『マリオワンダー』に集まる高評価 面白さの源泉は「ゲームの本質」と「新しさ」の融合に?

『マリオワンダー』に散りばめられたトレンドジャンルのエッセンス

スーパーマリオブラザーズ ワンダー CM ワンダー篇

 『マリオワンダー』のゲームデザインには、他ジャンルの良い部分を取り入れようとする姿勢もうかがえる。攻略順を固定化しないマップの構築、コース内でやられたときに都度マップまで画面を戻さない設計はその一例だ。

 前者について、『マリオワンダー』にはマップ上に開けたエリアがあり、そこではアナログにマリオを操作しながら、複数あるコースを好きな順で攻略できる。従来のシリーズ作品では、あらかじめ一本道に近い攻略ルートが用意されており、ときおり裏道を発見することで一部をスキップできるケースはあっても、基本的にはすべてのプレイヤーがほぼおなじ過程で最終目標へとたどりつくのが当たり前だった。自由な攻略体験は、ある意味で“オープンワールド的”とも言える。

 くわえ、今作には、「フラワー諸島」という各ワールドをつなぐ中間的な区域が存在する。プレイヤーは同エリアを経由することで、本来あるべき順番を意識せず、攻略に向かうことが可能だ。この点もまた、自由な体験を意識した設計だと言える。攻略順を固定化しないというアプローチは、現代のRPGからの影響を色濃く感じさせた。

 また、後者について、『マリオワンダー』では、(こちらも従来のシリーズ作品で当たり前だった)やられるたびにマップまで一度戻される仕様を撤廃している。過去作品を遊んだことがあるプレイヤーのなかには、難しいコースを前に、何度もコースからマップ、マップからコースという工程を経由させられ、モヤッとした人も少なくないのではないか。今作では、そのままコースのスタート地点(もしくはチェックポイント)に戻り、次のプレイが始まるため、サクサクと遊ぶことができる。

 先に述べた攻略順を固定化しないアプローチがRPGからの影響とするならば、こちらはローグライクからの影響と言えるだろう。近年のゲームカルチャーを振り返ると、このような繰り返しのプレイにストレスを感じさせない仕様によって中毒性を演出し、ヒットするタイトルがいくつかあった。この点もまた、他ジャンルにおいて昨今見出されつつある体験良化のエッセンスだ。そうしたトレンドを制作側が敏感に感じ取ることによって、『マリオワンダー』の上質なゲーム体験は支えられているのかもしれない。

 年齢・性別を問わず楽しめるゲームデザインで、多くのファンの想像を超えてきた『マリオワンダー』。シリーズの歴史にまた新たな1ページが刻まれた。

© Nintendo

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