「ポケモン」のオープンワールド化は成功だったのか? 『ポケモン スカーレット・バイオレット』の新しさと課題

 11月18日、「ポケットモンスター」(以下、「ポケモン」)シリーズのナンバリング最新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、『ポケモンS・V』)が発売を迎えた。

 本稿では、プレイを通じて受け取ったインプレッションから、同タイトルの良かった点、悪かった点を考えていく。シリーズ初のオープンワールド化は、成功と呼べる挑戦になったのだろうか。

シリーズ最多の販売本数を見据える最新作

ポケットモンスター スカーレット・バイオレット 紹介映像

 「ポケモン」シリーズは、1996年発売の『ポケットモンスター 赤・緑』を初作とする、ゲームフリーク開発・任天堂発売のRPGだ。これまで9作のナンバリングにくわえ、複数のスピンオフやリメイク、モバイルゲーム、カードゲームなどがリリースされている。直近では、2016年にサービス開始となった『Pokémon GO』が老若男女を問わない支持を獲得し社会現象となったほか、シリーズの登場とともに発売された『ポケモンカードゲーム』が20年以上もの時を経てブレイク。カルチャーシーンへの影響力をさらに強めている現状がある。

 今回発売となった『ポケモンS・V』は、前作『ポケットモンスター ソード・シールド』以来、3年ぶりとなるナンバリング最新作。シリーズとして初めてオープンワールドの仕組みを取り入れた。前作が発売されてからの間に爆発的に進んだNintendo Switchの普及を追い風に、シリーズ最多の販売本数を記録できるか。その動向に期待が集まっている。

魅力はプレイヤー没入させる3つの要素

 『ポケモンS・V』の良い点として、まず私が挙げるのはシリーズのナンバリングにおいて一貫してきた「ポケモン」というゲームの面白さだ。お気に入りのポケモンを探し、集め、育て、ともに冒険する。これは1996年の登場から26年間、絶えることなく受け継がれてきたシリーズの伝統的な面白さである。『ポケモンS・V』においても、こうした魅力は色あせていない。それどころか、新たに採用された「オープンワールド化」「完全シンボルエンカウント」によって、輝きを増している感さえある。

 「◯◯タイプのポケモンがほしいから、どこよりも先にあのエリアに行こう」「あっ、〇〇がいる!つかまえよう!」このように感情を動かしながら、遊んでいるプレイヤーも少なくないはず。この点は何にも代えがたい同タイトルの魅力と言えるだろう。

 また、「チャンピオンロード」「レジェンドルート」「スターダスト★ストリート」に描かれた物語もそれぞれに魅力があり、引き込まれるものだった。発売前の触れ込みでは、「3つはそれぞれに独立し、どれがメインであることもなく、ゲームの目的として存在している」と言われていた。実際に遊んでみると、まさにそのとおりで、そこには「どれから進めよう?」「どんな話になるんだろう?」というワクワク感もあった。すべてのプレイヤーがRPGの一本道感に縛られることなく、思い思いの順(各シナリオの中の攻略順まで含め)でそれらに取り組んだはずだ。この点もまた、シリーズにおける大きなアップデートだったと感じた。

 より細かい点では、わざまわりのUIも秀逸だった。『ポケモンS・V』では、各ポケモンごとに「生まれもったものとして設定されているわざ」「これまで覚えたことのあるわざ」が記憶されており、メニューを開ける場所ならどこでも、わざを思い出したり、忘れたりが自由にできる。これまでのナンバリングでは、一切不可能だったり、特定のアイテムを消費したりする仕様だったが、今回はそこに不自由さを感じさせないものとなっているのだ。

 この点について、なかには「取捨選択を迫られないのは、RPGとして面白みに欠ける」との声もあるかもしれない。しかし、こと「ポケモン」シリーズにおいては、RPGとしての奥深さ以上に、どれだけカジュアルかつライトに遊べるかが重要であると思う。今後、オンライン対戦が盛り上がるにつれ、この仕様はより価値が見出されていくはずだ。本来、「はねる」「たいあたり」しか使えないはずであった進化したてのギャラドスが、その瞬間に「かみつく」「こおりのキバ」「しおみず」などを思い出せることに、便利さとシリーズの大きな進化を感じた。

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