「本格アクションRPG」と銘打たれた『FF16』 アクション化を目指した15年の集大成に下される評価は?

 6月12日、『FINAL FANTASY XVI』(以下、『FF16』)の体験版が配信となった。

 日本を代表する人気RPGの最新作であるだけに、発表時から話題をほしいままにしてきた同タイトル。原点回帰の世界観・設定ばかりがピックアップされがちだが、シリーズがナンバリングを重ねるなかで目指してきたバトルシステムの進化も、注目しておきたいポイントだ。

 本稿では、歴史を踏まえつつ、“「ファイナルファンタジー」シリーズのアクションRPG化”について考える。

前作から約7年ぶりの最新作。テーマは“原点回帰”

FINAL FANTASY XVI “AWAKENING”

 『FF16』は、前作『FF15』から約7年ぶりとなる、「ファイナルファンタジー」シリーズのナンバリング最新作。終焉に向かう大地・ヴァリスゼアを舞台に、限りある加護を奪い合う国々の戦乱の物語が描かれており、「召喚獣」「クリスタル」といったキーワードには原点回帰のメッセージがうかがえる。

 同タイトルは2020年9月、PlayStation 5向けの注目作を紹介する配信番組「PLAYSTATION 5 SHOWCASE」のなかで、存在が明かされた。発表時のトレーラーでは、PCとのマルチプラットフォームとなることが予告されていたが、ローンチのタイミングでは、PlayStation 5専用となることが確定している。発売日は2023年6月22日。価格は、パッケージ版・ダウンロード版ともに9,900円(税込)となっており、これのほかに、ミニアートブックやミニサウンドトラック、インゲームアイテムを同梱したデラックスエディション(税込12,100円)と、上記にハイクオリティフィギュアやピンズコレクション、特製スチールブックケースなどを収めたコレクターズエディション(税込38,500円)も同時発売される。

“アクションRPG化”を目指して歩んだ15年。『FF16』はその集大成に?

 コマンドRPGとして歴史をスタートさせた「ファイナルファンタジー」は、直近の作品でゲーム性にアクションを取り入れる方向に舵を切っている。明確に変化が現れ始めたのは、2009年12月発売の第13作『FINAL FANTASY XIII』(以下、『FF13』)においてだ。同タイトルではシリーズ恒例のアクティブタイムバトルを発展させ、プレイヤーが入力するコマンドに反応する形で、ゲーム内のキャラクターたちがアクション性の高い攻撃を繰り出すバトルシステムが採用された。これはアクションRPGといった性質のものではなく、「操作に応じていわばデジタル的にキャラクターが反応する程度のもの」だったが、過去のコマンドバトルから脱却する意図が明確に感じられた仕組みだった。世間では『FF13』を“コマンド入力バトルを取り入れた最後の作品”とみる向きもあるが、それは言い換えれば、“アクションRPGへと転換する過渡期に生まれた作品”とも表現できる。

FINAL FANTASY XIII TGS2009 Trailer

 その後、シリーズはMMORPG作品の第14作『FINAL FANTASY XIV』のリリースを経て、2016年11月に『FF15』を発売する。同タイトルにおいて、バトルシステムは実質的なナンバリング前作『FF13』とは一線を画す、アナログ的・本質的なものへと変化。現段階では、この『FF15』が「ファイナルファンタジー」のアクション化の集大成とされている。今回発売される『FF16』はそこから地続きの作品。アクションRPGとしての進化は、いわば既定路線でもある。

 そうした状況を裏付けるように、『FF16』の制作には、プラチナゲームズや「キングダム ハーツ」シリーズのチームがクレジットされている。プラチナゲームズとは、アクションタイトルに定評のある国内のディベロッパーで「ベヨネッタ」シリーズなどの開発で知られている。スクウェア・エニックスとの協業では、『NieR:Automata』や『BABYLON'S FALL』をこれまでに発表。どちらもアクション性が一定の評価を獲得している。

 一方の「キングダム ハーツ」シリーズは、もはや言葉にするまでもない同社の人気アクションRPGだ。第1作が発売されたのは2002年と、「ファイナルファンタジー」のアクション化からかなり時を遡るが、当時はまだ覇権ジャンルと言い難かった同分野で、その後の地位へとつながる大きな足跡を残している。

【KINGDOM HEARTS III】Final Trailer

 その二者が参画する『FF16』は、原点回帰の世界観・設定ばかりが注目されがちだが、そのアクション性においても期待できる仕上がりとなっているのではないか。さる2023年6月12日には、リリースから10日ほど先行する形で体験版が配信された。実際にプレイしてみると、そうした触れ込みは伊達ではないと感じられるクオリティがそこにはあった。従来のシリーズファンやライトユーザーなどに合わせたわかりやすくシンプルな操作と、やりごたえ、スタイリッシュさを共存させたそのバトルシステムは、名実ともにシリーズのアクション化の集大成となっていくに違いない。もはや「ファイナルファンタジー」は、アクションRPGシリーズなのだ。

 時代にフィットさせるため、ナンバリングのなかで方針転換を模索していることには、かねてから少なくない批判の声がある。しかしながら、今作のバトルシステムまわりの出来からは、「それでも自分たちの思う方向へとシリーズを進化させる」という制作陣の強い覚悟を感じずにはいられなかった。

 体験版からは、注目されている原点回帰の世界観・設定の断片を感じ取ることもできたが、こちらについては、一部分を垣間見るにとどまっているため、期待に応えられているとするのは早計だろう。裏を返せば、シナリオさえシリーズの人気・注目にそぐえれば、十分に今年を代表する一作として、シリーズのファンだけでなく多くのゲームユーザーから評価されるタイトルになっているともいえる。

 『FF16』は、アクションRPGとして生まれ変わったシリーズの人気を再び盤石のものとすることができるのだろうか。全貌が明らかとなる発売後、世論がどのような評価を下すのかに注目したい。

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