Threadsの現状と、仕組み上避けられないSNSの“ヘビーユーザー離れ”を考える

 Meta社のSNSサービス『Threads』のiOSアプリが日々アップデートを続けている。「アクティビティ」のタブに「フォロワー」という項目が追加されたり、翻訳機能が実装されたりと便利な機能が増えているほか、直近では「フォローユーザーのフィードのみを時系列順で表示する『フォロー中』タブ」が追加された。今後のアップデートでさらに機能が拡充されることは確実だが、SNSというサービスがこれまで発展してきた方法とその収益構造を考えると、こうしたアップデートがユーザファーストで続くのかはわからない。

 

 Threadsにはいくつかの「Twitterで出来て、Threadsでは出来ないこと」があるものの、現状の使い心地はTwitterよりもずっと良好だと感じる。サービス開始直後で広告表示は無く、アプリケーションもシンプルで見やすい。過度に人を煽る投稿も少なく、スパムでダイレクトメッセージ欄が埋もれるようなこともない。

 現状「Twitterで出来て、Threadsでは出来ないこと」について言及すると、たとえばThreadsでは“エゴサ(自身に関連することを検索すること)”が出来ない。これは企業の広報担当者や、タレント、インフルエンサーなどにとってはクリティカルな問題で、ThreadsのようなテキストSNSにおいては検索機能の拡充は必須だろう。

 

 Threadsの登録者はすでに1億人を超えており、引き続きユーザーが増えていけば、比例して検索機能の価値も高まる。以前も書いたが、SNSのリアルタイム検索機能はとくに災害時など、時事性の高い事象を把握する際にとても有用で、この特性はアクティブユーザーが多ければ多いほど発揮されるからだ。

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 現状の『Threads』にはこうした「ユーザの求める機能」を順次拡充していく姿勢が見られる。たとえば直近で実装された「フォローユーザーのフィードのみを時系列順で表示する機能」はかねてよりTwitterのユーザーが求めていた機能である。これまでのThreadsでは、フォローしている人の投稿も、していない人の投稿も並列に表示されてしまい、「フォローする」という行動にあまり意味がなかったのだが、ようやく「フォロー」という機能が有効になったといえる。

 しかし、こうしたユーザーファーストの実装がこれからも続くのか、つまりMetaは今後もユーザーの求めるアップデートを続けてくれるのか、という点には、筆者は懐疑的だ。というのも、Meta社は自社のSNSサービスにおいて、「ユーザーに最適な投稿を表示するアルゴリズム」の実装を推進し続けている企業であるからだ。

 Facebookは「面白いコンテンツ」「ためになるコンテンツ」を優先して上位に表示する、SNSにおけるアルゴリズム運用の先駆け的な存在である。Instagramも2016年から投稿の表示順をアルゴリズムに委ねている。これを踏まえて現在のThreadsの「おすすめ」フィードを見てみると、「おすすめのアカウント」とフォローユーザーの投稿が混在しており、さらに投稿時間もバラバラだ。

「おすすめ」タブ

 なぜ時系列ではなく、アルゴリズムが表示順を司るのか? 前述のとおり、Meta社がアルゴリズムによって目指しているのは「ユーザーが求めている最適な情報を的確に提供すること」だ。時系列でフィードを表示するよりもアルゴリズムが投稿を評価して表示するほうが、ユーザーが有益な情報を受け取れる率が高まるということであり、おそらくそれは事実だろう。そしてこの“有益な情報”には広告も含まれる。

 登録ユーザーを増やしてユーザーがアプリを起動・閲覧する時間を増やし、パーソナライズした広告を届けることがSNSというサービスの主なマネタイズ方法であり、フィードや投稿欄をアルゴリズムに準じて表示することは、ユーザーに広告を読ませるうえでも都合がいい。数人の友だちのみをフォローしているユーザーのフィード欄に広告を掲示したら、「友だちの投稿の中にいきなり広告が出てきた」ということになるが、デフォルトのフィード欄が「友人も他人も表示される、時系列もバラバラのシャッフルされたフィード欄」であるならば、広告を読むことにも違和感がなくなるだろう。

 念のために書くが、個人的にこの施策がそこまで悪いことだとも思わない。営利企業が無料提供しているSNSに広告が現れるのは当然のことだし、筆者自身も気になる製品をSNSで検索することもある、つまり「広告や宣伝を読むこと」がSNSを使う目的になっている部分もあるからだ。それに、まったく関心のない広告が出るよりは、身近な製品の広告が現れるほうがはるかにマシな体験だともいえる。

 こうした前提に立つと「時系列順」を求めるユーザーというのはSNSの利用ユーザーとしては少数派なのだろう。筆者は「時系列順」の表示を熱望するユーザーの1人であるが、これは「すべての投稿をできる限り見たいから」である。ただし実感として、たとえばTwitterでアクティブなユーザーを300人以上フォローすると投稿をすべて追うのはかなり大変だ。なので各社がSNSの投稿をアルゴリズムによって「ふるいにかける」ことにシフトしたのは理解できる。

 言ってしまえば筆者を含めたこうしたユーザーはSNSの運営企業にとってはあまり重要なユーザーではなく、「ヘビーユーザーなのにユーザーとして重要視されない」という奇妙な構図がある。実際、『Instagram』にも『Facebook』にも「時系列順でフォローユーザーのみを表示する機能」はあるものの、この表示にありつくためには数回の操作をする必要があり、毎回起動するたびにこうした操作をするのは煩わしい。同じように、『Threads』の「フォロー中」タブがいずれより深い階層に埋もれてしまうことも考えられる。

 今後『Threads』にも広告が導入されるのだろうが、たとえば広告の導入時に「広告の非表示・フォローユーザーのフィードのみを表示」といった機能を有料で実装してくれたらとても嬉しい。これならヘビーユーザーはお金を払い、ライトユーザーには「最適な情報」が表示されることで棲み分けができるだろう。Twitterは有料ユーザー制度の導入に完全に失敗した(もう、こう言ってしまっていいだろう)が、Threadsにはまだ健全な有料化の余地があるように思う。

 今後のアップデートも注視しつつ、進展があったらまた記事にしたい。

 

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