「メドレーの一曲目は3秒まで」 TikTokでバズるメドレーを生み出し続ける風歌が実践する“ユーザーを繋ぎ止める妙”

メドレーの一曲目は3秒で終わらせる ユーザーを繋ぎ止める妙

ーーなるほど。さて、そんな風歌さんのことをTikTokで知った方も多いかと思います。まずはTikTokとの出会いを教えていただけますか?

風歌:知り合いの方から「最近面白いアプリあるよ」と言われたのがきっかけです。名前は聞いたことがあったんですけど、当時はまだ周りで誰もやってなかったので、どういう感じか様子を見てみようと思ってたんですけど、「やってみなよ」と言われたので始めました。

ーーそれはDJ活動をしてたころですか?

風歌:DJをしてた時期の最後の1年くらいのところから始まってます。

ーー最初はどんな投稿を?

風歌:そのころからずっと、いまやっているようなメドレーを作っていました。もともとTikTokをやる前はTwitterをやってたんですけど、Twitterでマッシュアップがバズってたので、「これはTikTokでもいけるんじゃないか」と思ったんです。

ーーまさにそのマッシュアップメドレーが人気ですが、どのように作っていくのでしょうか?

風歌:5段階くらいあって、まずはテーマを決めます。たとえば、夏の曲メドレーだとしたら、自分が知ってる夏の曲の引き出しの中から選びます。あとは流行の曲、逆にみんながあんまり知らない曲、繋ぐ時に歌詞でうまくハマりそうな曲、そういうことを考慮したうえで選曲して、その次に繋ぎ方を考えて、最後に録音です。

ーーメドレー作りで何か心掛けていることはありますか?

風歌:みんなが見て面白いかどうかは、めちゃくちゃ気にします。あと大事なのは尺感です。長すぎず、短すぎないちょうどいい長さの投稿を心掛けてます。一番ベストな長さは大体一本15秒からMAXでも60秒。一本の投稿あたりに8曲から多くても12曲くらいまでをぎゅっとひとつにまとめてます。

ーー風歌さんのメドレーは、曲がどんどん移り変わっていくあのテンポ感が気持ちいいんですよね。

風歌:ありがとうございます。TikTokって最初の3秒が大事で、1曲目でそれ以上の尺を取ってしまうとスワイプして次のオススメに行ってしまうユーザーさんが多いんです。でもそのあいだに次の曲が始まったら、もうちょっと長く見てくれるかもしれないじゃないですか。なので、そこからの“延長”をもらうために、1曲目は3秒以内に収めるようにしてます。

ーー3秒ですか……すごい世界ですね。その最初の数秒でいかにユーザーを繋ぎ止められるかが重要だと。

風歌:そうです。それはめっちゃ気にしてます。あとは最後ですね。「あれ、もう終わっちゃうの?」とは思わせないように、切りの良いフレーズで締め括るようにしてます。最後に一番いいフレーズでサクッと終えて「ちゃんと終わるよ」「ここで完結するよ」というような曲で締めてます。

ーーそうやってしっかり着地させるのは、ほかの投稿を見てもらうためですか?

風歌:かもしれないです。割といろんな試行錯誤はしたんですけど、歯切れが悪いとどうしてもふわっとしちゃって、自分的に気に入らなかったっていうのもあるんですよ。あと、私がやってるメドレーで一番人気のコンテンツが「TikTokで流行ってる曲メドレー」なんですけど、それがいまではPart.70まであるんです。なので、次の投稿を見てもらうためにも、毎回ちゃんと完結して、シリーズとして次に繋げていくという意味合いもあります。

ーー繋ぎ方ではどんなことを考えてますか?

@p_p_pukka

【Part.2】優里メドレー作ってみた!#優里 #優里メドレー #ピーターパン #うぉ #ベテルギス #レオ #シャッター

♬ Part.2 優里メドレー - PUKKA (ぷっか)

風歌:たとえば「優里メドレーPart.2」で“にっちもさっちも繋ぎ”をしたんですけど、そうやってメドレーを作る時に、別々の曲で同じ歌詞が出てくる時があったら、自然に繋がるようにしてます。

ーーたしかに見ていると気づかないうちに次の曲に変わってることが多い気がします。

風歌:そうやってなるべく違和感がない繋ぎ方を意識してるんです。

ーーTikTokで活動するようになってから何か変化はありましたか?

風歌:あります。TikTokを始めたころはそんなにバズるとも思ってなかったし、趣味の範囲でやってたんですけど、ありがたいことにバズることになってコメントがたくさん来るようになって、多い時で2,000件くらい来るんです。コメントは必ず全部目を通すようにしてて、なるべく返信もするようにしてます。そのなかでも、投稿について良くなかったところとか、今後の投稿に参考になりそうな意見は、全部次に生かそうと思ってます。そういうふうに、ちゃんと人の意見を聞けるようになりました。コメントのおかげで成長できた気がします。

ーー相手の評価をフィードバックしていると。それはシンガーソングライターの活動ではできてなかったことですか?

