式に会社間の繋がりを実現したミュージシャンは、佐野信義、遠山明孝、佐宗綾子、井上拓、長沼英樹、前田尚紀、清水達也はじめ枚挙にいとまがない。

歴史的機会となるAMUSEMENT MUSIC FES 2023

 近代アーケード音楽ゲーム文化がその産声を上げてからおよそ四半世紀。メーカー間の散発的なコラボレーションは、以上のように公式・非公式を問わず、さまざまな形態で展開されてきた。

 それでもなお、音楽ゲームメーカーに所属する現役ミュージシャンたちが垣根を越えて共演を果たす今回のライブイベントが、前例のない歴史的機会であることはまったく論をまたない。

 音楽ゲームという類まれなる一大文化が培ってきた、その肝であり髄である「音楽」の、歴史と最先端が結集する舞台。視聴者の一人ひとりが歴史の証人となる、絢爛にして衝撃のライブイベント。

 音楽ゲームの「音楽」に特別な思いを抱くすべてのプレイヤー・リスナーは、この貴重なステージを見逃してはならない。

 AMUSEMENT MUSIC FES 2023は11月25日11:50~16:00、東京ビッグサイト内の特設ステージで開催される。現地観覧席での参加には、イベント観覧チケットに加え、「アミューズメント エキスポ」入場チケットの購入も必要。

 イベント観覧チケットは11月16日時点で予定販売数を終了しているが、オンライン視聴が可能な配信チケットは購入可能。アーカイブでの視聴も12月2日まで予定されている。

© JAIA | 一般社団法人日本アミューズメント産業協会
© Konami Amusement

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