【特集】AIと創作

【特集】AIと創作

 創作するAIは、表現の地平を変えた……のだろうか? 『Midjourney』や『Stable Diffusion』の登場によって、人々はこぞってイラストを生成し始めた。始めはファンタジックな光景を好んでいた人々は、徐々に、奇妙なイラストを生成させるようになり、既にいくつかのインターネットミームがAIを利用して生まれている。AIに描かせたキャラクターイラストを、人間の手で作ったように見せかけて売りさばくものもいるらしい。人間の絵師が時間をかけて描いた無数のイラストが一瞬にして学習され、生成データのための養分にされてしまう、という嘆きも聞こえる。「AIはクリエイターの仕事を奪う」。いままでは杞憂に思えた予想も、徐々に現実味を帯びてきた。AIはもうすぐ人間の創造力を超えるのだろうか?

 ゲームAI開発者の三宅陽一郎は「人工知能という学問は黎明期なんですよ」と答えながら、AI研究は「実はまだスタート地点の前で盛り上がっている」のだと言う。

 創作支援アプリ「AI BunCho」の開発者である大曽根宏幸は「AIには「書きたいテーマ」というものがありません。誰かが書き出しを書いたり、選んだりしていく作業は、未来にも必要になるはずです」と述べAIとクリエイターの協働の未来を語る。「AI BunCho」を用いたSF作品を制作している作家、葦沢かもめは「私の意志をコピーした意識のあるAIがいて、私の持っている穴を埋めようとして書き継いでくれるとしたら」とAIに自らを託す未来を希望しつつ「作家と読者の境目がなくなっていく」つまり、小説のファンダムエコノミーが形成される可能性を示唆する。

 クリエイティブカンパニー・agehaspringsの代表をつとめる音楽プロデューサーであり、株式会社TMIK代表を務める玉井健二と株式会社TMIKのCTOである梶原洋平(PARTY)は、音楽家の“地位”を向上させるための作曲AIの活用法や、AIによって誰もがオリジナル曲を作れてしまう世界における「ヒット曲」の意味を語る。

 AIについて考えること。それは、私たちの創造性について考えることだ。これら三つのインタビューから、創造性について、表現について、そしてあなた自身について、あなたは何を思うのだろうか?(文・特集編集協力=難波優輝)