『ストリートファイター6』トップランカーに“チート疑惑” 運営も「レートリセット」の一大騒動に思うこと

くすぶるオンライン大会での使用に対する懸念

 『ストリートファイター6』界隈をざわつかせた特定のプレイヤーのチート利用と運営の対応。しかし、この問題の根深い部分は、「チートが使われ、罰則が与えられた」という事実以外にある。紹介した2人を含む複数のトッププレイヤーの彗眼をもってしても、「チートである」と断定はできなかった点だ。

 今回、当該プレイヤーが「怪しい」「チートである可能性が高い」と判断された裏には、彼の過去数戦の動きを検証するという過程があった。つまり、調査の対象となるようなリプレイが存在していれば、それと思しきものを「おそらくチートであろう」と分類することはできる(それでも「絶対」とは言い切れない)が、1戦のみなど、ごく少数のサンプルでは、疑惑が向けられることも、その確度が増すことも起こらなかった可能性があるのだ。

 マゴ氏は自身が投稿した検証動画のなかで、チーター(チートを使用するプレイヤー)がオンライン大会に出場した場合への懸念を見せていた。上位層なら対戦した感覚から疑いを持つことができるが、自分の操作で手一杯となってしまいやすい下位層では、疑うこともできないまま試合に負けてしまうケースも考えられるためだ。オフライン大会であれば、大会独自の環境で対戦することになるため、チートは使用できない。しかし、それぞれの環境から参戦するオンライン大会では、プレイヤーの意識次第で簡単に持ち込めてしまう。

 もちろんチートの使用が判明した時点で、当該プレイヤーの大会での結果はなかったことになる。しかし、その発覚がある程度スケジュールが進行したあとだったら、敗れたプレイヤーへの対応は極めて難しくなるだろう。その先にあるのは、不完全燃焼からくる参加者の大きな落胆と、大会の権威の失墜だ。そのような状況が長く続くようであれば、タイトルやシリーズそのものからプレイヤーが離れてしまう未来も考えうる。

 ゲーミング環境としてのPCプラットフォームの台頭によって、あらゆる協力・対戦ゲームにとって喫緊の課題となりつつあるチート対策。今後はAIの発達という向かい風が吹くことも想定される。業界はどのようにして、この問題と向き合っていくのか。いま、各プレイヤーの規範意識が試されている。

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