風歌:できなかったですね。音楽家あるあるだと思うんですけど、我が強くて「これが歌いたいんだ!」って自分の世界に固執してしまう部分もあって。そういうアーティストはたぶん多いと思うし、私もそうだったんです。でもやっぱりそれでは自分の殻に閉じ籠もってしまうだけ。コメント欄には正直、私の好みではない曲のリクエストも来るんです。でも、最初は「それは選びたくないな」と思っても、一度選んでみることによって「意外といいな」と気づくことがあります。「このアーティスト意外といいな」とか「歌詞が意外といいな」と知ることができて、自分の幅も広がっていきました。

ーーそのスタンスは、フロアを見て反応をチェックしながら選曲するDJと通じるところがありますね。

風歌:そうです。新人のころに先輩から「ちゃんとお客さん見てる? お前の曲で誰も踊ってへんで」ってめちゃくちゃ怒られましたから。やっぱり自分の好きな曲をかけるんじゃなくて、シチュエーションにあった曲をかける。TikTokも自分の好きな曲を歌うんじゃなくて、人が聴きたい曲を歌う。それを通して自分を知ってもらうことの大切さを常々考えています。

ーー風歌さんは企業のTikTok広告用の楽曲制作もしてますが、その際にはどんなことを意識してますか?

風歌:キャッチーであることですね。あとはクライアントさんがどういうことを伝えたいか、商品の内容を箇条書きでいただいて、それを自分なりに咀嚼して、聴き取りやすいワードに変換してみたり、なるべく聴いてくれた人に「おっ」と思ってもらえるような言葉選びを気をつけてます。

ーー楽曲提供にはこれまでの活動が生きている面はありますか?

風歌:意外とそうでもないかもしれないです。楽曲提供は私にとって新しい挑戦でした。今までは自分の好きなことや自分の思いを自由自在に表現できます。でも楽曲提供は人の伝えたいことを自分のフィルターを通して作るんです。それは新鮮で面白いですし、やりがいしかないですね。

ーーそして今年、風歌さんはTibby名義でMottyさんとユニット・オトクロを結成しました。ユニット結成の理由を教えていただけますか?

風歌:もともとMottyは私の音楽的なマネジメントの部分をずっと担当してくれてて、彼はトラックメイクができる人なので、「一緒にやってみない?」と話したことがあり、それがきっかけですね。

ーーいろいろと活動しているのに加えてユニット活動となると大変ではないですか?

風歌:むしろありがたいです。私はオトクロでは作詞作曲を担当しますけど、それ以外の部分はMottyがやってくれてるので、あまり負担に感じたことはないです。もともとオトクロはコンセプトがはっきりと決まっていて、どういう時に聴きたい曲かを最初にちゃんと決めてから作るので、自分の思いとか日常を曲にするソロ活動とは別ですね。

ーー新曲「ホワラビOL」ではどんなことを表現しましたか?

風歌:この曲は20代後半の女の子の歌です。仕事が板についてきて、オフィスも見慣れたし、「窮屈なパンプスこっそり脱いじゃえ!」みたいな、そういうOLを歌ってます。女の子って天邪鬼なところがあると思うので、朝早く起きれないけど素っぴんでは出社したくないし、太陽の暖かい光は好きだけど日焼けは絶対したくないし、「もう嫌だな!」みたいな感じを歌ってます。

ーー歌詞には〈なんか湿っぽい空気でも/吹き飛ばしてくon my way〉と、自分で道を切り開いていこうという力強い意志を感じます。

風歌:「嫌だな」とそのまま書くとガティブになってしまうので、「嫌だけど頑張ろうね」「日差し浴びてこうね」とポジティブに歌ってます。

ーーその一方で、サビの〈いつでも運が私を呼ぶの〉といったある種、流れに身を任せるようなフレーズも印象的です。

風歌:運と言うと天に任せてるようなイメージがありますけど、日常の自分の行動とか言動は巡り巡って未来に繋がっていくものだと思ってて、それが運だと思ってるんです。だから言霊って意外とあると思ってて。「こうやってやりたい」「こうなりたい」と言っていたら、その瞬間はどうにもならなくても、何年後かに叶ったりすることがあると思います。そういうことをみんなにも思ってほしいなと思って歌詞に書きました。

ーーそれは自身の経験に基づくものですか?

風歌:学生時代に、何年後にどうなりたいかをメモしてたことがあったんです。そのうちのひとつに「SNSで公式マークがつくアーティストになりたい」というのがあって、よく考えてみたらいまはちゃんとついたし、「街中で自分の曲を聴いてみたい」という夢も、お仕事を通してそういう機会をいただけたりもしたんです。なので、そのときにはどうにもなってないけど、5年後10年後、長い目で見たら叶ってることってたくさんあります。

ーー最後に風歌さんがなりたい将来のアーティスト像を教えてください。

風歌:歌やダンス、DJ、楽曲提供とか、いろんな活動をしているので、音楽のマルチクリエイターとして、幅広い活動ができる器用な人間、かつアーティストでいたいと思ってます。今後もそのスタイルを貫いて、限界を決めずにいろんなことに挑戦していきたいです。

■風歌
TikTok:@p_p_pukka
Instagram:@p_p_pukka
X:@p_p_pukka

TikTokで「ドレミの歌」なぜ流行? 潮流やはじめしゃちょーらの動画から分析

昔懐かしい「ドレミの歌」が最近、形を変えて再ブームしていることをご存知だろうか?「ドレミの歌」は「ドはドーナツのド〜♪」という風…

関連記事