『Weekly Virtual News』(2023年4月10日号)
バーチャル界隈の新年度がスタート。エイプリルフールと技術進展、アバターファッションの新顔など
今年は「実写」もアリ。2023年のVTuberエイプリルフール
今年も、VTuber業界にエイプリルフールがやってきた。毎年、様々な趣向をこらした「一日限りのウソ」があちこちで飛び交う祝祭だ。さすがにある程度は陳腐化してきたものの、まだまだおもしろいネタは多く見られる。
今年特に興味深かったのは"実写化”という軸だろうか。ホロライブの兎田ぺこらと、ぽんぽこ&ピーナッツくんが、一日限りの“実写化”動画を投稿した。無論、それは本人ではなく、コスプレイヤーだったり、本人とツテのある人物だったりする。とはいえ、かつてはかなり忌避されていたであろう実写化というアプローチが、4月1日限りとはいえ実現するようになったのはおもしろいところだ。
個人的に興味深かったのは、にじさんじ・鈴木勝が投稿した「架空のVRゲームのPV」だった。コンセプトといい、動画の作り込みといい、「キャラクターとふれあえるVRゲーム」のイメージ映像としてかなり完成度が高い。テストプレイしている人の実写映像まで差し込まれており、そこも実在感を大きく引き上げている。こうしたコンテンツをVTuberが出してくることも、カルチャーの交差を感じさせるところだ。
『mocopi』アップデートに、『VARK SHORTS』登場。3Dモデルコンテンツ制作のハードルは下がっていくか
「誰でも手軽にモーションキャプチャー」を実現するモバイルモーションキャプチャー『mocopi』は、アプリ側のアップデートによってAR撮影機能が追加された。文字通り、3Dモデルをカメラに映る映像とAR合成することができる機能だ。そして、屋外でも動作する『mocopi』と組み合わせて、「3Dモデルが屋外で動く」という映像を簡単に作れるようになった。
とりわけ大きな恩恵を受けるのは、「外ロケ」企画をやりたかったVTuberだろう。これまでは3Dモデルを動かす設備はもちろん、現地に行き、映像を撮影し、その映像をベースにモーションキャプチャーを行い、最後に映像合成を行う……という、かなりの重労働を要した企画がVTuberの外ロケだ。これが、『mocopi』と対応スマートフォンだけあれば、一通りの撮影はロケ地だけで完結する。ハードルを大きく下げるだろう。
AR撮影機能に加え、『mocopi』はアプリアップデートによって、3Dモデル投稿・共有プラットフォーム『VRoid Hub』との連携も解禁された。1クリックで『VRoid Hub』上の3Dモデルを利用できるようになったため、より手軽に扱えるようになったと言える。とりあえず買っても使える、手軽なモバイルモーションキャプチャーとして、いよいよ完成されてきた印象だ。なお、アップデートはiOS版が先んじて配信され、Android版へは後日配信予定だ。
もっと手軽に3Dモデルが動く動画を作りたい人向けに、Windows対応ソフト『VARK SHORTS』という新顔も飛び出してきた。VRM形式の3Dモデルを読み込み、動画のテンプレートを選択するだけで、3Dモデルが動くショート動画を簡単に生成できるというツールだ。この手のアプリとしては破格の手軽さで、生成した動画を用いた収益化も許諾されている。
昨今はYouTube ShortsやTikTokの影響により、ショート動画の需要が大きく高まっている。とはいえ、動画編集はもちろん、構成や演出などを考える必要もあり、コンスタントな作成・投稿はなかなかに大変だ。こちらも、様々な「3Dモデルのショート動画」のハードルを大きく下げるツールになることが期待される。
このほか、ボイスチェンジャーの方角からは「超高性能なAIボイスチェンジャー」というウワサも届いている。技術的な進展が、新年度のスタートから早速確認されているのは、テックのファンとしてはうれしい限りだ。